急成長するハリウッドの狂騒を象徴する、物語のカギを握る3人のキャラクターを一挙紹介!
ゴールデンエイジ(黄金時代)と呼ばれた1920年代ハリウッド、サイレント映画からトーキー映画へと移り変わる時代。富と名声、野心に彩られた映画業界で夢を叶えようとする男女の運命を描く。ほか共演者には、トビー・マグワイア、サマラ・ウィーヴィング、オリヴィア・ワイルド、キャサリン・ウォーターストン、新鋭ディエゴ・カルバ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシストのフリー、など多彩なキャストが集結。
また楽曲は、現在もCMで連日使用される『ラ・ラ・ランド』のあの名曲を作曲し、第89回アカデミー賞作曲賞・歌曲賞を受賞したジャスティン・ハーウィッツが担当。ジャズ・エイジと呼ばれたジャズ全盛期の音楽をいかに作曲するかも注目のポイントとなっている。『ラ・ラ・ランド』以来の脚本執筆となったチャゼル監督の、映画に対する強い情熱を感じさせ、賞レース常連の監督・スタッフとメインキャストによる夢の組合せが実現した
トーキー時代到来で映画界の主役に躍り出るトランペットの名手:シドニー・パーマー
ハリウッドを陰で操る絶大な発言力をもつ大物ゴシップ・コラムニスト:エリノア・セント・ジョン
中国系の出自をものともせず名をあげる女優・シンガー:レディ・フェイ・ズー
急成長するハリウッドの狂騒を象徴する、物語のカギを握る3人のキャラクターを一挙紹介!
ジョヴァン・アデポ演じるトランペットの名手、シドニー・パーマーは、ハリウッドで日夜行われる盛大すぎるパーティーで、周囲の騒動をよそにバックグラウンドの音楽を奏でているひとりの演奏者にすぎなかった。しかし、サイレント映画が下火になりトーキー映画が登場すると、スクリーン上の音楽の力を認識した業界が、シドニーを主役の座に押し上げていく。チャゼル監督は「撮影現場のムード音楽であれ、劇場で音楽家が演奏するものであれ、音楽は常にサイレント映画の大きな役割を担ってきた。しかし音声が登場すると、ハリウッドはこの発明を単なる真新しさに終わらせないために必死に正当化しようとし、ミュージカルは自然な進化形となり、ある種のジャズ、例えば、当時ロサンゼルス南部のセントラル・アベニュー・クラブで演奏されていたジャズが映画へと繋がる道が開かれることになった。シドニーが演奏しているのは、そういう音楽だ。」と彼が演奏する音楽のルーツとトーキー映画のつながりを解説する。普段は次の仕事を常に探しているようなミュージシャンであるシドニーにとって、突然の名声と富は人生を衝撃的なほど変え、白人の重役が大半を占めるこの業界で、黒人スターであることの意味を理解しようとしていく。劇中、シドニーの才能にいち早く気づきスターになる可能性を見出していく青年マニーを演じるディエコ・カルバは「シドニーは最高だよ。本来の自分を見失わず名声より音楽を愛してる。」と実力と芯の強さを武器に大役に抜擢されるこのキャラクターを気に入っているそう。
アデポは本作の脚本を受け取った後、今よりはるかに差別意識の強い当時に、有色人種の人々はどのようにして映画スターになるチャンスを手にしていたのか、多くのリサーチを行なったという。「サイレント映画時代の多くの俳優やアーティストたちが、音声の出現に適応できなかった。しかしシドニーにはこれが適している。彼はとにかく演奏すればよかったのだから。僕はシドニーがスターになるためには、素晴らしい俳優でなければならないという世界も存在しないと思っている。彼はただ音楽を演奏し、それをカメラとマイクが捉え、それが彼のスターダムの基礎となり、土台となるんだ。」と語るように、シドニーのキャラクターを確立させる鍵となったのは、ハリウッドに映画スターへと祭り上げられようとも見失わない、自然体なスタンスと音楽への集中力を理解することだった。また、チャゼル監督は「音声が登場した当時、黒人の演奏家にはほんの少しのチャンスしかなかった。1929年から1931年にかけて、デューク・エリントン、ルイ・アームストロング、エセル・ウォーターズ、ベッシー・スミスといった人々を起用したミュージカル短編や長編映画が多く公開された。彼らは俳優としてスクリーンで役を演じながら、同時に自分たちの音楽も演奏した。また、ロサンゼルスを拠点とするカーティス・モスビー、レス・ハイト、ソニー・クレイなども自分のバンドで映画に登場している。彼らはすべてシドニーのインスピレーションとなった。」と当時の歴史をふりかえりつつ、実際に活躍していた有色人種のスターたちがシドニーのモデルとなっていたことを明かしている。
名女優ジーン・スマートが演じる、ゴシップ・コラムニストであるエリノア・セント・ジョンはハリウッドの人々を陰で操る存在で、業界の大物たちの撮影現場やオフショットでの生活を常に記録している。ゆえにハリウッドでの成功を左右し、“エリノアに酷評された映画の興行は失敗する”とまで言われる重役で、スマートは「エリノアが最初に登場するパーティーで、明らかに人々は彼女を恐れており、我慢するか、うまく接するしかないの。彼女はすべてのパーティーに招待されるから、どこにでも出没し、コラムのための面白いネタを拾っている。」とその恐ろしいほどの嗅覚と、いかに彼女が業界にとって恐れられている存在かを解説。そんなエリノアをも一瞬で虜にするのが、突如パーティー会場全体を巻き込み全身から魅力を放って踊り狂うネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)だ。エリノアは彼女の才能と次の大スターになる可能性を見出していく。
スマートは本作の脚本を読み、1920年代のハリウッドに対してこれまでとは違った印象を持ったという。「かつて狂騒の20年代と呼ばれたのには理由がある。私たちは恐ろしい世界大戦とパンデミックから逃れ、人々は多くのことに反抗したり、自由奔放に過ごしたりしていた。この時代を、この作品で描かれているような形で見ている人はあまりいないと思う。まるで表面に金色の装飾が施されているように思い込んでいる。美しく、素晴らしく、優雅な時代だと。この映画での描かれ方が、より真実に近いと私は感じるわ。」と、これまでの名作以上に本作『バビロン』こそが当時の本質を映し出していると語る。チャゼル監督は「エリノアはさまざまな作家やコラムニストをモデルとしている。新しいスターを発見したり、古いスターを切り捨てたりするような力を持つね。」と作家のエリノア・グリン、レポーターのアデラ・ロジャーズ・セント・ジョンズ、そして後期の時代のルエラ・パーソンズ、はたまた『イヴの総て』(50)の登場人物、アディソン・ドゥイットと、当時実在した人々から物語のキャラクターまで様々な人物から着想を得たと語っている。加えて、「ジーンは最も陽気な俳優の一人だが、コメディもドラマも同等に自然にこなすことができる。エリノアを演じ切り、彼女が振りかざすパワーを伝えるには、その両方のスキルが必要だった。」と偉大な先人たちをモデルにした難しい役柄を演じ切ったスマートの役者としての力量を称賛している。
さらにもう1人、“東洋のエメラルド、オリエントの装飾品”と称されるレディ・フェイ・ズーは、映画業界のスターやその卵たちが大勢集うパーティーで、トップハットとマレーネ・ディートリッヒ風のタキシードで神々しいステージパフォーマンスを披露する。会場全体の注目を一身に浴び、“My Girl’s Pussy”(当時の実際の歌であり、映画のために作曲家のジャスティン・ハーウィッツが新たなメロディとアレンジを施したもの)を歌い始める様は、中国・アジア系映画スターとしてハリウッドでの道を切り開いた第一人者である名女優アンナ・メイ・ウォンを彷彿とさせる名場面のひとつ。演じたリー・ジュン・リーは「脚本を読んだとき、本当に驚いたわ。レディ・フェイはわざと中国語アクセントで歌う。なぜなら当時大流行していた“オリエンタリズム”のフェティシズムに乗じていたから。それが彼女のさまざまなペルソナの一つなのよ。」と人種の壁を逆手に取って成り上がるキャラクターに心を動かされたそうで、入れ替わりの激しいハリウッドで生き抜くため、パーティーではシンガー、家業のランドリーで無礼な客に対応する父親の手伝いをしながらチャイナタウンの小さな部屋で字幕を書いている姿も描かれる。チャゼル監督は「初期の映画業界において多くのパイオニアがそうだったように、レディ・フェイもいくつもの帽子をかぶったルネサンス的なキャラクターだ。彼女は一つの仕事によって定義されない。業界で生き残るために、日々さまざまな役割を演じる必要がある。日中はランドリーの上で生活し、夜はハリウッドのパーティーで大きな存在感を示すんだ。」と黎明期の映画業界を、そして本作全体を変幻自在なこのキャラクターが象徴していると解説している。
■監督・脚本:デイミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』
■製作:マーク・プラット, p.g.a.、マシュー・プルーフ, p.g.a.、オリヴィア・ハミルトン, p.g.a.
■製作総指揮:マイケル・ビューグ、トビー・マグワイア、ウィク・ゴッドフリー、ヘレン・エスタブルック、アダム・シーゲル
■キャスト:ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ、ジーン・スマート、ジョヴァン・アデポ、リー・ジュン・リー、P・J・バーン、ルーカス・ハース、オリヴィア・ハミルトン、トビー・マグワイア、マックス・ミンゲラ、ローリー・スコーヴェル、キャサリン・ウォーターストン、フリー、ジェフ・ガーリン、エリック・ロバーツ、イーサン・サプリ―、サマラ・ウィーヴィング、オリヴィア・ワイルドほか
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