約40年にわたってハリウッドを中心に映画記者活動を続けている筆者が、その期間にインタビューしたスターは星の数。現在の大スターも駆け出しのころから知り合いというわけです。ということで、普段はなかなか知ることのできないビッグスターの昔と今の素顔を語ってもらう興味津々のコーナーです。今回は新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』でウンパルンパ役を演じたヒュー・グラントについて。(文・成田陽子/デジタル編集・スクリーン編集部)

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて40年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

頭脳明晰、一流のウイットで世界中の女性たちを魅了してきた英国スター

画像1: ヒューと筆者

ヒューと筆者

新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023)でウンパルンパの役を演じるヒュー・グラントがちょっとした騒動に巻き込まれている。

小人の俳優たちが「私達の仕事の機会を奪われた。小人の役は小人がするべき」とアピールして来た。最近は機会平等が率先され、ハンディキャップのある役を同様の障がいを持つ俳優が手掛ける配役が奨励されて来たからだ。

当のヒューは「私のサイズはウンパルンパとして完璧であります」と受け流し、監督のポール・キングは、

「ヒューの放つ英国調の皮肉たっぷりなコメント、残酷な表現、意地悪そうな声、みなぎる優越感がこの役にぴったり。原作者(ロアルド・ダール)のイマジネーションそのものである。他の俳優では考えられない」

と反論している。

主演のティモシー・シャラメは「もう夢なんてものじゃない。浮かれ狂ってしまうほど憧れの俳優なんだから」とヒュー様、様の状態。

英国オックスフォード大学優秀卒業の貴公子、常に一流のウイットで世界中の女性を魅了してきたヒューも63歳だが、ついに2018年にスウェーデン女性のアナ・エリザベット・エーベルシュタインと結婚し、今や5人の子持ち(!)になってしまった。

もっとも子供たちの母親はアナ一人ではないというヒューらしい生き方を見せているが。

画像: 1994年ころのヒュー Photo by GettyImages

1994年ころのヒュー

Photo by GettyImages

初めてヒューに会ったのは『フォー・ウエディング』(1994)の時。

俳優業など恥ずかしくて、自分のことなど話していられないという超自虐的な内容の話を続け、早くもう少し格調のある職業=ライターになるべく、経験を積んでいる最中、と言いながらも「何事も延ばし延ばしにする性格だから、絞首刑のような締切がないと一生書き終わらないかも」と苦笑したり。

当時はモデルで女優のエリザベス・ハーレイと交際中で(1987〜2000)結婚の話などすると

「子供がいる家って赤や黄色のプラスティックの椅子やら、おもちゃが散乱していてそれだけでもう許せない」

などと反ファミリー主義のスタンスを強調していた。

ハリウッド俳優のようなリップサービスを一切しないところがヒューらしさ

画像2: ヒューと筆者

ヒューと筆者

2023年のオスカー授賞式ではレッドカーペットのインタビューで、「今日のスーツはどなたのデザインですか?」とマスコミに聞かれた時は、

「僕の洋服屋です」とだけ答え、次に『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』(2022、配信作品)でのダニエル・クレイグのゲイの愛人の役の質問になるとにべもなく、

「たった3秒しか出てない映画だから何も言うことありません」

と溢れ返るハリウッドのスターたちがデザイナーの宣伝をして、次の作品のプロモーションをしている中でも、全くリップサービスなし。

アメリカ人はこの態度に「無礼な奴!」と反応したが、英国人は「よくやった!」と賛辞の声を上げ、ドライで、不必要なお世辞や感情を表さない応対を支持していた。

インタビューに現れるヒューは着古したスーツに、これまた何度も洗ったようなシャツという、最新のブランド物を着せられて出てくるハリウッドのスターではあり得ない、独特のオシャレ感を演出。服の質の良さと体に馴染んだ感じが何とも憎いのである。

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