ジャン・コクトーという聖なる伝説
代表作が4K デジタルリマスター版でスクリーンに蘇る
詩⼈、⼩説家、劇作家、画家、役者、映画監督…その多彩な活動から<芸術のデパート>と呼ばれた芸術家、ジャン・コクトー。1889 年にパリに⽣まれ、若い頃からジャンルの垣根を⾶び越えて精⼒的に創作をおこない、⼈々を愛し、スキャンダラスかつ情熱的に⽣きたコクトー。2023年は彼の没後60年にあたります。⽇本では⼩説や詩が堀⼝⼤學に訳され、三島由紀夫や堀⾠雄、寺⼭修司や澁澤⿓彦と多くの作家たちに影響を与えた。
今回の特集ではそんな彼の映画処⼥作にしてアヴァンギャルド・クラシック『詩⼈の⾎』、友⼈関係にあった孤⾼の映画監督、ロベール・ブレッソンの初期作品でコクトーが台詞監修として参加した『ブローニュの森の貴婦⼈たち』、⼤⼈のための御伽噺として作られた『美⼥と野獣』、ギリシャ神話を下敷きにした『オルフェ』を上映する。その中の『詩⼈の⾎』と『美⼥と野獣』は初の4Kデジタルリマスター版での上映。彼のとめどないイマジネーションと実験的精神溢れる息をのむほど艶やかな幻想譚が、美麗な映像でスクリーンに映し出される。
◆上映作品
『詩⼈の⾎ 4Kデジタルリマスター版』Le Sang d'un Poète
1932年 / フランス / モノクロ
コクトーの映画処⼥作にして、サルバドール・ダリ×ルイス・ブニュエルの『アンダルシアの⽝』(1928)と並ぶアバンギャルド・カルト・クラシック!四つのエピソードからなる本作にはギリシャ神話の要素や鏡、雪合戦といった後の『オルフェ』や中編⼩説「恐るべき⼦供たち」と共通する描写が散りばめられ、挑戦的な特殊効果によって事物が神秘的に息吹くさまを表現している。
『ブローニュの森の貴婦⼈たち デジタルリマスター版』
Les Dames du Bois de Boulogne
出演:ポール・ベルナール、マリア・カザレス、エリナ・ラブルデット
1944年 / フランス / モノクロ
孤⾼の映像作家ロベール・ブレッソンがドゥニ・ディドロによる⼩説「運命論者ジャックとその主⼈」を原作に脚⾊、トリュフォーやゴダールたちに多⼤な影響を与えた。当時無名だったブレッソンの為にコクトーは台詞監修のクレジットを引き受けたという。
『美⼥と野獣 4Kデジタルリマスター版』La Belle et la Bête
出演:ジャン・マレー、ジョゼット・デイ、ミラ・パレリ
1946年 / フランス / モノクロ
時代を超えて何度も映像化され、愛され続ける御伽噺<美⼥と野獣>を初めて実写映画化したのはコクトーだった。当時の恋⼈で⻑年の公私におけるパートナー、ジャン・マレーを野獣/王⼦に抜擢し、息をのむほど艶やかで仄かな官能が⾹りたつ幻想譚を⽣み出した。豪奢なコスチュームや耽美で独創的なインテリアといった、魅⼒的な美術デザインを担当したのはディオールやシャネルとも仕事を重ねたクリスチャン・ベラール。
『オルフェ デジタルリマスター版』Orphée
出演:ジャン・マレー、フランソワ・ペリエ、マリア・カザレス、マリー・ディア
1950年 / フランス / モノクロ
死んだ妻に会うために冥界へ向かう男の悲恋を描いたギリシャ神話のオルフェウス神話も、コクトーの⼿にかかれば、1950 年代のパリにて死の王⼥に思いを寄せる詩⼈の物語へと変⾝する。主⼈公オルフェを演じるのはジャン・マレー。死の王⼥役には『ブローニュの森の貴婦⼈たち』、ジェラール・フィリップと共演した『パルムの僧院』(1948)で知られるマリア・カザレス。異界の美しい住⼈を圧倒的な存在感で演じ切り、説得⼒を与えている。
【没後60年ジャン・コクトー映画祭】
12月30(金)よりYEBISU GAEDEN CINEMAにて開催 ほか全国順次ロードショー
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム