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英国の男優、トム・ヒドルストンが、40代に入り、映画や配信ドラマ、舞台などで着実な進化を遂げている。昨年は大阪のコミコンにも来日して元気な姿を見せた彼の近年の活動をふり返ってみた。
“ロキ”の魅力を深めながら芸域の広さも魅せる40代
1981年生まれの彼が40歳となったのは2021年のこと。この年、トムは新たな転機となる作品にめぐりあった。ディズニープラスの配信ドラマ「ロキ」シリーズのシーズン1(全6話)である。ロキは俳優としてのトムを一躍有名にしたキャラクターとして知られていて、映画の『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』などのシリーズで、この裏切りの王子の役を演じてきた。人間のダークな部分を演じることが得意なトムだが、この配信シリーズではロキの内面的な葛藤がさらに掘り下げられ、映画とはひと違う人物像となっている。この配信シリーズは好評で、アメリカのピープルズ・チョイス賞などいくつかの賞を受賞。ロキ役の新たな旅立ちとなった。
また、2022年には19世紀を舞台にした配信ドラマ「エセックスの蛇」にも主演。共演はクレア・デインズで、トムはクレアが演じる主人公と共にエセックス地方の蛇の謎を追う牧師役を演じて、芸域の広さを見せた。また、私生活では、この年に女優、劇作家のゾウイ・アシュトンと婚約している。彼女とは2019年のブロードウェイの舞台「背信」(ハロルド・ピンター作)で共演していて、この時、トムはトニー賞候補にもなっている。
2023年には配信ドラマ「ロキ」シリーズのシーズン2が作られ、再び高い評価を得ている。ロキのキャラクターがさらに進化し、世界征服の野望を持った邪悪な王子から自己犠牲を通じて人々を救おうとする“時の神”へと変貌を遂げる。もともと舞台人でもあったトムの演技力に磨きがかかり、特にクライマックスで見せる悲しげな慈愛の表情が見る人の心に残る作品になっている。この演技でピープルズ・チョイス賞やクリティックス・チョイス賞などにもノミネート。東京のコミコンにも来日。また、この年、自然界を舞台にしたドキュメンタリー「Big Beast」のナレーションも担当。トムは声にも魅力があるので、ナレーターへの起用も納得できる。
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大阪コミコン2024では“ロキ”ポーズも披露
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昨年の2024年には大阪のコミコンのために来日が実現。また、主演作『The Life of Chuck』がトロント映画祭で公開されて好評を博し、観客賞も受賞している。さらに自然界の動物と音の関係を描いたドキュメンタリー「Earthsounds」でもナレーションを担当。
2025年は主演映画公開 さらに舞台でも主演を
そして、今年の2月9日にトムは44歳を迎えるトム。新作『The Life of Chuck』の全米公開が5月に控えている。トムはこの映画がすごく気にいっていて、トロント映画祭の舞台挨拶では「脚本を読んですぐにこの映画に出演したいと思った」と意気込みを語っていた。原作はスティーヴン・キングの短編で、平凡な人生を歩む主人公、チャールズの人生の3つの物語が描かれる。監督はマイク・フラナガンで、トムがダンスを披露する場面も話題になっている。共演はマーク・ハミル、キウェテル・イジョフォー。トムの新たな役作りが楽しめそうな作品で、日本公開にも期待がかかる。
舞台は2月からシェイクスピア原作「空騒ぎ」のロンドン公演に主演する。共演はヘイリー・アトウェル。セリフの多い役だが、舞台も大切にしているトムなので、きっと素晴らしい演技を見せるだろう。成熟の40代を迎えたトムの2025年の活動からも目が離せない。