『牯嶺街少年殺人事件』、『ヤンヤン 夏の想い出』などのエドワード・ヤン監督が、1996年に発表した『カップルズ』が4Kレストア版として蘇り、4月18日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、シネマート新宿他にて公開となる。この公開を記念して4月11日(金)より1週間限定上映中の『牯嶺街少年殺人事件』(91)のトークイベントを開催。俳優・池松壮亮と、映画評論家・森直人をゲストに迎え、エドワード・ヤン監督作品の魅力について熱く語った。
画像1: エドワード・ヤン監督作品『カップルズ』4Kレストア版公開記念イベントに池松壮亮が登壇!

「映画を志す者としてこの作品に影響を受けている」

エドワード・ヤン監督作品との出会いについて、池松が「日本大学芸術学部映画学科にいた大学生の時に、『牯嶺街少年殺人事件』をVHSで観たのが最初でした」と明かした。聞き手の森は「てっきり2017年の4Kレストア・デジタルリマスター版で観たのかと思っていました」と驚いた様子を見せた。池松は、「当時、渋谷TSUTAYAによく行っていたので、たぶんそこで借りたんですよね。字幕を読むのも難しいくらい画面が暗くて。元々闇の深い場面が多いのもあってほぼ何も見えなかったです。意地で全部見ました」と明かしつつ、「1回目に観た時には何もわからず、それでもこの映画の何かを探して2回目を観たのを覚えています。ただ、この思い出を誰かと共有できた記憶がない。一人孤独に『牯嶺街少年殺人事件』を観ていました」と当時を懐かしんだ。

画像1: 「映画を志す者としてこの作品に影響を受けている」

改めて『牯嶺街少年殺人事件』を鑑賞した感想を問われると、「ずっと自分の中にある作品なんだなと。自分が映画を志した時期を振り返ると、ホウ・シャオシェンとエドワード・ヤン。この二人が真っ先に思い浮かぶ」と台湾ニューウェイヴを代表する二人の監督の名を挙げた池松。「俳優たちの素晴らしさは語れるが、それだけではこの映画を捉えきれないという印象。画面の強度とシーンに魅了されて、映画を志す者としてこの作品に影響を受けている」と話す。さらに、「この作品のどこがすごいのか、すぐに饒舌には語れない」と前置きをしたうえで、「この映画には全部が映っている気がする。青春、社会、国家。移り変わっていく台湾の歴史の一瞬だけを切り取りながら、そこに果てしない人生が浮かび上がり、当時の人々がみずみずしく素朴に、純粋に生きていたことを描き切っていると思う。エドワード・ヤン以前、以後と考えると、自分の知る限りでは、彼は新しい映画を発明してしまったのではないかという感覚です」と力を込めた。

続いて、『牯嶺街少年殺人事件』の5年後に制作された『カップルズ』について、森が「『牯嶺街少年殺人事件』に出演したチャン・チェン含める3人のキャストが、次作には成長した姿で再び出演しているため、『カップルズ』は『牯嶺街少年殺人事件』の続編というような見方もできるように作られている」と言及。一方で、「一般的に監督というのは同じテーマ・スタイルを続けることで作家性や署名を確立させるものだが、ヤンの場合は自らそのスタイルを捨て去っていく傾向があり、一つ一つの作品の作風がまるで違う」と指摘した。
池松もまた、「『エドワード・ヤンの恋愛時代』と『カップルズ』はテーマへのアプローチは似ている。人間の欲望の先にあるもの、どうしようもない人間関係を羅列した後に、最後の、ただ一つの真実に辿りつくという描き方はやっぱり見事」と語り、「今回エドワード・ヤン監督作品を観直して思ったのは、光も暗闇も人間も、すべてが見事に計算され、設計されている隙のなさがあるのにも関わらず、“偶然”が映りこむ隙もあるのがすごい」と絶賛した。

画像2: 「映画を志す者としてこの作品に影響を受けている」

最後に、『カップルズ 4Kレストア版』の公開と、併せて再上映される『エドワード・ヤンの恋愛時代』『牯嶺街少年殺人事件』の魅力や見どころについて、森は「今回『カップルズ』を久々に観て、やはりヤン監督の作品は観るたびに新しい発見があると感じた。DVDが廃盤になってしまうなど、昔は視聴しづらい状況にあった分、ヤン監督作品群を今が一番視聴しやすい時代と環境になってきている。約30年前の映画『カップルズ』が持つ素晴らしい現代性をぜひ皆さんと共有したい」と呼びかけた。
池松は、『牯嶺街少年殺人事件』について「人生の4時間をこの作品に預けてみてほしい」と熱を込めて話し、「自分が一番映画を知りたかった時期に、エドワード・ヤン監督から映画というものを教えてもらった。出会いがなかったら、僕も違っていたと思うぐらい大きな影響を受けている。『カップルズ』も監督の高い視点で作られているからこそ、どんな時代でも通じる普遍性を獲得している。20年後、50年後に観ても傑作だと思います」と鑑賞を後押しした。

画像2: エドワード・ヤン監督作品『カップルズ』4Kレストア版公開記念イベントに池松壮亮が登壇!

『カップルズ』 4Kレストア版
4月18日(金)よりロードショー

<STORY>
多彩な国籍の人間が割拠する90年代半ばの台北。レッドフィッシュをリーダー格とする4人組はお金も自由も愛も、思うがままに手に入ると信じている。ホンコンは女性をもてあそび、トゥースペイストはニセ占い師として稼ぐ日々。ある日、フランスからマルトという女性が台北にやってくる。新入りのルンルンはひそかにマルトに心を寄せ、彼らの関係が変化し始める。決して後戻りのできないところまで―。

監督・脚本:エドワード・ヤン
出演:ヴィルジニー・ルドワイヤン、クー・ユールン、チャン・チェン、タン・ツォンシェン、ワ
ン・チーザン
配給:ビターズ・エンド
© Kailidoscope Pictures

This article is a sponsored article by
''.