『エリザベス』『アビエーター』『ブルージャスミン』『TAR/ター』など数々の名演技で多くのファンを持つオーストラリア俳優、ケイト・ブランシェットが、卓越した芸術家に贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞し、この授賞式に出席のため来日した。

俳優業ではいつも「言葉の力」に苦労していると吐露

世界の優れた芸術家を顕彰し表彰する「第37回高松宮殿下記念世界文化賞」が今年も10月28日に都内で授賞式が行われ、映像・演劇部門の受賞者となったケイト・ブランシェットがその前日27日、受賞記念記者会見に臨んだ。

画像: 左から受賞者のアンディ・ゴールズワージー、ジェニー・ホルツァー、ダニエル・リベスキンド、ケイト・ブランシェット

左から受賞者のアンディ・ゴールズワージー、ジェニー・ホルツァー、ダニエル・リベスキンド、ケイト・ブランシェット

「まるでオリンポスの山に昇ったかのような嬉しさを感じています」
 と喜びと感謝の感情を表しながらも、俳優として仕事する時にいつも「言葉の力」について苦労していると述べたケイト。
「練られた言葉を使ってもこちらの意図したことに反して、観客を失望させたり、心を繋ぐことができないこともあります。実際に感じていることより言葉の方が遅れてしまうことがあるからです。私は脚本と向かい合う時、言葉が与える影響について考えます。言おうとしたこと、言わなければよかったこと、無意識に話しながら演技をする時、『なぜ?』という疑問を持つことが重要です。そこに芸術の出発点があるという気がしています」
 というこだわりを持って演技に臨むそうだ。

画像: 後列左から、彫刻部門受賞者アンディ・ゴールズワージー、絵画部門受賞者ジェニー・ホルツァー、演劇・映像部門受賞者ケイト・ブランシェット、建築部門受賞者ダニエル・リベスキンド、音楽部門受賞者ヘルベルト・ブロムシュテットの代理人ステーファン・フォルシュベリ。前列左から、日枝久会長、パトリシア・バルビゼ、ランベルト・ディーニ、パオロ・ジェンティローニ、岸田文雄、ヒラリー・ロダム・クリントン、クリストファー・パッテン(いずれも国際顧問)、デヴィッド・ロックフェラー・Jr.名誉顧問、マリオン・アッカーマン副委員長

後列左から、彫刻部門受賞者アンディ・ゴールズワージー、絵画部門受賞者ジェニー・ホルツァー、演劇・映像部門受賞者ケイト・ブランシェット、建築部門受賞者ダニエル・リベスキンド、音楽部門受賞者ヘルベルト・ブロムシュテットの代理人ステーファン・フォルシュベリ。前列左から、日枝久会長、パトリシア・バルビゼ、ランベルト・ディーニ、パオロ・ジェンティローニ、岸田文雄、ヒラリー・ロダム・クリントン、クリストファー・パッテン(いずれも国際顧問)、デヴィッド・ロックフェラー・Jr.名誉顧問、マリオン・アッカーマン副委員長

この後に行われた個別の懇親会ではリラックスした表情を見せてくれた。
まずこれまでの多彩なキャリアの中でアカデミー賞も2度受賞し、名演、熱演の数々を披露してきた中で今も心に残る役柄を尋ねられると、
「私は一つの役を演じきると、その役に囚われないように手離すことにしているんです。演じている間はもちろん魂を込めていますけど、終わったら考えないようにしているので、思い入れのある役というのはないんです。でも強いて挙げるなら今年ロンドンの舞台で再演した『エレクトラ/ペルソナ』でしょうか。ギリシャ悲劇とイングマル・ベルイマンの世界を融合したものです」

 しかしそのフィルモグラフィは超大作から小品まで多彩。出演の選択をする時の基準を聞かれると、こう明かしてくれた。

「基本的には時間の問題なんです。個人的には4人の子供たちの成長を見るのが一番大事で、関わっている基金などのことに割く時間も必要なので、残った時間で取り組むことができればやる、という感じで、ジム・ジャームッシュの新作(『ファーザー マザー シスター ブラザー』)などもそういうやり取りをしました。だからやりたくてもできない作品もあります。ただどうしてもこの監督とやりたいと思ったら、大きな役でなくても関わることもありますね。私自身には俳優業のロードマップのようなものはないんです」

画像: 俳優業ではいつも「言葉の力」に苦労していると吐露

俳優業以外も忙しいケイトは、今年からオックスフォード大学で教鞭を取ったり、難民支援活動を続けたりしている。
「大学教授と言っても客員のようなもので、手探り状態です。まずは学生の興味のあることを探ったら、振付のような動きに興味があるらしく、そこから演劇を教えているんですけど、リハーサルから観客に届けるまでにパフォーマンスを磨いていくんです。あまり磨きすぎると最初の危険な生々しさが失われるので、いかに生き生きした舞台にするかも大事と教えています。難民支援はオーストラリア人として当然と考えています。過去の歴史を見ても難民を受け入れてきた国ですから。夫も同じ考えで、人は歴史から学ばなくてはいけません。このままだと難民は増えていく一方ですからね」

(取材/米崎明宏、撮影/久保田司)

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