『ミッドサマー』のアリ・アスター監督の最新作がBlu-ray&DVDで登場!難解との声も上がる本作。知っておくと見方が変わるポイントをギュギュッと伝授します!(文・アナイス/編集・SCREEN編集部)

答えは明示されないからこそ
それぞれ違う見方で楽しめる!

『ヘレディタリー/継承』で家族の悲劇を、『ミッドサマー』で夏至祭の儀式を描き、名を馳せたアリ・アスター監督が次に私たちに見せてくれるのは、悪夢のようなオデッセイだ。『ボーはおそれている』の主人公であるボーは父の命日に母を訪ねに行かなければいけない。しかし、際限ない不運に見舞われた結果、母を訪ねる帰郷は一転して突然死した彼女の葬式への出席という時間制限付きのスリリングな旅に変わる。しかし、アスター監督はそう易々とボーを実家に向かわせない。なにより、紆余曲折ばかりの旅路はボーにとっても、そして彼の悲喜劇的なアクシデントを見守る我々にとっても現実に起きていることなのか見分けづらい。まさに悪夢のような現実であり、現実のような悪夢なのである。 

 そんな本作で描かれるのは、母から子に向けられる“強烈な眼差し”と、それに怯えるユダヤ人男性が無意識に抱く恐怖、そして世代間で“継承”されるトラウマだ。アスター監督が本作を「ユダヤ人男性のロード・オブ・ザ・リング」と称しているように、ユダヤ教の教えやモチーフが映画の中に散りばめられている。それらを拾うことでこの難解な作品をより深く読み解くことができるかもしれない。

しかし、ボーが体験する突拍子もないアクシデントや、反復して描かれる彼の記憶などを通して鑑賞中に打ち付けられる漠然とした感覚も大切にしたくなるような作品だ。言語化が難しくても、このクレイジネスの玉手箱のような作品の中にある共感できる部分。答えがはっきりと提示されていないからこそ、観る者それぞれの育った環境、親との関係性、幼少期の記憶などが呼応し、人によって違う見方が楽しめる映画であり、それはアスターの監督作に共通する自由さのように感じる。

そんな彼と本作で初めてタッグを組んだホアキン・フェニックスの、“文字通り”体当たり演技はこの映画の核そのものだ。『ジョーカー』の時とは打って変わり役作りで増量し、少しだらしない中年ボディになった彼のくたびれた様子が素晴らしい。いま、「怯え」の演技で彼の右に出る者はいないのではないだろうか。とにかく劇中、いじめにいじめ抜かれるフェニックスだがアスター監督とは作品作りの過程で意気投合し、次回作にも出演予定とのこと。それにも期待が高まるが何はともあれ、アスターが10年近くかけて構想した、この“悪夢のような”映画を観ないことには始まらない。

6つの注目ポイント

【ボーという人物】

ボー・ワッサーマンは気が小さく、怖がりで常に不安でいる。母親との関係性をセラピストに聞かれて口籠もる様子から、彼女とは距離を置いているようだ。暴力的な地域のボロアパートで暮らしていて、夜中の騒音に苦しんだり、その原因が自分だと責められたり散々な目に遭う。常に消極的な性格で、“変わることはない”。

【訪れる先々】

画像: 【訪れる先々】

ボーは自分を車で轢いたグレースと外科医の夫ロジャーの自宅で面倒を見てもらうことに。しかし、早く母の葬式に向かわなければいけないのに、なかなか自分を帰してくれない。何かを知っているグレースは、ボーに秘密を打ち明けようとする。一方、娘のトニからはドラッグを強要され、ボーに対する悪意が加速していく。

【精神世界】

画像: 【精神世界】

森の劇場で観劇中にボーが迷い込む世界は、彼の精神世界を意味している。実写と織り交ぜられるアニメーションを手掛けたのは、『オオカミの家』の監督で知られるチリの鬼才クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャ。女性との恋愛に向き合ってさえいれば家族を得ることができた、ボーのもう一つの人生の可能性が描かれる。

【至る所で見かける「MW」】

映画が始まると配給会社や製作会社のロゴに続いて映し出される「MW」というロゴ。劇中も至るところに「MW」のロゴが入った製品が登場し、テレビCMも放送される。これはボーの母親で、著名な実業家であるモナ・マッサーマンが“ 所有” する「M.W.社」のものだ。かなり影響力の高い会社のようで、モナの死も大々的に報道される。

【ボーが求め、ボーを襲う“水” 】

母親の胎内から出たボーがこの世に生を受ける場面から始まる本作では「水」が印象的に使われる。セラピストの部屋で水槽を見つめるボー。水と一緒に飲まなければいけない薬を水抜きで飲んでしまい、命懸けで水を求めに行く。一方、森の劇のシーンではボーの家族が洪水に襲われる。彼の苗字「ワッサーマン」も水の意である。

【「少年時代」】

画像: 【「少年時代」】

時おりボーが思い出す少年時代の記憶では、今は行方の知れない双子の兄弟や、クルーズ船の旅で出会った初恋の相手エレインの存在が明かされる。エレインとの恋に踏み切れなかった背景に、父の死因とそれに起因する性的な触れ合いへの恐れが垣間見える。そして怒った母親と、意味深に映される天井裏への入り口にも注目だ。

Blu-ray&DVD発売中!

新規に収録される日本語吹替版には、ボー役を森川智之が務めるほか実力派キャストが結集。また、Blu-rayはアウタースリーブケース仕様の豪華版となっており、人気の画家・絵本作家ヒグチユウコ氏のイラストを使用したポストカードも付属する。コレクターの方はお見逃しなく!

Blu-ray:6,600円(税込)

画像: Blu-ray&DVD発売中!

DVD:4,400円(税込)

<映像特典(共通)>
・予告集

<仕様・封入特典(Blu-rayのみ)>
・アウタースリーブケース
・ヒグチユウコイラストポストカード

<キャスト(括弧内は日本語吹替版キャスト)>
ホアキン・フェニックス(森川智之)
スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン(佐々木祐介)
エイミー・ライアン(葛城七穂)
ネイサン・レイン(玉野井直樹)
パティ・ルポーン(小宮和枝)
パーカー・ポージー(木村香央里)
ドゥニ・メノーシェ(小野寺悠貴)

発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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