●超・巨大顔面ポスター・ビジュアル解禁
『殺しの分け前/ポイント・ブランク』は、フィルム・ノワールの定番ともいうべき裏切りと復讐のドラマを、ヌーヴェルヴァーグの型破りな手法とアメリカ西海岸発祥のサイケデリック・カルチャーを交えて描き、それまでの旧態依然とした犯罪映画を刷新したハードボイルド・アクションの傑作だ。

マーティン・スコセッシ監督は、「ヌーヴェルヴァーグのストーリーテリングの革新―衝撃的な編集、フラッシュフォワード、表現の抽象化―を初めてクライム・アクションに応用し、ジャンルを再定義した作品」と讃え、スティーヴン・ソダーバーグ監督は、さまざまな自作の中で「(演出技術を)盗ませてもらった」と告白している。また、寸断された時間と記憶を題材にした『メメント』(00)との関連性を指摘されたクリストファー・ノーラン監督は、「主人公のアイデンティティの問題に切り込んだこの作品は、とにかく素晴らしい」と賛辞を惜しまない。
翌年公開のスティーヴ・マックィーン主演『ブリット』(68)、クリント・イーストウッドの『ダーティハリー』(71)、アカデミー賞・作品賞受賞作『フレンチ・コネクション』(71)に先駆け、ハリウッドの犯罪映画、アクション映画の歴史にかつてない衝撃を与えたこの作品は、後の『レザボア・ドッグス』(92)、『ヒート』(95)、『ドライヴ』(11)といった傑作のみならず、今なお世界中で製作されているアクション映画に可視/不可視の影響を与え続けている。

マックィーン、イーストウッド、スタローン、シュワルツェネッガーら、時代を代表するアクション・スターのポスターを思い返せば、多くの場合、彼らの【顔】と【名前】は常に大きく、目立つように強調されていた。今話題の『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』のポスターも、トム・クルーズの顔を前面に押し出した大スター主演作の見本であり、手本であるといえよう。
本作の主演リー・マーヴィンは、『キャット・バルー』(65)でアカデミー賞・主演男優賞を受賞。続く主演作『プロフェッショナル』(66)、『特攻大作戦』(67)が連続大ヒットし、60年代当時、現在のトム・クルーズ級の人気と実力を誇る大スターだった。この度解禁された超・巨大顔面ポスターは、そのようなスター・ポスターの伝統に則してデザインされている。モノクロによる陰翳を強調した彫像のごとき面構えと鋭い眼光は、誰もの目を釘付けにせずにおかない迫力。作品名の上に、さらに大きく記されたリー・マーヴィンの名前も、そのネーム・ヴァリューを強く打ち出した表現となっている。文字はすべて鮮烈な赤で記され、キャッチコピーには、主人公の激情と妄執を象徴する「それはオレの金だ。」という本篇からのセリフが使われている。
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youtu.be主人公ウォーカーが靴音を響かせ、ロサンゼルス国際空港の通路を歩き続ける30秒特報は、「暴力が、スーツを着て歩いてくる」というキャッチコピーとともに、SNS上で大評判となった。今回初公開となった97秒の本予告篇は、その特報をベースにした拡張版。アルカトラズ島刑務所の廃墟に轟く銃声に始まり、復讐と金に憑かれたウォーカーの容赦なき暴力シーンが続く。クエンティン・タランティーノ監督が「最高の名場面」と称した、靴音が響き続ける空港通路と、合わせ鏡効果によって無限空間と化した美容院のカットバックをはじめ、辻褄も合わず脈絡もない主人公の夢と記憶の連なりが見る者を幻惑する。最後は、作品イメージを象徴し、先に公開された本ポスターのキャッチコピーにもなった「夢だ、これは夢だ」というウォーカーのセリフと銃声によって締め括られるが、一時の静寂の後、再び凄まじい激射音と爆裂音が観客の鼓膜を震わせる。
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