あの衝撃が、あの興奮が、デジタルリマスターで鮮明に蘇る。
香港映画界を代表するジョニー・トー監督は、自らの製作プロダクションであるミルキーウェイを率い、監督のみならずプロデュースも含めた数多くの作品を生み出し、香港のアカデミー賞である香港電影金像奨では3度の最優秀監督賞を、香港の批評家による香港電影評論学会大奨では最優秀監督賞を6度受賞するなど、確固たる地位を築いている。
その作家性は、日本を含むアジア圏のみならず、ヨーロッパでも根強い人気を持ち、2009年にはフランスとの合作映画『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』を発表、ベルリン国際映画祭では過去2度ジョニー・トー監督特集が組まれ、また三大映画祭と言われる、カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭、ベルリン国際映画祭でコンペティション部門の審査員を香港の監督として初めて務めるなど、世界の映画監督としてその名を轟かせている。
そんなジョニー・トー監督が2004~2006年に発表したノワール映画としても個性あふれる4作品をリバイバル公開することとなった。
ジョニー・トーは、『エレクション 死の報復』の日本初上映を記念し、新たな上映素材について『ブレイキング・ニュース』と『エグザイル 絆』のデジタルリマスター版を監督・監修のもと制作。全作品初のDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)化で、進化した映像美が実現した。
『エレクション 死の報復』の日本初上映を記念し、珠玉の4作品がスクリーンに帰ってくる。香港映画得意の警察物にメディアを絡ませ、冒頭7分に渡るワンシーンワンショットの銃撃戦を描いた『ブレイキング・ニュース』、黒社会の会長選挙という設定から描かれる人間ドラマである『エレクション』シリーズ2作品、そして暗黒街で生きた男たちの不思議な友情を描く『エグザイル/絆』。この機会にぜひ映画作家ジョニー・トーの世界を劇場のスクリーンで堪能してほしい。
上映作品
『ブレイキング・ニュース』(2004)
原題;大事件 89分
第57回カンヌ国際映画祭 特別招待作品
第37回シッチェス・カタロニア国際映画祭 最優秀監督賞
第41回台湾金馬奨 最優秀監督賞 最優秀編集賞
出演:リッチー・レン、ケリー・チャン、ニック・チョン、ラム・シュー、サイモン・ヤム
香港の街中で、ユアン(リッチー・レン)率いる強盗団のアジトを見張っていた香港警察のチョン(ニック・チョン)たちは、出発しようとしていた強盗団と銃撃戦が勃発し、警察は強盗団を取り逃がすだけでなく、たまたま居合わせていたTVカメラマンが映像を撮っていたため、メディアを通じて大きな非難を受ける。市民の信頼を取り戻すために警察は、組織犯罪課の新任指揮官レベッカ(ケリー・チャン)が発案した、ワイヤレスカメラを装着した機動部隊が犯人逮捕のライブ映像をTVで放送するというものだった。
『エレクション 黒社会』(2005)
原題:黒社会 100分
第58回カンヌ国際映画祭パルムドールノミネート
第25回香港電影金像奨 最優秀作品賞 最優秀監督賞 最優秀脚本賞 最優秀主演男優賞
第12回香港電影評論学会大奨 最優秀作品賞 最優秀監督賞
第42回台湾金馬奨 最優秀脚本賞 最優秀音響効果賞
出演:レオン・カーファイ、ルイス・クー、サイモン・ヤム、ニック・チョン、ラム・シュー
香港最大の黒社会組織で2年に1回行われる会長選挙は、候補者を巡って内部での意見が分かれていた。絆を大事に思い対話で解決することを信条とするロク(サイモン・ヤム)と金儲けの才があり時には荒っぽいことを行うディー(レオン・カーファイ)。選挙戦は裏側で様々な思惑が交差し、やがて暴力が吹き荒れる熾烈を極めた選挙へ突入していく。
『エレクション 死の報復』(2006)
原題:黒社會以和為貴 93分
出演:ルイス・クー、サイモン・ヤム、ニック・チョン、ラム・カートン、ラム・シュー
あれから2年が経ち、再び組織の会長選挙の時期が来た。長老たちは実業家として成功しているジミー(ルイス・クー)を推すが、最初は会長職に興味はないものの事業拡大のために立候補を決意する。一方、現会長のロク(サイモン・ヤム)は、権力の魅力に取りつかれており、再選できない規定を変えてまでも再選しようと考えていた。両者はやがて血で血を洗う抗争へと発展していく。
『エグザイル/絆』(2006)
原題:放・逐 109分
第12回香港金紫荊奨・最優秀作品賞・最優秀監督賞
第43回台湾金馬奨・最優秀アクション設計賞
出演:アンソニー・ウォン、フランシス・ン、ニック・チョン、ラム・シュー、ロイ・チョン
1999年マカオ。マフィアのボスであるフェイ(サイモン・ヤム)の暗殺に失敗したウー(ニック・チョン)は、妻と生まれたばかりの子供と身を隠すように静かに暮らしていた。そこに現れたのが、ウーを抹殺するために来たブレイズ(アンソニー・ウォン)とファット(ラム・シュー)、そしてウーを守るためにやって来たタイ(フランシス・ン)とキャット(ロイ・チョン)だった。かつて仲間たちだった5人は食卓を囲み昔に思いをはせる。そして彼らはマカオのボス暗殺の仕事に取り掛かろうとするがそこに現れたのはフェイだった。