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出演を重ねる度に広がる芸域!“コメディ” での軌跡

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1992年に俳優デビューを果たしたジャック・ブラックだが、お笑い俳優として頭角を現わすには時間がかかり、それまでは小さな役に甘んじていた。契機となったのは、2000年の『ハイ・フィデリティ』。ジョン・キューザックふんする主人公が営む中古レコード店で、バイトをしている音楽オタクの店員という役を、とにかく騒々しく演じてみせた。
この音楽にうるさいうえに、大人になれないダメ男というキャラクターは『スクール・オブ・ロック』にも生かされる。名門小学校のニセ教師になりすましたバンドマンが教え子たちとバンドを組むという奇想天外なストーリーに、説得力をあたえたのは、精神年齢が低めに見える個性ゆえ!? ともかく、一歩間違えればただの自己中心的キャラに、愛嬌をあたえたブラックの個性が光り、本作は前米で大ヒットし、彼のコメディ俳優としての存在感を強く印象づけた。
ガタイの良さが押しの強さと一体となったキャラという武器を得て、ブラックはコメディ俳優としての役の幅をさらに広げていく。『ナチョ・リブレ 覆面の神様』では、孤児たちのために覆面レスラーとなる修道僧役で人間味を発揮。『紀元1年が、こんなんだったら!?』の原始人役や、『ガリバー旅行記』の現代のガリバー役も印象深いが、この後の当たり役として忘れてはいけないのは『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のゲーム内キャラである教授だ。ゲームのプレイヤーが女の子だったことから、あの体格で女性の声色を発するのだから、ギャップ萌え!?他にも、コメディ映画への出演は多いが、出る度に芸域を広げていく姿勢は頼もしいかぎり。
『マインクラフト/ザ・ムービー』(以降、『マインクラフト』)では、久々に大人になれない大人にふんして騒々しさを発揮しているが、鬱陶しいキャラではなく、子どもやペットにやさしい愛されキャラで、『スクール・オブ・ロック』の頃とは明らかに異なる。まさに、ブラックのコメディ俳優としての円熟味!

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ジャックと切り離せない“ミュージシャン” としての顔!
『マインクラフト』でジャック・ブラックに初めて接した方ならば、“あれ、この俳優、なかなかいい声してるなあ”と思われるだろう。とくに歌声はハイトーンがしっかり出ている。それもそのはず、ブラックは俳優としてブレイクする前から、平行して音楽活動を行なっていたのだ。
1994年、ブラックは劇団で意気投合したカイル・ガスとともにロックユニット、テネイシャスDを結成。ガスのギターでブラックが歌うというスタイルでステージに立ち始める。ハードロックやヘヴィメタルのゴリゴリした音色。当然、ブラックはハイトーンでシャウトするのだが、そのシリアスな響きとは裏腹に、歌詞の内容はお笑いで、そのギャップがオーディエンスにウケた。2001年にはCDデビューを果たし、以後3枚のアルバムをリリース。2006年には彼らを主人公にした映画『テネイシャスD 運命のピックをさがせ!』が作られるほどの人気者となった。
もちろん、映画の中でもブラックは頻繁に歌声を聴かせている。『ハイ・フィデリティ』のエンディングでは、マーヴィン・ゲイのソウル・クラシック「レッツ・ゲット・イット・オン」を、バンドを従えてソウルフルに歌ってみせた。『スクール・オブ・ロック』では、お得意のハードロックナンバーをシャウトするとともに、劇中曲の作曲にもたずさわる。声優として主演を務めた『カンフー・パンダ』では70年代ディスコの名曲「カンフー・ファイティング」をノリノリで熱唱。さらに『バーニー みんなが愛した殺人者』や『ポルカ・キング』では、ハイトーンのボーカルはそのままに、ハードロック風に声を張り上げることなく、流麗な歌声をたっぷり響かせているのだから恐れ入る。
『マインクラフト』では“溶岩チキン”の歌をはじめとする3曲を、セリフ内の即興のように軽やかに歌い上げている。ブラックの芸には、音楽が分かちがたく染み込んでいる。それがよくわかるに違いない。