撮影/久保田司
ヘアメイク/鈴木海希子
スタイリスト/丸山晃
取材・文/柳真樹子

――出身地である鹿児島の映画『天文館探偵物語』にご出演が決まった時の感想を教えてください。
オール鹿児島ロケということで、鹿児島県民として故郷でお芝居ができるということは、一つの目標が叶ってとても嬉しかったです。
――やっぱり特別な想いはありましたか?
そうですね。慣れ親しんだ街でお芝居させていただくのは初めての経験でした。あとは実家から仕事現場に通えたのは嬉しいですね!
――それはいいですね!
はい。実家で気持ちのリセットが毎日できていたのが救いでした。

――人情味あふれる探偵の物語です。脚本を読まれた印象はいかがでした?
宣伝のキャッチコピーにもなっている『守りたい人たちがいる。その想いが勇気になる」という言葉が、この作品のキーになっていると思いました。それぞれの役に守りたい人たちがいるのですが、凪はその対象が息子の翔真だったので、撮影現場では息子役の子とのコミュニケーションを大切にしていきたいと現場に挑みました。
――シングルマザー役って初めてですよね?
はい。母親役も初めてでした!
――役作りは何か準備されたんですか?
実は事前には何もしていなくて……。というのも「母親らしくいよう」という身構えをまず捨てることから始めました。母親らしく演じようとすることが、逆に凪という女性を演じることに対して嘘になってしまうと思いました。現場に入ってから翔真とコミュニケーションを取ることを大事にしました。彼は初めての撮影現場だったようで最初は人見知りの子でした。だから、撮影の空き時間はずっと手を握らせてもらったり、実際のお母さまともお話ししました。好きなお菓子とかゲームとかを聞いて一緒に遊んでいました。
――何して遊んであげたの?
『スイカゲーム』が好きだったみたいで、私もダウンロードして一緒にやりました。
――“凪ママ”にはなついてくれた?
そうですね。去年の撮影期間中に私の誕生日があり、翔真が「凪ママ!」って呼んで、お手紙を渡してくれました。癒されましたね~。

――凪になりきっていたのですね。
はい。凪を演じるにあたり、自分としては、自分の容姿をなるべく削ぎ落していくことを心掛けていました。見た目の情報量が少ない方がいいと思ったので、なるべくヘアメイクも素の状態でやりたいと監督にお伝えさせていただきました。この期間はあまり美容室にも行かないようにしていたんです。
――飾らずに素の状態で必死に生きているお母さんという印象でした。
撮影時は24歳~25歳だったので、最初はヘアメイクさんも年齢にも合うような濃いめのメイクをしてくれていたんです。でも、「今の凪にはそういう余裕はないなあ~」と思って、自分の感じた違和感をお伝えさせていただきました。ずっと髪の毛も下ろしていたんですが、アイロンでまっすぐに伸ばさずに、あえてうねりを残したままにしていました。
――凪って生活が大変だったんだろうなと思いました。
身も心も追い詰められて極限状態の中、すがるような気持ちでこの街にやってきたんです。そしてなによりも原動力が息子の翔真にあると。そこはブレずに意識していました。衣装合わせの時に監督が凪の生い立ちを細かく書いてくださったメモを渡してくださったので、現場に入る時には、すでに自分の役の軸をしっかり作り上げることができていたのでありがたかったです。

――主演の寺西さんとご一緒するシーンが多かったですが、改めて寺西さんの印象を教えてください。
今回、初めて共演させていただいたんですが、どんなにシリアスなシーンを控えていようと、フラットに現場にいらっしゃる印象でした。誰に対しても親しみ易く、その優しさが周りの方にも伝染していて、いつもこの撮影現場は穏やかでした。
――いい座長さんですね!寺西さんと同じく今やtimeleszとして活動されている原さんとも共演。原さんの印象はいかがでした?
最初に原さんの情報が解禁された時は「謎の男」という役なっていたのが個人的に面白かったです(笑)。ご一緒させていただいて、演技で食らいました!
――厳しいお兄さんでしたね(笑)。
長年会っていなかった兄と対峙するシーンでは、原さんの目が特に印象的で。私は受ける側のお芝居でしたが、凪としてすんなりと兄のセリフが刺さり、心を動かされました。
――バラエティで観る原さんのイメージとはまったく違った!
本当に! 映画では嫌なお兄さんでした(笑)。

