愛を、喪失を、人生を細やかに捉え、観る者の感情を揺さぶる至高の6作品。
「インディペンデント映画の父」と称され、ジャン=リュック・ゴダールやマーティン・スコセッシ、ヴィム・ヴェンダース、ジム・ジャームッシュといった世界の巨匠たちから敬愛された唯一無二の映画監督ジョン・カサヴェテス。ハリウッドの商業主義に対抗し、公私ともに最良のパートナーである女優ジーナ・ローランズや信頼できる仲間たちと「自分の撮りたいものを撮る」という信念のもと、自身の俳優活動で得た収入を注ぎ込んで映画を製作し、インディペンテント映画の可能性を知らしめた。
そして、現在目覚ましい活躍をする世界中の気鋭の映画作家たちにも絶大なる影響を与えている。『バービー』のグレタ・ガーウィグや、『私は最悪。』のヨアキム・トリアー、カンヌ国際映画祭でパルム・ドール2作連続受賞を果たしたリューベン・オストルンド、『aftersun/アフターサン』の日本公開が控える新星シャーロット・ウェルズなど、ジャンルにとらわれない錚々たる才能たちがジョン・カサヴェテスに賛辞を送っている。
今回の特集では、1989年に59歳で逝去したカサヴェテスが残した監督作品11本の中から、代表作6本を上映。マンハッタンで暮らす若者たちのありのままの姿をシナリオなしの即興演出で作り上げ、世界を驚かせた監督デビュー作『アメリカの影』(59)、中流アメリカ人夫婦の破綻した関係が崩壊へと至るまでの36時間を描いた『フェイシズ』(68)、壊れかけた家庭を繋ぎとめようとする夫婦愛を描き、アカデミー賞主演女優賞、監督賞にノミネートしたカサヴェテスの代表作の一つである『こわれゆく女』(74)、フィルム・ノワールの雰囲気が漂う異色のサスペンス『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』(76)、そして、有名女優の舞台前の極限の緊張を描き、ジーナ・ローランズがベルリン国際映画祭主演女優賞を受賞した『オープニング・ナイト』(77)、カサヴェテスの集大成的作品であり、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した『ラヴ・ストリームス』(84)の6作品だ。『ラヴ・ストリームス』は2Kレストア素材を今回のためにDCP化し、初めて劇場で公開する。
今回のレトロスペクティヴは上映権の再取得が叶ったことで実現したが、一方で、撮影監督、プロデューサーとしてカサヴェテスと併走した、アル・ルーバン氏が2022年に亡くなったことから、その追悼とも言えるタイミングでの開催となる。2012年に開催され映画ファンを熱狂させた特集「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ」へ、ルーバン氏は次のコメントを寄せていた。
「日本の皆様、ジョン・カサヴェテス作品にようこそ。ジョンの作品はアメリカの中流社会の生活を、ユニークな視点で捉えながら、緊張感と時にはユーモアを交え、そして何より誠実に描いています。アメリカのメジャー作品とは違い、強い注意力が必要なので覚悟してください。自ら脚本を執筆し、自ら創り上げた世界の中で、彼が作り出した人たちの困難な挑戦を描くジョン・カサヴェテスは、私が知る限り、最も創造力に溢れたクリエイターです。」
併せて解禁されたポスタービジュアルは、『フェイシズ』よりジーナ・ローランズの写真を大きく使用。ヴィンテージ感が漂うキーアートには、アル・ルーバン氏へ追悼の意を込めて「in memory of Al Ruban」の文字も添えられている。
「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ リプリーズ」は6月24日(土)から7月21日(金)まで渋谷のシアター・イメージフォーラムにて開催、順次全国の劇場でも開催される。オリジナルB3ポスター付前売券(3回券)が2023年4月29日(土)より、シアター・イメージフォーラムで発売開始予定。