作品賞は『ANORA アノーラ』優勢か
作品賞は当初最多ノミネートとなった『エミリア・ぺレス』、これを追って『ブルータリスト』が優勢かと見られていたが、次第に『エミリア・ぺレス』の勢いがトーンダウン。これは主演女優のカルラ・ソフィア・ガスコンの過去のSNSでの人種差別的な発言が影を落としたという印象もある。『ブルータリスト』も台詞へのAI使用疑惑といったネガティブなニュースが報じられ、徐々にパワーダウンしていった感じもする。
代わって最有力に浮上したのが『ANORA アノーラ』。全米批評家協会賞、全米監督協会賞、全米製作者協会賞と連続で最高賞を受賞し、一躍本命に。これに加えて全米俳優協会賞で作品賞にあたるアンサンブル演技賞と英国アカデミー賞作品賞を受賞した『教皇選挙』も侮れない存在に。現在この2作が本命と対抗という事態に。

『教皇選挙』© 2024 Conclave Distribution, LLC.
また監督賞も本命は『ブルータリスト』のブラディ・コーベットと見られていたが、ここにきてやはり『ANORA アノーラ』のショーン・ベイカーが一番手に浮上してきた。
シャラメがブロディを逆転して最年少で主演男優賞受賞か
演技賞部門では『ANORA アノーラ』のマイキー・マディソンが主演女優賞でやはり有利に見えるが、ここはまだ全米俳優協会賞で受賞した『サブスタンス』のデミ・ムーアが本命となっている。ハリウッドの好きな復活劇がここで見られそうだが、マイキーの追い上げに注目が集まっている。主演男優賞も『ブルータリスト』のエイドリアン・ブロディが本命だったが、ここにきて『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』のティモシー・シャラメが最重要な全米俳優協会賞でブロディを逆転して受賞。一気にシャラメに流れが移ったかと見られているが、ここは最後まで目を離せない部門となっている。シャラメが受賞すればブロディが持っている主演男優賞最年少受賞者のタイトルを奪うことになる。

『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
それに対して助演男優部門の本命キーラン・カルキン(『リアル・ペイン 心の旅』)、助演女優賞部門の本命ゾーイ・サルダナ(『エミリア・ぺレス』)の本命は変わらず。『エミリア・ぺレス』はこの他にオリジナル歌曲賞も「El Mal」で受賞しそうだが、本命視されていた国際長編映画賞ももしかすると『アイム・スティル・ヒア』にもっていかれるのではという予想も出ている。
こうした他にもどんでん返しが起こる可能性は少なくないのが第97回の特長。はたしてどんな結果が待っているか、最後まで見逃せない。