『トップガン マーヴェリック』で世界を魅了したあの日から3年。トム・クルーズの“愛弟子”ともいわれ、ハリウッドの「新世代主役」へと躍り出たグレン・パウエルが次なるステージへと走り出します。今もっとも熱い“推し俳優”として、世界が彼に注目する理由とは?(文・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)
画像: Jane Greer for The Washington Post via Getty Images

Jane Greer for The Washington Post via Getty Images

現在のハリウッドで最もオファーが絶えない俳優、つまり売れっ子は誰か? その質問に、グレン・パウエルと答える人は多いだろう。昨年(2024年)だけでも『恋するプリテンダー』、『ツイスターズ』、『ヒットマン』と3本の出演作が日本で劇場公開。どれもメインキャラクターを演じており、ラブコメ、アクションパニック超大作、ヒネリの効いた犯罪ムービーと、多様なジャンルで俳優としての魅力を発揮していた。おそらく、どんな映画にもフィットするという意味で、作り手やキャスティング担当の欲求を刺激しているのだろう。俳優デビューから22年。現在36歳での大ブレイクは遅咲きかもしれないが、実績を積んでの結果なので、今後もスターとしての地位はキープするはず。

その実績という意味で、キャリアの初期は『ダークナイト ライジング』(12)でトム・ハーディのベインに襲われる株式トレーダー、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(14)でのハッカー役と話題作で“地道”に活躍。そして『ドリーム』(16)ではアメリカ人として初の地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士ジョン・グレンという、国民的英雄を堂々と演じ、しかも役にマッチしていたことから“映画界のヒーロー”となる未来を予感させた。そこから6年後の2022年、世界的大ヒットの『トップガン マーヴェリック』が、パウエルの俳優人生のターニングポイントとなる。同作で演じたパイロット“ハングマン”は、操縦テクニックは優秀なものの傲慢でチームワークを乱す役どころ。ビーチフットボールでは完璧な筋肉美を惜しげもなく披露し、性格のマイナス部分もカッコよさでカバーしたことで、パウエルは多くのファンを獲得した。

トム・クルーズ、ブラッド・ピットは60代。彼らレベルのカリスマ性を持ったハリウッドのトップスターはなかなか現れなかったが、今の快進撃を見れば、グレン・パウエルがその最有力候補なのは間違いない。今後も、かつて『バトルランナー』(87)でアーノルド・シュワルツェネッガーが演じた役を復活させる『ランニング・マン』の他に、ロン・ハワード、J・J・エイブラムスら巨匠と組む新作が待機。過酷なアクションもこなす自慢の肉体に、コメディからシリアスまであらゆる役に柔軟に対応できる演技力、脚本にも関わるクリエイターの才能、そして何より、誰からも愛される性格……と、ネガティヴな面がまったく見当たらないパウエル。出演作を観れば、誰もが好きになってしまう。そして多くの人が忘れかけた「スター」の資質を、新たに気づかせてくれる存在。それがグレン・パウエルなのである。

知れば知るほど好きになる!
グレン・パウエルがいま注目される5つの理由

1 ロマンを掻き立て、古き良きハリウッドスターの香りをまとう

ブレイクのきっかけになった『トップガン マーヴェリック』では、若き精鋭パイロットの海軍大尉。その前に注目された『ドリーム』では、歴史に名を刻む宇宙飛行士。キャリアを大きく変えた代表作が示すように、パウエルには“空を飛ぶ”役がよく似合う。日本では配信のみとなったが、メインキャストを務めた『ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマン』(22)も戦闘機パイロットの役だった。大空を翔ける姿は、多くの人の憧れ。こうした役を得意とし、ロマンを掻き立てるのは、パウエルに古き良き時代のスターの香りが漂っているからかも。ジェームズ・スチュワート、クラーク・ゲーブルといった往年のスターが飛行士を演じた代表作が、パウエルを通して甦ったりする。そして、『ヒットマン』や『ツイスターズ』の役から感じるのは、いい意味での“ローカル感”。良き時代のアメリカのムードを醸し出せるのは、現代の俳優として貴重だ。すでにコメディからアクション、シリアスな人間ドラマ、サスペンスまで、あらゆるタイプの作品に溶け込めることを証明しているパウエルだが、西部劇など伝統のジャンルにもすんなりハマりそう。このあたりも多様な映画で活躍したゲイリー・クーパーのような懐かしのスターを思わせる。ハリウッドの歴史を次世代に受け継ぐという役割を果たせる、数少ない俳優かもしれない。

2 『ヒットマン』で証明した脚本力と知性

どんな役でも軽々とこなしてしまうパウエルの能力を、最も実感できるのが『ヒットマン』だ。主人公の大学教授ゲイリーは、警察の囮捜査で“プロの殺し屋”になりきる仕事もしている。相手に応じて、髪型や衣装でさまざまな外見に変装する役どころで、パウエルの変幻自在な演技力が大きな見どころになっている。実話を基にした本作は、パウエルがリチャード・リンクレイター監督に持ち込んだ企画だ。

リンクレイターとパウエルは同じテキサス州の出身。パウエルは10代半ばで、リンクレイターの『ファーストフード・ネイション』(06)に出演。さらに10年後、彼の『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(16)で再会し、親友になった。『ヒットマン』の企画に興味を示したリンクレイターは、パウエルに共同で脚本を書こうと提案し、同作を完成。パウエルはプロデューサーにも名を連ね、ゲイリー役での多様な表現力だけでなく、映画の作り手としての才能も開花させた。パウエルは脚本のために綿密なリサーチを試み、偽の殺し屋という複雑なシチュエーションを、痛快かつエモーショナルな物語に仕立てたことで、努力および並外れた知性とセンスも高く評価される。

2024年には、アメリカ海軍のパイロットに迫るドキュメンタリー『ブルーエンジェルズ』を製作するなど、クリエイターとしても積極的になってきたパウエルなので、監督を務める日も近いかもしれない。

画像: 『ヒットマン』で組んだリチャード・リンクレイター監督とは同郷の親友 Photo by Jerod Harris/Getty Images for Vulture

『ヒットマン』で組んだリチャード・リンクレイター監督とは同郷の親友
Photo by Jerod Harris/Getty Images for Vulture

3 トム・クルーズとの絆と彼の後継者としての存在感

もともとパウエルは、『トップガン マーヴェリック』でマイルズ・テラーが演じたルースター役の候補に上がっていたが選ばれず、ハングマン役をオファーされた。しかしその時点でハングマンを演じるモチベーションがなく、一旦は断る。そこでトム・クルーズがパウエルを説得し、出演が決まった……という経緯。つまりトムは、ぜがひでもパウエルにハングマンを演じさせたかったのだ。このハングマンの役どころ、およびキャラクターは、1986年の『トップガン』におけるマーヴェリックに似ている。どちらも負けん気が強く、オレ様気質。つまりトムはパウエルに、自身の若い時代との共通点を見出したのではないか。

同作の追加撮影でスタジオからロンドン中心部へ移動する際、トム・クルーズの操縦するヘリコプターにパウエルが同乗。そこでトムは操縦ミスのフリをしてヘリを急降下させ、パウエルをビビらせたが、そのイタズラがきっかけで2人の絆が深まったという。トムと仲良くなったことで、パウエルは彼の後継者としての自覚も強まったかも!?

画像: 『トップガン マーヴェリック』で共演したトム・クルーズは劇中での関係そのままに師として仰ぐ存在 Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images for Paramount Pictures

『トップガン マーヴェリック』で共演したトム・クルーズは劇中での関係そのままに師として仰ぐ存在
Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images for Paramount Pictures

4 肉体派俳優としての顔

高校時代にフットボールやラクロスに夢中になったように、パウエルは体育会系。ラブコメの『恋するプリテンダー』では、やたらと彼が服を脱ぐシーンが登場し、その筋肉美を自慢げに(?)見せつけていた。『トップガン マーヴェリック』の撮影に入る前に、短期間でのフィジカルトレーニングで肉体改造を行った成果が、同作のビーチのシーンだけでなく後の作品にも表れている。『ツイスターズ』では終盤、町が竜巻に襲われるシーンで、パウエルの筋肉が“威力”を発揮したが、アクション俳優としての本領は今後の作品で開花するかもしれない。

『ランニング・マン』はシュワルツェネッガーも演じた主人公なので当然、肉体派スターとしてのポテンシャルが試されるし、ロン・ハワード監督の新作は消防士役。大火災のアクションでの消火・救出劇で、肉体派俳優パウエルの魅力が炸裂することだろう。

画像: 『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』では大御所アクションスターたちと共演 Photo by Andreas Rentz/WireImage

『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』では大御所アクションスターたちと共演
Photo by Andreas Rentz/WireImage

5 両親とのエピソードが伝える愛されキャラ

両親との仲が“良すぎる”ことが有名なパウエル。テキサス州オースティンに住む彼の両親は、典型的な“ステージ・ペアレンツ”で、パウエルが出演する映画の撮影現場をたびたび訪問。それが高じて、両親がカメオ出演している作品がいくつもある。そこだけに留まらず、パウエルの新作のインタビューにまで両親が同行。ジャーナリストとの取材部屋に、彼らが同席したケースもあるというから、びっくりだ。『ヒットマン』のレッドカーペットには、一緒に参加した両親が、段ボールの手書きメッセージで「グレン・パウエルに何かを起こさせないで」「何も起こらないから」と掲げて、笑いを誘ったり……と、はっきり言って“親バカ”状態なのだが、そんな両親の元で愛情たっぷり&伸び伸びと育ったことが、パウエルの性格形成に役立ったのは明らか。裏オモテのない性格で誰からも信頼されることで、映画業界でのキャリアアップが導かれたのだろう。ちなみにパウエルには姉と妹がいて、妹のレスリー・パウエルはソングライターとして活躍中。兄の出演作『恋するプリテンダー』や『ツイスターズ』の音楽にも協力している。

画像: 新作のプレミアが行われる際にはいつも“仲が良すぎる”両親と一緒 Photo by Dia Dipasupil/Getty Images

新作のプレミアが行われる際にはいつも“仲が良すぎる”両親と一緒
Photo by Dia Dipasupil/Getty Images

グレン・パウエル プロフィール

生年月日:1988年10月21日(36歳)
出身地:アメリカ・テキサス州オースティン
主な出演作:『トップガン マーヴェリック』『ヒットマン』『恋するプリテンダー』『ツイ
スターズ』など
クリエイティブワーク:脚本家としても活躍(『ヒットマン』では共同脚本も担当)
最近の話題:『ランニング・マン』(2026年1月30日公開)で主演

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