本編映像①|映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』
youtu.be主人公のロナ(シアーシャ・ローナン)が参加するのは禁酒のためのグループセラピー。ニーバーの祈り(アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーによる祈りの言葉/アルコールや薬物など依存症の克服プログラムで広く知られるようになった)「神よ 私に与えたまえ 変わらぬものを受け入れる穏やかさと 変わるものを変える勇気 それらを見分ける賢さも」から始まり、ロナ自身が話す順番が回ってきた。自身が過去に起こしたアルコールに纏わる失態や、愚かな振る舞いの数々を思い出しながら、言葉少なに自分の経験を共有する。その辛さを見かね、他の参加者も自身の失敗を語り次ぎながら、笑い飛ばそうとしてくれる。辛さの中にも人々の優しさが滲み出る禁酒会の一幕だ。なかでも少ない言葉と表情だけでその苦悩を演じ切るシアーシャ・ローナンの演技力も圧巻。

主人公のロナはロンドンでの学生生活を経て、自由と刺激を求めて大都会の夜の世界へと傾倒。やがてその自由は制御を失い、アルコールへの依存に変わり、人間関係を壊し、心身をも蝕む日々を過ごすように…。恋人との別離、暴力的な体験、入院など、人生が限界を迎えた末に、彼女は依存症の治療施設に入所し、90日間のリハビリプログラムを経て断酒生活を開始。そんな彼女が向かったのは、かつて自身が育ったスコットランド北部のオークニー諸島。野鳥保護団体に勤務し、朝晩の決まった時間にフィールドワークへ出て、稀少種であるウズラクイナの鳴き声を聴き取るという地道な作業に従事することに。誰とも会話を交わさない孤独な時間の中で、彼女は少しずつ自らの内面と対話を重ね、自然と向き合いながら静かな再出発を図るのだが…。
シアーシャ・ローナンのインタビュー到着!

——あなたはいつこのプロジェクトに参加したのですか?そしてなぜロナの役を演じたいと思ったのですか?
2020年、パンデミックの最中に参加しました。あの頃は、もともと熱心な読書家ではなかった人も、ロックダウン中に皆熱心に本を読むようになった時期だったと思います。それでジャック・ロウデン [訳注:シアーシャ・ローナンの配偶者で、本作にはローナンとともに、プロデューサーとして参加している] と私は週に1冊の本を読むようにしていたのですが、ジャックはこの本を以前から知っていました。知り合いが「一番好きな本だ」とよく話していたらしいんです。なぜ彼が突然、私に「これを読んでこの役を演じるべきだ」と思ったのかはわからないけど、興味をそそられました。2~3日で読み終えたのですが、これは私にしては異例の速さです。当時は権利所有者すら不明で、映画製作におけるプロデュース業務はまったくの未経験だったけど、とにかく映像化したいという思いは一致していました。私とジャック、同じくプロデューサーのドミニク・ノリスによ
る満場一致の決断でした。その後、サラ(・ブロックルハースト)が権利を保有しているとわかり、すべてがうまくまとまりました。この本は感情的で、壮大な叙事詩的な情感に満ちていて、その点で非常に映像的な作品です。しかしそれをスクリーン表現するうえで、どこから手をつけたらよいのか、誰にもわからなかった。ノラ(・フィングシャイト)はそれを成し遂げたんです。製作の初期段階から関わり、ノラと共に作り上げていけること、それからノラがエイミーの原作や彼女の人生だけでなく、私自身から、ロナというキャラクターを造形するための要素を引き出そうとオープンであったことは、私にとって新たな経験となりました。
——本作はプロデューサーとして初めてクレジットされた作品でもありますね。その役割を担うことは、あなたにとってどのような意味がありましたか?
ここ10年ほど、私は幸運にも俳優としてプロジェクトに初期段階から参加する機会を得てきました。その初期の開発段階や経験はいつも本当に楽しいものでしたので、もっと創造的な関与ができる立場になりたいと感じていたのだと思います。多くの人が渇望しているのは、プロデューサーとして踏み込めるその一歩だと思います。主演として最初から最後まで演技の面から作品を牽引する場合は特に、プロジェクトそのものを形作る手助けができるのです。また長年、数多くの素晴らしいスタッフ、特に各部門の責任者たちと仕事をしてきました。だからこそ、チームの一員となる人物を決める過程に関われることが、私にとって非常に刺激的でした。
現場での演技においては、その追加的責任は非常に健全なものになりました。俳優としての仕事に完全に没頭するだけでは済まず、時に現実的な責任を負う必要があることが、私にとっては素晴らしいことだったのです。
おくびょう鳥が歌うほうへ
2026年1月9日( 金) より新宿ピカデリーほか全国順次公開
監督:ノラ・フィングシャイト
脚本:ノラ・フィングシャイト、エイミー・リプトロット
脚色:エイミー・リプトロット、ノラ・フィングシャイト、デイジー・ルイス
原作:THE OUTRUN(エイミー・リプトロット著)
出演:シアーシャ・ローナン、パーパ・エッシードゥ、ナビル・エルーアハビ、イーズカ・ホイル、ローレン・ライル、サスキア・リーヴス、スティーヴン・ディレイン
プロデューサー:サラ・ブロックルハースト、ドミニク・ノリス、ジャック・ロウデン、シアー
シャ・ローナン
配給:東映ビデオ
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