60年代チェコ・ヌーヴェルヴァーグの傑作が4Kレストアで甦る
時代を越えて世界中で愛され続ける『ひなぎく』(1966)の製作60周年と日本劇場公開35周年を記念し、4Kレストア版が2026年3月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開される。
1960年代チェコ・ヌーヴェルヴァーグの中でも、『ひなぎく』は今なお独創的な輝きを放ち、映画監督のジャック・リヴェットやマイク・ミルズ、アルノー・デプレシャン、アリ・アスター、そして『プレデター:バッドランド』が大ヒット中のエル・ファニング、『燃ゆる女の肖像』のノエミ・メルランがベスト映画の一本として本作を挙げるなど、世界中の映画監督や表現者に影響を与え続けている。

日本でもカルト的な人気を誇り、60年代女の子映画の決定版と謳われる本作の主人公は“マリエ1”と“マリエ2”という2人の女の子だ。人形の真似をしたり、姉妹と偽って男たちをだまして食事をおごらせたり、牛乳風呂に入ったり、あらゆるものをちょん切ったり、自由気ままに悪ふざけを楽しむ様子が、色ズレやカラーリング、実験的な効果音や光学処理など、あらゆる映画的な手法を用いて描かれる。

監督と脚本を務めたのは、チェコ映画の先駆者でありチェコ・ヌーヴェルヴァーグで最も有名な女性監督ヴェラ・ヒティロヴァー。強烈な個性と実験性にあふれた作風で監督デビューとなった中編2作『天井』と『袋いっぱいの蚤』(ともに1962)が国際的に注目されるが、『ひなぎく』では食べ物を粗末に扱う描写が反体制的だと国会で糾弾され、上映禁止の危機に瀕した。作家のミラン・クンデラをはじめ多くの表現者や市民が作品を擁護し、『ひなぎく』の上映は許可されるが、民主化運動「プラハの春」が1968年にソ連軍によって弾圧されたことでヴェラ・ヒティロヴァーは1969年から76年まで7年間の活動停止に追い込まれている。

主人公マリエ1と2を演じたのは、オーディションで選ばれた素人のイトカ・ツェルホヴァーとイヴァナ・カルバノヴァー。そのほかの出演者も、ほとんどが作曲家や衣装デザイナーなどの非職業俳優が演じている。監督の夫でもあるヤロスラフ・クチェラが撮影監督と美術を、著名な舞台美術家であり、芸術監督として多くの映画作品で活躍したチェコ・ヌーヴェルヴァーグのミューズ、エステル・クルンバホヴァーが共同脚本と美術、衣装を担当している。

日本では1991年に吉祥寺バウスシアターで初めて正式に劇場公開され、徐々に口コミが広がり満席が続出、6週間のロングラン上映となった。以降、VHSやDVDなど新たなメディアが発売されたあとも、上映のたびに劇場までファンが足を運び続けており、初公開から35年が経とうとする現在もそのカルト的人気は衰えていない。

さらに本作をこよなく愛する画家のヒグチユウコ氏と、映画批評の宮代大嗣氏よりコメントが到着‼ヒグチユウコ氏は「うつくしく愛らしく無垢であるようで、勝手気ままな少女たちの映像美は何度見ても目を奪われる。」、映画批評家の宮代大嗣氏は「『ひなぎく』において破壊とは、反抗であり、解放であり、消費であり、創造であり、何より喜びである。」と4Kレストア版の公開を祝福する絶賛のコメントを寄せている。
60周年記念『ひなぎく 4Kレストア版』予告編
www.youtube.com『ひなぎく 4Kレストア版』
60年代女の子映画の決定版!!
マリエ1とマリエ2は、人形の真似をし、姉妹と偽り、男たちを騙しては食事をおごらせ、嘘泣きの後、笑いながら逃げ出す。部屋の中で、牛乳風呂を沸かし、紙を燃やし、ソーセージをあぶって食べる。グラビアを切り抜き、ベッドのシーツを切り、ついにはお互いの身体をちょん切り始め、画面全体がコマ切れになる。色ズレや、カラーリング、実験的な効果音や光学処理、唐突な場面展開など、あらゆる映画的な手法が使われ、衣装や小道具などの美術や音楽のセンスも抜群。60年代チェコ・ヌーヴェルヴァーグの傑作。

1966/カラー/チェコスロヴァキア/チェコ語/77分/原題:Sedmikrásky
監督:ヴェラ・ヒティロヴァー 原案:ヴェラ・ヒティロヴァー+パヴェル・ユラーチェク 脚本:ヴェラ・ヒティロヴァー+エステル・クルンバホヴァー 撮影:ヤロスラフ・クチェラ 美術:エステル・クルンバホヴァー+ヤロスラフ・クチェラ 衣装:エステル・クルンバホヴァー 音楽:イジー・シュスト+イジー・シュリトゥル 出演:イトカ・ツェルホヴァー(マリエ1役)/イヴァナ・カルバノヴァー(マリエ2役)/他

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