リチャード・フライシャー、ポール・シュレイダー、ロバート・ワイズらの怪作
あの頃、映画はギラギラした欲望や目をそむけたくなるような暴力、悪徳、暗闇に満ち溢れていた。その中でも特に異彩を放つ傑作が真夏の新宿に結集。題して<新宿ハードコア傑作選>が2025年7月18日より9月4日まで限定開催決定!上映作品は6つ。『海底二万哩』(54)、『絞殺魔』(68)、『ソイレント・グリーン』(73)など多様なジャンルの映画をつくり続けた天才監督、リチャード・フライシャーの『10番街の殺人』(71)。イギリス最大の冤罪事件がモチーフで、若き日のジョン・ハートが出演しているほか、衝撃的なインパクトをはなつ殺人鬼役を体当たりで演じるのはなんと『ガンジー』(82)の巨匠、リチャード・アッテンボロー。

十番街の殺人
© 1971 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

ハードコアの夜
© 1979 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
『ハードコアの夜』(79)は21世紀になっても精力的に活動を続けるポール・シュレイダーの初期の監督作品で、ポルノ映画に出演しているという行方不明の娘を単身探す父の奮闘を描く。『博士の異常な愛情』(64)、『パットン大戦車軍団』(70)などの20世紀アメリカ映画のもっとも偉大な俳優のひとり、ジョージ・C・スコットが父親役を熱演。同じくポール・シュレイダーの『テロリズムの夜 パティ・ハースト誘拐事件』は今回が日本初公開。『市民ケーン』(41)のモデルとして知られるウィリアム・ランドルフ・ハーストの孫娘、パトリシア・ハーストが誘拐されたのち、犯人グループとともに強盗をおこなった衝撃の実話に基づく。

テロリズムの夜パティ・ハースト誘拐事件
Images Courtesy of Park Circus/ITV Studios

私は死にたくない
© 1958 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
続く衝撃の「実録犯罪映画」は、『ウエスト・サイド物語』(61)、『サウンド・オブ・ミュージック』(65)で二度もアカデミー賞作品賞、監督賞を獲得したロバート・ワイズ監督による『私は死にたくない』(58)。最後まで無実を訴えつづけた女性死刑囚がモデルで、主演のスーザン・ヘイワードにアカデミー賞主演女優賞をもたらした「死刑映画」の最高傑作。戦争によって感情を奪われてしまった男の壮絶な「作戦」を描く『ローリング・サンダー』(77)は、『ディア・ハンター』(78)や『ランボー』(82)など数ある「ベトナム帰還兵映画」の中でもカルト的な作品で、タランティーノのフェイバリットとしても知られている。監督は『組織』(73)、『ロックアップ』(89)のジョン・フリン。

ローリング・サンダー
© 1977 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

キング・オブ・ニューヨーク
©1990 RTI.
そして最後は、鬼才アベル・フェラーラ、クリストファー・ウォーケン主演のNYギャングスタ映画『キング・オブ・ニューヨーク』(90)。フェラーラ監督らしい独特な酩酊感ある映像のなか、ウォーケン演じるマフィアのボスと片腕たちが対抗組織を血祭りにあげていくさまをバイオレンス満載で描く。ローレンス・フィッシュバーンやウェズリー・スナイプスなど当時若手の黒人俳優たちの魅力が光る作品で、『スカーフェイス』(83)とならび、ヒップホップカルチャーにも多大な影響を与えた。『キング・オブ・ニューヨーク』のみ2週間上映、ほか作品は1週間限定の上映となる。
この衝撃を浴びればあらゆる映画が子供だましにみえてしまうかもしれない、事実や善悪を超えた、危険で強烈な魅力に満ちた六作をすべてご堪能あれ!
上映作品
★7/18(金)〜7/24(木)
『10番街の殺人』
10 Rillington Place
1971 / イギリス / 111分 / カラー
監督:リチャード・フライシャー 出演:リチャード・アッテンボロー、ジョン・ハート、ジュディ・ギーソン
© 1971 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

ロンドンの古いアパートに住むクリスティは温厚な元警察官だが、その正体は女性を殺害して凌辱する殺人鬼だった。新しく越してきた若い夫婦も彼の毒牙にかかり・・・。イギリス最大の冤罪事件となった “エヴァンス事件”がモチーフ。事件現場のおぞましい体感、淡々と進む裁判の恐怖、なんと言っても『ガンジー』(82)などの巨匠アッテンボローが演じる、一度見たら忘れられない強烈なキャラクター。
7/25(金)〜7/31(木)
『ハードコアの夜』
Hardcore
1979 / アメリカ / 109分 / カラー
監督:ポール・シュレイダー 出演:ジョージ・C・スコット、ピーター・ボイル、ディック・サージェント、イーラー・デイヴィス
© 1979 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

家具工場を営む敬虔なキリスト教徒のジェイクは、カリフォルニアに出かけたまま行方不明になった娘を探すために探偵を雇う。しかし数週間後、探偵が持ってきたのは一本のポルノ映画。そこに映っていたのは淫らな姿の愛娘だった。なんてこった!これは私の娘だ!大ショックを受けるも、娘を取り戻すべくひとりポルノ業界に足を踏み入れていく父親を名優ジョージ・C・スコットが熱演。業界の闇を突き進んだ先に、父が知るものとは────。
8/1(金)〜8/7(木)
『テロリズムの夜 パティ・ハースト誘拐事件』
Patty Hearst
1988 / アメリカ / 104分 / カラー ※劇場初公開!
監督:ポール・シュレイダー 出演:ナターシャ・リチャードソン、ヴィング・レイムス、ダナ・デラニー
Images Courtesy of Park Circus/ITV Studios

『市民ケーン』(41)のモデルとして知られるウィリアム・ランドルフ・ハーストの孫娘、パトリシア・ハースト。1974年、当時19歳の彼女は反資本主義・貧困層解放を掲げるシンバイオニーズ解放軍(SLA)に誘拐、監禁された。しかし数ヶ月後、SLAメンバーによる銀行襲撃事件に全米が騒然とする。防犯カメラに映っていたのはライフルを携えたパトリシアの姿だったのだ────。衝撃の実話と心理状況へ彼女の視点から迫る。
8/8(金)〜8/14(木)
『私は死にたくない』
I Want to Live!
1958 / アメリカ / 120分 / モノクロ
監督:ロバート・ワイズ 出演:スーザン・ヘイワード、サイモン・オークランド、ヴァージニア・ヴィンセント
© 1958 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

強盗罪と殺人罪で捕まり死刑宣告を受けるも、最期まで無実を訴えた実在の女性死刑囚バーバラ・グレアムをモデルに、『ウエスト・サイド物語』(61)、『たたり』(63)の巨匠ロバート・ワイズがスーザン・ヘイワードを主演にむかえ映画化。アカデミー賞で監督賞をはじめとする6部門にノミネートされ、ヘイワードは主演女優賞を受賞した。「毒婦」と呼ばれた女性への洞察と、クライマックスでの気が遠くなるような緊張感が見事。
8/15(金)〜8/21(木)
『ローリング・サンダー』
Rolling Thunder
1977 / アメリカ / 100分 / カラー
監督:ジョン・フリン 出演:ウィリアム・ディヴェイン、トミー・リー・ジョーンズ、ジェームズ・ベスト
© 1977 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

ベトナムでの7年間の捕虜生活を終えて故郷に帰還したチャールズ。町をあげての歓迎も、贈呈された銀貨やキャデラックも、妻の浮気も彼の心を動かさない。凄惨な拷問により、もはや彼の心は何にも動かず、瞳は何もみていなかった。しかし妻子を殺され、犯人たちの殲滅を決意する。『組織』(73)、『ロックアップ』(89)のジョン・フリン監督がベトナム帰還兵の姿を冷たい血と暴力と虚無とで描く。脚本はポール・シュレイダー。
8/22(金)〜9/4(木)
『キング・オブ・ニューヨーク』
King of New York
1990 / アメリカ / 104分 / カラー
監督:アベル・フェラーラ 出演:クリストファー・ウォーケン、ローレンス・フィッシュバーン、ウェズリー・スナイプス、スティーヴ・ブシェミ
©1990 RTI.

サウス・ブロンクスの街に黒人マフィアのボス、フランク・ホワイトが刑務所から5年ぶりに帰ってきた。勢力を拡大するべく、片腕ジミーや仲間たちと共に対抗組織を次々と血祭りにあげていくフランクだったが……。ノトーリアス・B.I.G.や50セントはじめヒップホップ界に熱烈な歓迎をうけたギャングスタ・バイオレンス・アクション。街のカリスマを演じるクリストファー・ウォーケンの妖しい魅力に釘付け。いきなりダンスも披露する。
提供:マーメイドフィルム 配給:コピアポア・フィルム