いくつもの色で、私は私になっていく。


ロンドンの大学院で生物学を学んでいた29歳のロナ(シアーシャ・ローナン)は10年ぶりにスコットランド・オークニー諸島の故郷へと帰ってくる。かつて大都会の喧騒の中で、自分を見失い、お酒に逃げる日々を送っていた彼女は、ようやくその習慣から抜け出した。しらふの状態で、心を新たに生きるロナ。だが、恋人との関係に亀裂を生み、数々のトラブルも引き起こした記憶の断片が、彼女を悩ませつづける……。冷たい海と荒れ狂う風の中、逃れたい過去を抱きしめ、再び世界とつながるまでを描く――。
“わたし”に還る、はじまりの歌。
シアーシャ・ローナンが主演とプロデュースを兼任
若手実力派俳優シアーシャ・ローナン、そしてベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた『システム・クラッシャー』のノラ・フィングシャイト監督が初のタッグを組み映像化した本作。原作は、イギリスで2016年に出版されるや否や多くの読者の共感を呼び、瞬く間に一大ベストセラーとなったエイミー・リプトロットによるノンフィクション回想録「THE OUTRUN」。スコットランド・オークニー諸島の厳しくも美しい自然を舞台に、著者自身の「再生の旅」を描いた本作は、PEN/アッカリー賞やウェインライト賞など複数の文学賞を受賞し、各紙誌の年間ベストブックにも選出されるなど高い評価を受けている。
主人公のロナはロンドンでの学生生活を経て、自由と刺激を求めて大都会の夜の世界へと傾倒。やがてその自由は制御を失い、アルコールへの依存に変わり、人間関係を壊し、心身をも蝕む日々を過ごすように…。恋人との別離、暴力的な体験、入院など、人生が限界を迎えた末に、彼女は依存症の治療施設に入所し、90日間のリハビリプログラムを経て断酒生活を開始。そんな彼女が向かったのは、かつて自身が育ったスコットランド北部のオークニー諸島。野鳥保護団体に勤務し、朝晩の決まった時間にフィールドワークへ出て、稀少種であるウズラクイナの鳴き声を聴き取るという地道な作業に従事することに。誰とも会話を交わさない孤独な時間の中で、彼女は少しずつ自らの内面と対話を重ね、自然と向き合いながら静かな再出発を図るのだが…。

主演は『ブルックリン』、『レディ・バード』、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』などで知られるシアーシャ・ローナン。主演でありながら、自身初のプロデュース業も兼任し、キャリア最高峰とも言える成熟した深みと圧倒的な内面性をたたえた演技を披露。本作でアイルランド映画テレビアカデミー賞(IFTA)で主演女優賞、ロンドン映画批評家協会賞でブリティッシュ/アイリッシュ演技賞ほか数々の主演女優賞を受賞した。
監督はノラ・フィングシャイト。施設を転々とする9歳の少女を描いた初監督作品『システム・クラッシャー』で2019年の第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞、ドイツ映画賞では最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、俳優賞、女優賞を含む計8部門を受賞し、アカデミー賞長編国際映画賞ドイツ代表作品としても選出された期待の監督だ。事実に基づいた圧倒的な取材力をベースにした作品群に定評のあるノラ監督の最新作である本作は、スコットランド・オークニー諸島の雄大な自然を舞台に主人公ロナの断片的で混濁した内面世界を繊細な演出で丹念に描き出し、英国インディペンデント映画賞(BIFA)で9部門(作品賞、脚本賞、監督賞、主演俳優賞、撮影賞、編集賞、ヘアメイク賞、音楽賞、音響賞)、英国アカデミー賞(BAFTA)で2部門(英国作品賞、主演女優賞)にノミネートされるなど高い評価を受けた。日本でもミニシアターながら大ヒットした『システム・クラッシャー』でも撮影を担当したユヌス・ロイ・イメール、編集のシュテファン・ベヒンガーとの再タッグが話題を呼ぶ。静かでありながら、力強い表現が観る者の心を深く揺さぶる“再生の物語”がここに誕生した。

『おくびょう鳥が歌うほうへ』
2026年1月9日( 金) より新宿ピカデリーほか全国順次公開
出演:シアーシャ・ローナン、パーパ・エッシードゥ、ナビル・エルーアハビ、イーズカ・ホイル、ローレン・ライル、サスキア・リーヴス、スティーヴン・ディレイン
監督:ノラ・フィングシャイト
脚本:ノラ・フィングシャイト、エイミー・リプトロット
原作:THE OUTRUN(エイミー・リプトロット著)
配給:東映ビデオ
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