タル・ベーラ監督の強烈なメッセージとジム・ジャームッシュ監督のコメントも
『ニーチェの馬』を最後に56 歳という若さで映画監督から引退したタル・ベーラ。伝説的な7 時間18 分の『サタンタンゴ』の直後に発表され、日本での初劇場公開作となった『ヴェルクマイスター・ハーモニー』が4K レストア版で蘇る。
予告編では、ハンガリーの田舎町に漂う不穏な空気と、そこにやって来る“巨大なクジラと扇動者プリンス”の影を映し出す。そして爆発する破壊とヴァイオレンス。主人公ヤーノシュが見たものは何か? 予告編には、タル・ベーラを信奉するジム・ジャームッシュ監督のコメントと、タル・ベーラ監督からの観客を挑発する強烈なメッセージも映し出されている。
スクリーンに映し出される登場人物たちを愛してほしい。
そして彼らが破滅していったように、あなたたちも破滅してほしい。
――タル・ベーラ
『ヴェルクマイスター・ハーモニー』は、忘れられない素晴らしい体験だ。催眠術のように染みわたり、“夢”へと導いてくれる。
――ジム・ジャームッシュ (映画監督)
2019年に初めて劇場公開された『サタンタンゴ』は大きな衝撃を持って迎えられ、2022年には『ファミリーネスト』『アウトサイダー』『ダムネーション/天罰』という初期3作品も劇場公開されるなど、日本でも信奉者が増え続けるタル・ベーラ。
本作をきっかけに2001年にニューヨーク近代美術館(MOMA)でタル・ベーラ監督の特集上映が組まれ、ジム・ジャームッシュやガス・ヴァン・サントを驚愕させ、同年のヴィレッジ・ヴォイス誌が選ぶベスト・ディレクターにデヴィッド・リンチ(『マルホランド・ドライブ』)、ウォン・カーウァイ(『花様年華』)と並んで、タル・ベーラが選出されるなど、世界に衝撃を与えた記念碑的傑作だ。
<ストーリー>
ハンガリーの荒涼とした田舎町。天文学が趣味のヤーノシュは老音楽家エステルの身の回りを世話している。エステルはヴェルクマイスター音律を批判しているようだ。
彼らの日常に、不穏な“石”が投げ込まれる。広場に忽然と現れた見世物の“クジラ”と、“プリンス”と名乗る扇動者の声。その声に煽られるように広場に群がる住人達。彼らの不満は沸点に達し、破壊とヴァイオレンスへと向かい始める。
監督・脚本:タル・ベーラ
原作・脚本:クラスナホルカイ・ラースロー
音楽:ヴィーグ・ミハーイ
編集・共同監督:フラニツキー・アーグネシュ
出演:ラルス・ルドルフ、ペーター・フィッツ、ハンナ・シグラ、デルジ・ヤーノシュ
2000年/ハンガリー=ドイツ=フランス/モノクロ/146分/配給:ビターズ・エンド
© Göess Film, Von Vietinghoff Filmproduktion, 13 Production