1945年12月24日に生まれ、2015年12月28日にこの世を去った、暴走ロックバンド、”モーターヘッド”の創始者レミー・キルミスター。そのレミー追悼の意味を込めた“モーターヘッド”のライヴ作品『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズVOL.2』が2023年12月22日から公開。

ピンヘッドとレミーが1992年に一度顔を合わせていたことが判明

レミー追悼の意味を込めたモーターヘッドのライヴ作品『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズVOL.2』が12月22日(金)から28日(木)の一週間、誕生日と命日を含む日程でシネマート新宿、シネマート心斎橋で上映されるが、その2館で現在上映中のホラー映画、幻想恐怖超大作『ヘル・レイザー<4K>』に登場するホラーのアイコン、地獄から召喚された魔道士の首領であるピンヘッドとレミーが1992年に一度顔を合わせていたことが判明した。

画像: 『ヘルレイザー2』© 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ヘルレイザー2』© 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

レミーは1991年発表のオジー・オズボーンのアルバム「No More Tears」のために曲を書かないかとオジーの妻シャロンから連絡を受け、6曲分の歌詞を提供(アルバムに収録されたのは4曲)、そのなかの1曲「Hellraiser」をオジー、ギタリストのザック・ワイルドと共作した。そしてその「Hellraiser」をモーターヘッドでレコーディングしたMotorheadバージョンを1992年のモーターヘッドのアルバム「March ör Die」に収録、さらには92年の映画『ヘルレイザー3:ヘル・オン・アース』(92)のエンドクレジットに使用され、映画のサントラ盤にも収録された。映画『ヘル・レイザー』(87)の生みの親であり監督であるクライヴ・バーカーは『ヘルレイザー』シリーズの2作目以降はプロデューサーとして関わっていたが、『ヘルレイザー3:ヘル・オン・アース』についてはほとんど作品に関与していないと言われる。
だが、映画完成後(もしくは完成間近の段階で)、モーターヘッドの楽曲が提供されることを知ったバーカーは自分が監督していないことでモーターヘッドに対して申し訳ない気持ちを抱いたのか、楽曲「Hellraiser」のMVの監督を志願した。
以下はクライヴ・バーカーによるコンセプトだ。

「ヘルレイザー」MVコンセプト
モーターヘッドのパフォーマンスで始まり、広大な洞窟のような空間を設定する。ダンテ風の、薄暗い照明で、バンドメンバーと楽器に光がさす。カメラが空間を移動すると、さまざまな怪物が現れ、ぼろぼろの服の端から光る油まみれの体、義肢(爪、くちばしなど)、包帯、メイクはすべて、彼らがザ・ダムドであることを示している。これらはすべて、陰影のある白黒で撮影される。また「ヘルレイザー3」の小道具(赤ちゃん、看板など)も映され、映画自体の映像に溶け込んでゆく。
白黒の洞窟に戻ると、ローディーが空間の後方にある大きな詰め物の椅子に座り、タバコを吸いながらバンドの演奏を眺めている。すると突然ドアが勢いよく開き、光が差し込む。ピンヘッドがリムライトで繊細な存在感を示しながら堂々と入場するとき、カラーに切り替わる。悪魔たちは音楽に合わせて狂ったように悶え始める。ピンヘッドがフロアを横切り移動、ローディーを椅子から投げ落とし、フレームの外に放り出すと、バンドのパフォーマンスがさらに高みへと昇り詰める。ピンヘッドは席に座り、喫煙カップから処女の血を飲む。我々はピンヘッドの視点からバンドを観察する。
ゲームテーブルの2つの椅子に座るレミーとピンヘッドのシーンに切り替わる。モーターヘッドのパフォーマンス映像と「ヘルレイザー3」の映像を挟みながら、レミーとピンヘッドはカードゲームに興じ、酒を飲み、真剣勝負を楽しんでいる。ピンヘッドの後ろで悪魔がうごめき、バンドはレミーの後ろに立ち、二人の間の緊張が高まる。
(クライヴ・バーカーによるコンセプト概要、1992年、clivebarker.infoより)

画像: 『ヘルレイザー3』© 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ヘルレイザー3』© 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

このコンセプトにもあるとおり、MVは『ヘルレイザー3:ヘル・オン・アース』の本編映像を挟みつつ、クライヴ・バーカー演出によるバンドの演奏シーンのほか、レミーとピンヘッドがポーカーで対決するシーンが撮影された。ピンヘッド演じるダグ・ブラッドレイはわざわざピンヘッドメイクを施し撮影に挑んでいる。イングマール・ベルイマン監督の『第七の封印』(56)の騎士と死神のチェス対決へのオマージュとなっているこのポーカー勝負で、レミーはエース4枚とジョーカーという最強の切り札でピンヘッドを撃破する、その魂を引き換えに。ダグ・ブラッドレイは撮影の思い出として、リードギタリスト(ワーゼルのことと思われる)が何時間も遅刻、その言い訳が友人の葬式に出席していたという話をメディアで語っている。
またレミーと初めて対面したのは撮影場所の外の路地で、煙草を吸っていたレミーから一本恵んでもらったという。レミーは核爆弾が落ちてもゴキブリとともに生き残るといわれ、2,000人もの女性と夜を共にし、1956年にはロックンロール誕生の瞬間を目撃、マルボロとジャックダニエルにまみれて血液が猛毒化、ビートルズを愛し、世界最大音量のバンド、モーターヘッドで40年間暴走を続けた人類の切り札。
対するピンヘッドは別名ヘル・プリーストともいわれ、盲目的に実験的サドマゾヒズムの実践に専念する悪魔的生物に変容させられた元人間でありつつ、異次元の領域に存在するヘルに棲息して極度の痛みを伴うことでの感覚の拡張と、伝統的な物理法則を超越した絶え間ない拷問による耐え難い苦痛に耐え、究極の快楽を実現する魔道士の首領。そんなレミーとピンヘッドが同じ空間に存在し、勝負を繰り広げたという「Hellraiser」のMVはロックンロールやホラーといった枠を超えてその事実だけで誰もが身震いしてしまうものとなっている。またピンヘッドとしてレミーと共演したダグ・ブラッドレイは2015年のレミーの訃報に接して以下のコメントを残した。

画像: 『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズVol.2』© 2012 UDR GmbH

『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズVol.2』© 2012 UDR GmbH

レミーの訃報を聞いて悲しい。
「アイコン」という言葉は、おそらくあまりにも簡単に飛び交う言葉だが、レミーほどその言葉に手袋をはめるようにぴったりくる者はいない。40年以上前、モーターヘッドのファンでもなかった私は、彼のシルバー・マシンに乗り込んだ。そしてもちろん、ロサンゼルスのダウンタウンにある廃墟の劇場でレミーと一緒に「Hellraiser」のビデオを撮影する日がやって来た。この日は多くの意味で思い出に残る日となった。特に、テーブルを挟んで向かい側に座ってシーンの撮影を待っていた時間は忘れられない。私がちびちびと水を口にしている間、彼は驚くべき速度でウィスキーを飲み、私たちはザ・グーンズやスパイク・ミリガンなどのブリティッシュ・コメディの思い出を交換し、大笑いした。酒とその他のことは神のみぞ知るにもかかわらず、優しく、魅力的で、面白い男だった。
平和と痛み
ダグ

偶然ではあるが、そんなピンヘッドが縦横無尽に暴れる『ヘル・レイザー<4K>』が上映中のシネマート新宿、シネマート心斎橋で極悪暴走首領レミーのライヴ『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズVOL.2』が12月22日(金)から28日(木)の一週間限定で上映される。「Hellraiser」MVのようにレミーとピンヘッドが交わる奇跡が2023年末の日本に来てしまったのだ。

画像: Motörhead - Hellraiser www.youtube.com

Motörhead - Hellraiser

www.youtube.com

レミーの命日は12月28日、『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズVOL.2』上映はその日が最終日となる。『ヘル・レイザー<4K>』は終映未定で続映中、さらにモーターヘッドが楽曲「Hellraiser」を提供したヘルレイザーシリーズ第三弾『ヘルレイザー3:ヘル・オン・アース』は2024年1月12日(金)より、同じくシネマート新宿と心斎橋にて、シリーズ第二弾『ヘルレイザー2:ヘルバウンド』、シリーズ第四弾『ヘルレイザー4:ブラッドライン』とともに日替わりでヘル地獄上映となる。

画像: ピンヘッドとレミーが1992年に一度顔を合わせていたことが判明

ちなみにオジーとレミー共作の「Hellraiser」は30周年で2021年に新たなアニメのMVが制作され、楽曲はオジー版とモーターヘッド版のマッシュアップ。レミーの棲家レインボー・バー&グリルでゲームを楽しむオジーとレミーのいる地球に突如宇宙人が襲来、レミーのベースが奪われ、二人は死の番人/ミスター・クロウリー号で宇宙人を追跡、途中でモーターヘッドのアイコン、War Pigの巨大宇宙船と合体して宇宙人に殴り込みをかける。こちらはOzzy OsbourneのYouTubeチャンネルにアップされている。

画像: レミー・キルミスター© 2012 UDR GmbH

レミー・キルミスター© 2012 UDR GmbH

 負け犬として生まれ、勝つために生きた≫極悪暴走ロックンロールレジェンド、レミー・キルミスターが今年もスクリーンで暴れる!
 いつ、どこで、どんなライヴをこなしても何も変わらない、何も変わらないからいつ、どこの、どんなライヴかも見分けがつかないという暴走ロックンロールの切り札モーターヘッドの底力がスクリーンを通して伝わる上映が今年もやってきた。今年上映されるのはレミーの死の約4年前、2011年にドイツのヘヴィ・メタルフェスティバル、ヴァッケン・オープン・エアでの暴走ロックンロールショウの模様を収録したライヴ作品『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズVOL.2』だ。音楽のMIXは2004年のアルバム「Inferno」以降、2015年のラスト・アルバム「Bad Magic」まで、モーターヘッドのアルバムを計6枚プロデュース、バンドが最も信頼し、モーターヘッドの音を最も知り尽くしたキャメロン・ウェブが担当。
 今回もまたいつも通り、正確な情報はないが、本作は海外では商品化されているが劇場公開された形跡はなく、映画館という環境で上映されるのは非常に珍しいことといえる。そしてまたいつも同じことだが、鑑賞後数日間は耳が聞こえづらくなることを覚悟しなければならない。
 尚、本作は株式会社デイトナ・インターナショナルにて10月より始動した映画配給宣伝レーベル《フリークスムービー》による2作目の配給作品となる。

『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズVol.2』
≪監督≫スコット・マクフェイデン≪撮影≫マーティン・ホークス≪音楽プロデューサー、MIX≫キャメロン・ウェブ
≪出演≫レミー・キルミスター/フィル・キャンベル/ミッキー・ディー
2012年作品/87分/日本語字幕/5.1ch
原題:Motörhead/The World Is Ours Vol2 Anyplace Crazy as Anywhere Else
キングレコード提供 フリークスムービー配給・宣伝 © 2012 UDR GmbH

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