<ワイダ・ジェネレーション>と<ポーランド映画祭2026>
まずは11月6日(金)から11月12日(木)まで、今年生誕100年となるポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督にまつわる作品を集めた特集、<ワイダ・ジェネレーション>が行われる。そして11月13日(金)から11月19日(木)まで、今年で15回目となる<ポーランド映画祭2026>が行われる。両企画とも会場は東京・YEBISU GARDEN CINEMA。
『地下水道』『灰とダイヤモンド』など数々の名作を生み、今なお世界中の映画人に影響を与え続けるポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督。今年は彼の生誕100年にあたる。そんなワイダの功績を称える「ワイダ・フィルム・センター」による国際プロジェクト<ワイダ・ジェネレーション>が、ここ日本でも開催されることが決定。これはポーランドにおいて唯一、日本文化を紹介する国立の機関「日本美術・技術博物館 Manggha(マンガ)」の設立を提唱するなど、常に日本文化とポーランド文化の架け橋を担ったワイダ監督だからこそ実現したもの。
上映作品は、デビュー作『世代』、日本初上映となるコメディ『蠅取り紙』、『人間の境界』(23)のアグニェシュカ・ホラントが脚本を務めた『コルチャック先生』、遺作の『残像』という、自由、記憶、個人の責任、人間と制度の関係性の問題を取り上げた4本のワイダ自身の監督作と、彼がワルシャワに設立した「ワイダ・スクール」で映画づくりを学んだ、ポーランドの新世代を代表するアグニェシュカ・スモチンスカ監督の短編『アリア・ディーヴァ』。
期間中には、ワイダから直接手ほどきを受けたスモチンスカ監督、『残像』に出演した俳優、アンジェイ・コノプカ他のトークが予定されている。また『コルチャック先生』上映前には、ポーランド文学・映画・演劇に精通し、通訳・翻訳家として活躍されたものの、今年7月に逝去した久山宏一氏の追悼として、久山氏が今年ポーランドで行った講義の模様を上映する。
続いては、イエジー・スコリモフスキ監督が監修を務め、本年で15回目を迎えた<ポーランド映画祭2026>。今回も話題作、注目作が目白押し。
ポーランド文学の最高峰として名高いボレスワフ・プルスの小説2度目の映画化『人形』は巨額の予算を投じて製作された歴史大作。本国でも今年9月30日に公開されたばかりで、大きな話題を集めている。『ゆれる人魚』(15)で知られるアグニェシュカ・スモチンスカ監督の新作『ホット・スポット』は近未来を舞台にしたSFサスペンス。ポーランド映画祭に来客したことをきっかけにスモチンスカ監督と意気投合した霧島れいかが重要な役どころで出演。演劇学校の生徒たちが、信頼や希望といった多くのものを失っていく姿を描いた『ゆらぎ』、ポーランドの映画学校を卒業したインド人監督が、ワルシャワでカメラを回し続けたドキュメンタリー『ヴィルチャ通りからの手紙』、戦火のウクライナに生きる若者たちに焦点を当てたドキュメンタリー『誰も消えない』も近年、注目を集めた意欲作。スコリモフスキと、先日亡くなったジェレミー・トーマスがプロデューサーを務め、『聖なる犯罪者』(19)で国際映画祭を席巻したヤン・コマサ監督の新作『HEEL/ヒール』は、11月27日の日本公開に先駆けての上映。
他にも今年没後30年を迎えるクシシュトフ・キェシロフスキ監督による未公開作を含む短編ドキュメンタリーを集めた「キェシロフスキによるドキュメンタリー傑作選」、キェシロフスキ監督の長編傑作『偶然』、さらにはアンジェイ・ワイダ監督の名作『地下水道』と日本初上映の『麻酔なし』、ワイダ監督についてのドキュメンタリー『監督アンジェイ・ワイダ』など、全10本の長編と1つの短編集をラインナップ。こちらもスモチンスカ監督をはじめ多くのゲストの登壇が予定されている。
<ワイダ・ジェネレーション>上映作品

■蠅取り紙 Polowanie na muchy 日本初上映!
監督:アンジェイ・ワイダ 1969年/ポーランド語/103分/カラー
©️ WFDIF
小さなアパートで妻と義理の両親とともに住み、行き詰まる毎日を送っている書店員ヴォデクは、ある日文学を専攻する美しい女学生イレーナと出会い、不倫関係となる。イレーナはヴォデクを理想的なパートナーに仕立て上げようとし、ヴォデクはますます彼女に依存するようになるのだが…。芸術界の現実を皮肉たっぷりに描く風刺コメディ。

■コルチャック先生 Korczak
監督:アンジェイ・ワイダ 1990年/ポーランド語/118分/モノクロ
©WFDIF
ナチス占領下のポーランドで、ユダヤ人孤児の救済に奔走した医師コルチャック。人間の尊厳をことごとく奪われていく中で、子どもたちが生きるために全身全霊を傾けるコルチャックの姿が深い感動を呼び起こす。第43回カンヌ国際映画祭で上映された際、観客は万雷の拍手で賞賛の念を表明。ワイダ本人が「持てる才能と技能のすべてを注ぎ込んだ」と語っている通り、渾身の一本となった。

■残像 Powidoki
監督:アンジェイ・ワイダ 2016年/ポーランド語/98分/カラー
©️ Akson Studio
ソ連の影響下にある戦後ポーランド。前衛芸術家のヴワディスワフ・ストシェミンスキはワシリー・カンディンスキーやシャガールらと交流を持ちながら、創作活動と美術教育に情熱を注いでいた。しかし、芸術を政治に利用しようとする政府に反発したために迫害されて…。実在した前衛画家であり、レジスタンスのシンボルとなったストシェミンスキの生涯を描くワイダ監督の遺作。

■世代 Pokolenie
監督:アンジェイ・ワイダ 1955年/ポーランド語/83分/モノクロ
©WFDIF
ワイダの記念すべき初長編作品にして、『地下水道』『灰とダイヤモンド』と続く「抵抗三部作」の第一作。第二次大戦中、ナチス占領下のワルシャワ近郊。ドイツ軍の貨物列車から石炭を盗んでいたスタフは、ドロタという少女と知り合い、レジスタンス運動に参加する。やがてゲシュタポの手は彼女にも伸びて…。反ナチ運動に青春を捧げた若者たちの苦悩を描く。
※『アリア・ディーヴァ』と併映

■アリア・ディーヴァ Aria diva 日本初上映!
監督: アグニェシュカ・スモチンスカ 2007年/ポーランド語/30分/カラー
©Wajda School
専業主婦のバシャは愛情深い家族とともに幸せな生活を送っている。自分の人生は満ち足りていると感じていたバシャだが、アパートの上の階にオペラ歌手の女性が引っ越してきたことで日々が一変する。原作はヴィレニツァ国際文学賞を受賞しているポーランド人作家オルガ・トカルチュクの短編小説。監督は『ゆれる人魚』で国際的な名声を得た、ワイダ・スクールの卒業生、アグニェシュカ・スモチンスカ。
※『世代』と併映
<ポーランド映画祭2026>上映作品

■人形 Lalka 日本初上映!
監督:マチェイ・カヴァルスキ 2026年/ポーランド語/166分/カラー
© 2026 Gigant Films, TVN S.A., Wytwórnia Filmów Fabularnych we Wrocławiu, S2 Holding
19世紀後半、裕福な商人へと出世した男ヴォクルスキは落ちぶれた貴族の娘で、美しくも虚栄心の強いイザベラに心を奪われる。その叶わぬ恋心が、彼の運命を決定づける数々の決断へとつながってゆき…。ポーランド文学の最高傑作の一つと評価されているボレスワフ・プルスの同名小説「人形」を名匠イエジー・ハスに続き二度目の映像化。美しい衣装にロケーション、壮大なスケールで描かれる圧巻の映像が魅力。

■ホット・スポット Hot spot 日本初上映!
監督:アグニェシュカ・スモチンスカ 2026年/英語・ポーランド語/101分/カラー
Courtesy of Focus Features. © 2026 All Rights Reserved.
舞台はAIが支配する近未来社会。私立探偵ヤン623は凄惨な殺人事件の捜査を進める中で、現在の支配体制を揺るがす反乱組織の存在にたどり着く。しかし、事件の真相が迫るにつれ、彼は自身のアイデンティティに疑念を抱くようになり、精神の崩壊へと追い込まれていく。鬼才スモチンスカが描くめくるめく悪夢的でサイケデリックなサイバーパンクの世界。『ドライブ・マイ・カー』の霧島れいかも重要な役で出演した。

■ゆらぎ Utrata równowagi日本初上映!
監督:コレク・ボヤノフスキ 2024年/ポーランド語/97分/カラー
© DYNAMO film
ポーランドの名門演劇学校に通うマヤはこれまでの人生を演技に捧げてきたが、自分の実力を信じきれずにいる。卒業を控え、仲間とともに最後の舞台公演の準備を進めるマヤだったが、ある日学校側が気鋭の演出家をプロジェクトに招き入れる。彼と出会ったことでマヤのすべてが一変するが…。国内の映画祭で数々の賞を受賞した、ボヤノフスキ監督の長編デビュー作。

■ヴィルチャ通りからの手紙 Listy z Wilczej 日本初上映!
監督:アルジュン・タルワ 2025年/ポーランド語/98分/カラー
©︎Filmotor
ワルシャワ中心部、ヴィルチャ通り。インドから移住してきたが今なお疎外感を抱えているアルジュンと、同じく移民で映画監督でもあるモーは、ヴィルチャ通りを撮影することによって自分たちの世界と、外の世界のあり方をとらえようと試みる。浮かび上がってくるのはそこに住む魅力的な人物たち。一つの通りを見つめるカメラから、現代ヨーロッパの姿がまるで万華鏡のように浮かび上がってくる。

■誰も消えない We will not fade away日本初上映!
監督:アリサ・コヴァレンコ 2023年/ロシア語・ウクライナ語/100分/カラー
2019年、紛争の絶えないウクライナのドンバス地方。銃撃や爆発音が日常となった街で育った若者たちは、不確実で希望の見えない生活ながら、自らの将来について考え、より良い毎日を夢見ている。そんなある日、彼らはヒマラヤまで旅に出る機会を手に入れて…。過酷な現実と向き合いながらも、人生に美しさと希望を見出そうとする若者たちの姿をおさめたドキュメンタリー。

■HEEL/ヒール Dobry chłopiec 日本初上映!
監督: ヤン・コマサ 2025年/英語/110分/カラー
提供:SUNDAE 配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
© 2025 Skopia Film Sp. z o.o., RPC Good Boy Limited, Venatu Capital Ltd, Canal+ Polska S.A., TVN S.A., WFDiF, All Rights Reserved.
不良青年トミーはある夜、何者かによって誘拐されてしまう。人里離れた一軒家の地下室で、鎖につながれた状態で目を覚ますトミー。その家には物腰の柔らかな父クリス、心に深い傷を抱える母キャスリン、そして従順な息子ジョナサンが住んでいた。彼らはトミーを“いい子”に更生しようとするが、一体彼らの本当の目的とは? イエジー・スコリモフスキとジェレミー・トーマスという2大巨頭がプロデューサーを務めた、『聖なる聖職者』のヤン・コマサ監督による衝撃作。

「わからない」
■キェシロフスキ ドキュメンタリー傑作選 Kieślowski – wybór arcydzieł dokumentalnych
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 1969~80年/ポーランド語/129分/モノクロ
©WFDIF
『デカローグ』『ふたりのベロニカ』などで知られる巨匠、キェシロフスキ監督が、1960年代後半から1980年にかけて発表した短編ドキュメンタリーを上映。上映作品は『ウッチ市より』(69)、『私は兵士だった』(70)、『X線検査』(74)、『わからない』(76)、『異なる年齢の7人の女性』(78)、『駅』(80)、『トーキング・ヘッズ』(80)の全

■偶然 Przypadek
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 1981年/ポーランド語/117分/カラー
©WFDIF
時は1980年代初頭、“連帯”下のポーランド、ウッチ。生後すぐに母を亡くし父に育てられたヴィテク。大学生になったある日父の訃報が届き、ヴィテクは意気消沈、ワルシャワに旅立とうとした。列車がまさに発車しようとしたとき…。列車に乗り込もうとする主人公の“パラレルワールド”を描き、のちに『ラン・ローラ・ラン』や『ミスター・ノーバディ』にも影響を与え、『スライディング・ドア』の原型にもなったキェシロフスキの快作。

■麻酔なし Bez znieczulenia 日本初上映!
監督:アンジェイ・ワイダ 1978年/ポーランド語/125分/カラー
©WFDIF
20世紀の最も偉大なジャーナリストと言われるポーランド人ジャーナリスト、リシャルト・カプシチンスキをモデルに、著名なジャーナリストが権力の目に見えぬ力によって絶望的状況へ追い込まれて行く姿を描く。体制による抑圧が横行する時代における人々の姿を批判的に描いた、1970年代後半のポーランドの政治的・社会的現実を描いた作品でありながら、現代においてもなお鮮烈。

■地下水道 Kanał
監督:アンジェイ・ワイダ 1956年/ポーランド語/95分/カラー
©WFDIF
時は1944年9月、戦火で廃墟と化したワルシャワではレジスタンスたちがドイツ軍への抵抗を続けていた。市の中央部に行くため地下水道に入ったザドラの率いる中隊は、暗黒の中で出口を求めながら離ればなれになってしまう…。第二次世界大戦末期に20万人以上の犠牲者を出したワルシャワ蜂起を描き、カンヌで審査員特別賞に輝いた衝撃的な青春の物語。

■監督アンジェイ・ワイダ Reżyseria- Andrzej Wajda日本初上映!
監督:リリアナ・グウォンプチンスカ・コモロフスカ、マリア・ズマルズ・コチャノヴィッチ 2026年/ポーランド語・英語/90分/カラー
死後10年経っても、ポーランドのみならず、世界中の映画人に影響を与え続けるアンジェイ・ワイダ監督。マーティン・スコセッシ、ロマン・ポランスキー、フォルカー・シュレンドルフらの証言とワイダの膨大なフィルモグラフィーから選ばれた名シーンによって構成された、ワイダ・ドキュメンタリーの決定版。



