あの絶望が、よみがえる
トラウマ映画の金字塔、4Kリマスターで復活
イギリスの映画誌「EMPIRE」が選ぶ「落ち込む映画」第1位(2009年)、アメリカのWebサイト「Taste of Cinema」が選ぶ「心が砕ける傑作ベスト20」第1位(2016年)に輝くなど、観れば必ず心がえぐられる「トラウマ級の傑作」として映画史にその名を刻む『レクイエム・フォー・ドリーム』。デビュー作『π』でサンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞し、一躍世界の注目を集めた彼の監督2作目となる本作は、なりたい自分になるため、夢を叶えるための“手段”として薬物に手を出した者たちが、依存症となり薬物に溺れ堕ちていく姿を、圧倒的なビジュアル、強烈な映像センスで描いている。
物語の舞台は、ニューヨーク・コニー・アイランド。サラ(エレン・バースティン)は一人息子のハリー(ジャレッド・レト)と暮らしている。サラの唯一の楽しみは、TVを見ながらチョコレートを食べること。ある日大好きなクイズ番組のスタッフを名乗る人物から出演を依頼されたサラは、サイズアウトした赤いワンピースを着るために「ダイエット薬」に手を出す。ハリーは恋人マリオン(ジェニファー・コネリー)との未来に向けて友人のタイロン(マーロン・ウェイアンズ)と麻薬売買を始める。それぞれに夢を抱いていたはずの彼らは、やがて抜け出せない地獄へと堕ちていく――。
鑑賞ではなく、〈体験〉を強いるような映像美が、いまなお語り継がれている本作。ダーレン・アロノフスキー監督はその狙いについて、「依存症の執着と反復性を、観客が“体で感じる”ようにしたかった」と明かす。
“感じる”ために採用された手法のひとつが、80年代ヒップホップ文化の“サンプリングとコラージュ”から着想を得た<ヒップホップ・モンタージュ>と呼ばれる編集技法。まるでラップのビートのように、短い反復で映像と音を連打するように映し出されるシーンは、薬物使用の瞬間、そして“使用前と使用後の落差”を、物語よりも先に〈身体感覚〉として、わずか数秒で観客に叩き込む強烈な効果を生み出している。
さらにアロノフスキー監督は、「一人の主観を描いた『π』より複雑だが、だからこそ挑戦したかった」「『レクイエム』は、4人の視点が絡み合う主観的映画にできると思った」
とも語る。その答えとして導き出されたのが、同じ場面を異なる視点で同時に映し出す「分割画面」という手法。加えて、過去作『π』でも使用された特殊なカメラリグ——ヒートカム、バイブレーターカム、そして最も象徴的な、カメラを俳優の身体に直接固定し、俳優だけが“静止”し、背景だけが揺れ動いて見える映像手法「スノーリカム(Snorri-Cam)」を本作でも活用。「4人全員に、このカメラで撮る瞬間を作りたかった」「究極の主観映像」と監督は振り返る。
そして映像の主観性を極限まで突き詰めるため、本作では100以上のデジタルエフェクトを使用。ハリウッド的な大規模技術とは無縁の、低予算による“ゲリラ制作”だったが、アロノフスキー監督はジェレミー・ドーソン、ダン・シュレッカーという二人のデジタルアーティストと共に「アメーバ・プロテウス」というチームを結成。すべてをデスクトップPC上で制作し、手作業の発想と工夫によって、驚くほど先鋭的な映像表現を生み出すことに成功した。
こうして完成した映像設計は、単なる技巧ではなく、欲望が身体を侵食していくプロセスそのものを可視化するための言語に。2025年、デミ・ムーアの復活でも話題を呼んだコラリー・ファルジャ監督作『サブスタンス』でも<反復される行為、過剰なクローズアップ、身体に密着するカメラ、そして不快さを伴う編集リズム>として明確に受け継がれ、身体を舞台に、欲望が暴走する過程を主観映像で体験させる体験が<『サブスタンス』を見たとき『レクイエム・フォー・ドリーム』を思い出した><『サブスタンス』の解像度が上がる名作>という声が、SNSで多数上がるなど、時代を越えた共鳴が話題を呼んでいる。

『レクイエム・フォー・ドリーム 4Kリマスター』
2026年2月6日(金)より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ヒューバート・セルビーJr.、ダーレン・アロノフスキー
原作:ヒューバート・セルビーJr.
出演:エレン・バースティン、ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、マーロン・ウェイアンズ
原題:REQUIEM FOR A DREAM
2000年/アメリカ/英語/102分/カラー/ビスタ/5.1ch/字幕翻訳:髙橋彩/R15+
配給:クロックワークス
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公式サイト: https://klockworx.com/movies/requiemfordream/

