3月20日(木・祝)より横浜にて開催中の国内最大級のフランス映画の祭典「横浜フランス映画祭 2025」内のトークセッションで、アカデミー作品賞受賞作『アーティスト』(11)などを手掛けたミシェル・アザナヴィシウス監督が登壇。同作についてや、本映画祭で国内初上映となるアニメーション映画『神さまの貨物』(24)について語った。

オスカー受賞作『アーティスト』について振り返ったミシェル監督

「(受賞は)当たり前だと思いました」とジョークを挟みつつ、2012年開催の第84回アカデミー賞で作品賞ほか5部門でオスカーに輝き、同年度最多受賞となった『アーティスト』を振り返ったミシェル監督。「(受賞は)正直なところ凄い驚きました。資金集めの段階ではプロデューサーに『ヒットはしないかもしれないけど、いろんな映画祭に出せば多くの国で観客が付くと思うから、よろしくお願いします』と話していたくらいなんです」と当時の衝撃を回顧した。

続けて「その後、カンヌでも非常に評価されたことも驚きでした。無声映画を観るという特別な体験を皆さんが好んでくださったんだという風に思いました。電話をいじりながら無声映画を観れませんからね(笑)。集中して観なくてはいけませんし、頭を使わずに物語を追うことができません。そういう意味で特別な経験になるんだなと。タイミングも良かったのだと思います。1年前や1年後だったら、あれだけ評価されなかったと思います。それから、すごくファミリー的というか、6人のとても小さなチームでロサンゼルスに行って作れたことも良かったですね」と振り返った。

イベントではファンからの質問コーナーもあり、『アーティスト』に衝撃を受けたというミシェル監督の熱心なファンには「優しいお言葉をありがとうございます。無声映画は、映画の本質を示すものだと思います。物語が、映像、音、そして俳優によって表現されていますが、(無声映画は)映画の中でも最も映画らしい純粋な表現だと思っています。だからこそ、観客の皆さんが観たときに一種の対話が生まれて、観客の方が脳内で足りない部分を補って物語を作っていく、という映画の本質がそこにあると思うのです。現実的でなくて私達から遠い存在であるにもかかわらず、無声映画を観ると自分に近いものを感じるのは、その作用のおかげだと思います」と語り、、続けて「私が映画づくりをする際は、なるべく観客の方が自分を入れ込むことで完成するような映画を作っています。『美しい映画でしたね』と言われれば、それは観た人が美しさをもたらしてくれたということですし、『ちょっとこれはダメでした』と言われれば、それは観客の方がもたらしたものとも考えることができます(笑)」と、自身の映画と観客の関係性について考えを語った。

新作となるアニメーション映画『神さまの貨物』のテーマとは

明日、本映画祭で上映されるアニメーション映画『神さまの貨物』についても想いを語ったミシェル監督。

制作背景については「この映画は第二次世界大戦を背景にした愛の物語なんです。ジャン=クロード・グランベールの原作を読んだとき、すごく心を打たれて感動しました。それでこの作品を作る事にしたんです。6年かけてこのアニメーションを作っていったのですが、途中で資金が尽きて制作が止まったこともありました。その間に『キャメラを止めるな!』を作りました。『キャメラを止めるな!』は資金がすぐ集まりましたね」と説明。

そして「この映画は、ユダヤ人へのホロコーストを題材にしています。ホロコーストを題材にすると、ナチスの悪事や被害者の方に光を当てることが多いと思いますが、『神さまの貨物』で描かれているのは、戦争の中で人々を助ける、“正義の人”の物語。暗い物語ではあるのですが、前向きな誓いを抱かせてくれるような、“命”に向けられた作品なんです。そういう物語に私は心を打たれたんです」と本作のテーマについても真摯に語った。

そして「この物語は、子どもに向けて語る物語になっています。原作者のグランベール自体も、今85歳くらいで私より年齢がなのですが、彼の父親が強制収容所に入れられて彼が小さいころに亡くなっています。グランベールはその話を、年を取ってから、ある種生き証人として、死ぬ前に子どもたちに語っていきたいということで物語を描いたのです。そんな物語をグランベールに代わり読むために、ジャン=ルイ・トランティニャンが声を入れてくれました。彼の声はフランス映画界の中でも最も美しい声だと思っています」と、惜しまれつつ2022年に世を去ったジャン=ルイ・トランティニャンとの協業についても振り返った。

画像: ミシェル・アザナヴィシウス監督(右)と対談相手を務めた髙野てるみ氏

ミシェル・アザナヴィシウス監督(右)と対談相手を務めた髙野てるみ氏

横浜フランス映画祭 2025
期間・会場:2025年3月20日(木・祝)〜3月23日(日) 全4 日間
みなとみらい 21 地区を中心に開催
主催 :ユニフランス
共催 :横浜市、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
特別協賛 :日産自動車
協賛 :TITRAFILM
特別協力 :agnès.b、CNC、PROCIREP
公式サイト :https://www.unifrance.jp/festival/2025/

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