“今”のリアルが詰まったワンシチュエーション・スリラー
スマホしか持たずに、ただ一人、森でランニングする女性に、保安官事務所から緊急メールが届く。彼女の息子が通う高校で、何か事件が起きたらしい。
いったい何が起きたのか。息子は無事なのか。スマホ一つで事態に立ち向かう女性をナオミ・ワッツが熱演する、白熱のサスペンスが描かれていく。
まず注目なのは、一つの場所だけでドラマが完結する映画=ワンシチュエーション映画という形式のユニークさ。
このジャンルで女性が一人で奮闘する映画には、サンドラ・ブロックが宇宙船から地球に戻ろうとする『ゼロ・グラビティ』(2013)や、ブレイク・ライヴリーが人喰いサメと死闘する『ロスト・バケーション』などがあるが、本作もその一つ。
ヒロインは極限的な状況の中で、ありとあらゆる知恵を絞り、果敢に行動する。
さらに、主人公がスマホしか持っていないのも注目ポイント。本作同様、ワンシチュエーション映画に通信機器を掛けあわせた名作、緊急電話司令室の電話だけで誘拐事件を解決しようとする『THE GUILTY/ギルティ』(2021)や、SNSで行方不明の娘を探す『search/サーチ』(2018)と共通の、今だからこそのリアリティが本作にもたっぷり詰まっている。
ナオミ・ワッツが惹き込む人間ドラマにも要注目
この謎解きサスペンスに加えて、もう一つ見逃せないのが、ヒロインの心理の動きを描く人間ドラマ。一つ状況が判明していくたびに、大きく揺れるヒロインの心情を演じきるのは、アカデミー賞主演女優賞に『21グラム』(2003)『インポッシブル』(2012)で2度ノミネートされている実力派、ナオミ・ワッツ。
画面にはほぼ彼女しか登場しないが、事態に沿って刻々と変わっていく表情と、彼女の心境を反映する体の動きで観客を惹きつける。
監督は、ナオミ・ワッツが育ったオーストラリア出身のフィリップ・ノイス。ハリソン・フォードがCIA分析官を演じるサスペンス『パトリオット・ゲーム』(1992)と続編『今そこにある危機』(1994)、アンジェリーナ・ジョリー主演のスパイ・サスペンス『ソルト』(2010)などを手がけてきたベテラン監督が、ワンシチュエーション映画に初挑戦。
画面には、紅葉の始まる森の美しく雄大な光景と、たった一人で必死に走る女性という、対照的な要素を並べ、事件の実態が少しずつ明かされる謎解きと、変化していくヒロインの心情を描きつつ、果たしてヒロインは息子を救うことが出来るのかという緊迫感をキープ。
最後まで、目が離せないサスペンスに仕上げている。
エイミーの走路には危機だらけ!
危機1:誰もいない森。手元にはスマホだけ!
エイミーが、スマホに届いた緊急メールで、息子の高校で何かが起きたらしいと知ったのは、彼女が森の中で日課のランニングをしていた時。
すぐに帰るつもりだったから、持っているのはスマホ1台だけ。森の中なので、周囲には誰もいない。状況を知るには、高校の父兄が集まる集会所まで必死に走るしかない!
危機2:ケガに疑惑・・・ トラブル続々!
エイミーは山道を慌てて走ったために、足を挫いてしまい、足は痛むが走らないわけにはいかない。息子のスマホは何度電話しても留守電。
さらに追い討ちをかけるのは、刑事からの電話。刑事が、息子が服用している薬や家にある銃を尋ねるのは、息子が高校で起きた事件の犯人だからなのか?! 恐ろしい疑惑が湧き上がる。
危機3:頼みの綱は、 赤の他人!?
エイミーは走りながらも、スマホを駆使。息子の同級生の親や、職場の同僚に電話。
さらには、たまたま電話をしてきた、自動車修理工場の担当者CJや、エイミーの緊急通報電話をとってくれたディードラなど、電話口の顔も知らない人々に協力を求めるしかない。はたして彼らはエイミーの必死の頼みを聞いてくれるのか?
注目ポイント
筋肉痛でも文句0! 走りまくったナオミ・ワッツ
主人公は全編を通して走り続けるため、ワッツは、撮影が始まる前から毎日ランニングをして準備をした。彼女は若い頃はスポーツをよくしたので、走り始めたら次第に走り方を思い出したそう。
しかし撮影は予想以上に走る時間が長く、筋肉痛になったが、文句は一切なし。監督はワッツのプロ精神に感動したと語っている。
画面の中は一人だけど実は自動車が7台も帯同!
映画のほとんどで、ヒロインが広大な森の中をただ一人で走っているが、実際の撮影には、多数のスタッフたちが必要。撮影クルーや、衣装、メイク担当などが、音を立てないように電気自動車7台に乗って同行していた。
また、山間用バイクの後尾に設置したカメラやクレーンによる撮影、ドローンでの撮影も多用されている。
名作ワンシチュエーションの脚本家が新たに紡いだ物語!
脚本はワンシチュエーション映画の名作『[リミット]』(2009)のクリス・スパーリング。同作は、ライアン・レイノルズ演じる主人公が、気づくと地中に埋められた棺桶の中にいて脱出のために必死で試行錯誤するサスペンス。
また、スパーリングは、ナオミ・ワッツ主演のサスペンス『追憶の森』(2015)の脚本も担当している。
2023年10月4日(水)発売 『デスパレート・ラン』
映像特典でチェック! エイミーの心理状態を語るナオミ・ワッツ
映像特典はナオミ・ワッツのインタビュー。監督フィリップ・ノイスについて、撮影のための体力作りについてなどが語られる。
中でも注目なのは、彼女が演じるエイミーの心理についての明晰で詳細な分析。映画のセリフとしては語られないが、エイミーが夫を失った喪失感に打ちのめされるあまり、息子の心理について深く考える余裕がないこと、それに気づいて息子のために必死になることなど、きめ細かな分析を熱く語っている。
[仕様特典]スリーブケース
[映像特典]オリジナル予告、インタビュー(ナオミ・ワッツ)
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
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