砂漠で走り回ったことなんて、これに比べればなんてことない!
第79回ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映時より272キロの巨体の男チャーリーになり切り、圧巻の存在感を見せつけたブレンダン・フレイザーの演技に絶賛の声が寄せられた。スター俳優として『ハムナプトラ』シリーズや『センター・オブ・ジ・アース』の主演を務めるも、プライベートでの不幸が重なりハリウッドの表舞台から長らく遠ざかっていたが、本作でのパフォーマンスへの称賛はとどまることなく、ブロードキャスト映画批評家協会賞、全米俳優組合賞(SAG)、サテライト賞(ドラマ部門)にて〈主演男優賞〉を受賞し、そしてついにアカデミー賞<初>の〈主演男優賞〉ノミネートも果たしている!
幾度となく主演俳優をオスカーノミネートの場に引き上げてきたダーレン・アロノフスキー監督とともに奇跡の大復活を遂げたブレンダンに、初オスカーの栄誉と万感のスピーチに期待が高まっている。共演は、活躍目覚ましい若手女優セイディー・シンク(『ストレンジャー・シングス』シリーズ)、話題作への出演が相次ぐホン・チャウ(『ザ・メニュー』)らが脇を固める。
本作で衝撃的な大変貌を遂げたブレンダン・フレイザーが特殊メイクで変身する様子を捕らえた映像が解禁‼映像ではブレンダンがスタッフ二人の手によって次第に肉付きのよいチャーリーに変貌していく様子がタイムラプスで切り取られる。メイクの途中に寝落ちしてしまうブレンダンの姿もしっかり収められているが、なんとこのメイクにかかった時間は4時間超。撮影期間はおよそ40日間に及び、毎回スタジオに早入りし4時間かけてチャーリーになるための特殊メイクを施し余命幾許もなく身を削るような役を演じるという肉体的にも精神的にもハードな撮影を行っていた。
体重272キロのチャーリーの姿は、人間として精神の極限状態であること、命を脅かすほど深刻な状態であることが伝わらなくてはいけないと考えていたアロノフスキー監督。しかし、顔を分厚いメーキャップで覆いすぎて、様々な感情を示す表情が見えづらくなることは絶対に避けなくてはならないと考えていたアロノフスキーは、『ファウンテン 永遠につづく愛』『ノア 約束の舟』『マザー!』でも度々タッグを組み、絶大な信頼を寄せるプロセティック・メーキャップ(特殊メイク)アーティストのエイドリアン・モロットに相談することに。そしてモロットは本作のために史上初の100%デジタル技術による特殊メイクを開発。
役柄の体と彼を演じるフレイザーとの境目が分からないようにし、さらにブレンダンが顔の筋肉を自由に動かせるようにするために、3Dモデリングを使ってデジタル・スカルプチャーを作成。その後、クレイを使ったスカルプチャー作りを省いて、すぐに3Dプリントを行った。すべての特殊メイクをデジタル技術で作りだす方法は今回が長編映画初の試みとなり、見事、本年度アカデミー賞<メイクアップ&ヘアスタイリング賞>へのノミネートへと繋がった。
またボディも同様にデジタル技術で制作が行われた。ファットスーツは5人がかりで着脱せねばならないほどの重みがあり、ブレンダンは「あれを着た状態で動けるようになるまで、徹底的なトレーニングを行った。そんなところに筋肉があったのか、と思うような筋肉がたくさん鍛えられたよ。肉体的には今まで演じてきた役の中でダントツでハードだった。若い頃、砂漠の中で走り回ったことなんて、これに比べればなんてことないよ!(笑)」と振り返る。スーツの中にはF1ドライバーのクールスーツに使われているような冷却システムも内蔵されていたが、暑いことには変わりはなかった。しかし最終的には、スーツを脱いだ際にバランスを失い、眩暈を覚えるほど体に馴染むようになっていたというエピソードも。
先日トーク番組に出演した際「『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』の撮影で死にかけたことがある」と暴露していたブレンダンだが、その撮影よりもハードだったと語る本作でいかに過酷な撮影に挑んでいたかが伺える。まもなく発表が控えるアカデミー賞授賞式を前に、SAGアワード(全米映画俳優組合賞)の主演男優賞を受賞し勢いに乗っているブレンダン。心理的にも物理的にも負荷を抱えながら、この役柄に全身全霊を懸けた渾身の演技は、最終的にどんな評価が下されるのか――?華麗なる大逆転が期待されるブレンダンの受賞に乞うご期待。
【ストーリー】
ボーイフレンドのアランを亡くして以来、現実逃避から過食状態になり健康を害してしまった40代の男チャーリー。アランの妹・看護師のリズの助けを受けながら、オンライン授業でエッセイを教える講師として生計を立てているが心不全の症状が悪化し、命の危険が及んでも病院に行くことを拒否し続けている。しかし、自分の死期がまもなくだと悟った彼は、8年前、アランと暮らすため家庭を捨てて以来別れたままだった娘エリーに再び会おうと決意。彼女との絆を取り戻そうと試みるが、エリーは学校生活や家庭に多くの問題を抱えていた‥‥。
監督:ダーレン・アロノフスキー(『ブラック・スワン』『レスラー』)
原案・脚本:サミュエル・D・ハンター
キャスト:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
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