公開記念舞台挨拶に出席したのは、主演の松本穂香をはじめ、奈緒、若村麻由美、窪塚洋介、小関裕太、藤井隆、石坂浩二、中村獅童、角川春樹監督のキャスト、監督含め総勢9名。
本作は累計発行部数400万部を超える髙田郁の時代小説シリーズ「みをつくし料理帖」を角川春樹監督が映画化。生涯最後の監督作品を豪華キャスト陣が華を添えている。主人公の女料理人・澪を演じるのは松本穂香。澪の幼なじみの野江を演じるのは奈緒。かつての角川映画に出演の石坂浩二をはじめ若村麻由美、浅野温子、薬師丸ひろ子、渡辺典子らに、初参加の窪塚洋介や小関裕太たちが好演している。
劇中の祭りのシーンに白狐が出てくることにちなみ、9名の面々が白の衣裳と、福をもたらすと言われている白狐のお面を携えて登壇。公開記念に鏡開きも実施した。
主人公・女料理人の澪を演じた松本穂香
松本穂香「澪を演じさせていただきました松本穂香です。無事に公開を迎えらえて、今、目の前に映画を観た方々がいらっしゃるということで、すごくドキドキしていますが、とてもうれしい気持ちでいっぱいです」
澪の幼馴染・野江(あさひ太夫)を演じた奈緒
奈緒「野江を演じさせていただきました奈緒です。今日という日をみなさんと迎えられてとても幸せです」
洪水で両親を失った澪にとって母のような人物・元天満一兆庵の女将の芳役 若村麻由美
若村麻由美「私は、何度観てもいい映画だなと思っています。私は主人公の澪をずっと見守りながら育ててきた、母親代わり、いざという時はたんかを切る気概のある女の人を演じさせていただきました。若者たちを見守るような役を演らせていただけるようになったことを幸せに思います」
御膳奉行・小松原役の窪塚洋介
窪塚洋介「この令和という時代に江戸時代を生きた人々の感性や食にまつわる思いその物語をみなさまに届けることができて、本当にうれしく思っています」
町医者・源斉先生役の小関裕太
小関裕太「こういった時期にたくさんの努力がありながらだと思うんですけれども、たくさんの方々にこの映画に出会っていただけてうれしく思います。僕自身も題名だけに「身を尽くして」たくさん愛をこめて向き合わさせていただき、とても大切な作品になりました。この作品をよろしく願いします!」
戯作者・清右衛門役の藤井隆
藤井隆「いろんなことがありまして、春から公開する日を本当に楽しみにしてまいりました。こういう場に参加できることができてうれしく思っております。1度、2度、3度とご覧いただけたらと願っております」
澪の料理人としての腕を見抜き、成長を見守って後押ししていく「つる家」の店主・種市役の石坂浩二
石坂浩二「昨晩はニッポン放送でみをつくし料理帖のお話をさせていただきまして、今日はこのあたり(劇場のある有楽町・銀座界隈)を跋扈(ばっこ)している白狐でございます」
吉原で野江を支える又次を演じた中村獅童
中村獅童「又次役を務めさせていただきました中村獅童です。テレビでも映画でも時代劇がどんどん少なくなってきてきている昨今でこういった作品に参加させていただいて非常にうれしく思っております」
メガホンをとった角川春樹監督
角川春樹監督「映画自体は撮影が10年ぶりで、舞台に上がるということも11年ぶりとなります。先ほど石坂さんがおっしゃた通りに、昨日、オールナイトニッポンでユーミン(松任谷由実)と石坂さんと私と3人で(ラジオで)話をしたんですが、その時にこの映画の撮ってる最中、役者の人たちに白狐が入っていると私には見えたんですよ。その話をユーミンとした時に、「角川(春樹)さんにも白狐が入っているわよ」と。昨日トークをしている時にも、「私ね、はっきりと耳が立って鼻が出ている白狐の状態がどんどん膨らんでいる」と言ってすごい私喜んだんですよ。自分自身がこの映画を作るきっかけも京都の伏見稲荷という白狐さんが化身になっているところに、今週実は行っていたんです。それで映画を作るきっかけもこういう風にご挨拶できるのも伏見稲荷の白狐さんのおかげだなと思っております」
撮影、役作りのこぼれ話・エピソード
主演の松本穂香、下がりまゆの澪を演じるにあたっての工夫
松本穂香「私は元々下がりまゆではないので、台本で下がりまゆというのを見る度にすごく不安になって、お家で鏡の前に立って一人でずっと下がりまゆの練習をしてました。もがいているような感じなんですけど、どうにか表情で下がりまゆにできないかなって澪に近づけることはできないかなって思って動かしてました。きたーという実感は正直なかったんですけど、メイクさんとも相談して“松本さんはそんなに気にしなくて大丈夫ですよ、そんなに心配することじゃないですよ、お芝居に集中してください”っていうことだったので。ただ練習はしてました」
吉原の煌びやかな衣裳をまとった太夫を演じた奈緒の心境
奈緒「太夫の役のお話をいただいた時に、憧れの存在だったので自分にできるだろうかというちょっとした焦りとかプレッシャーみたいなものはありましたし、あの格好をできるということがとても楽しみだったんですけど、いざその格好をしてお着物を着せていただいて頭も結っていただいて、お部屋に入った時に、すごく淋しい気持ちになって、こんなにきれいな景色とこんなにきれいなお部屋の中に1人でいる女性ってどれだけ孤独なんだろうっていう、それこそ本当に陽があたる方だからこそ陰の強さというものをものすごく感じました」
中村獅童演じる又次へのシーンについて監督からのアドバイス
奈緒「今回は言葉ではない、言葉にできない気持ちを目で会話してほしい、目で伝えてほしいと、言葉じゃないもので伝えてほしいということを、監督がずっとおっしゃっていて。から汁をもう1度食べたいというシーンがあるんですけど、本当は好きだと生きていてほしい告白の気持ちを口に出せないからこそ、ああやってから汁をまた食べたいという言葉に代えて、目で伝えてほしいと演出を、そのシーンの前にも監督が現場に来てくださって一言おっしゃっていただきました」
それを受け止めた又次役の中村獅童はどう演じたのか
中村獅童「又次は近松の世界観でやってほしいことをお聞きしていたんで、それを参考にというか、はかない思いというか、叶わぬ思いで退廃の美ですかね。又次という役は決してセリフが多い役ではないんですけど、内に秘めた思いということで、台本を100回200回でも読みこんできてほしいと、おっしゃってましたので、文字ではない台本のセリフではない部分で、どういう気持ち、叶わぬ思いを、まっすぐな思いをそういうことを大切に演らせてただきました。村上淳さんとの(激しい)シーン、ああいうお芝居の時は殺陣師の方が入って段取りをつけていくわけですけど、まだ段取りだったんで手順とかを打ち合わせている時に、監督が離れたところで「お前の怒るってそんなもんか!」みたいなすごい怒鳴り声が聞こえたので、あ、これは本気でいかないとヤバいなと思いまして、本番では思う存分演らせていただきました(笑)」
大阪弁(船場言葉)について
若村麻由美「大阪(大坂)は天下の台所と呼ばれ、そこはだいだい船場界隈なんですね。船場言葉というのは、今の大阪の言葉とちょっと違ってお公家さんの言葉からも影響を受けているような、はんなりとした美しい優しい言葉だったんです。澪(松本穂香)がこだわって私のことをごりょんさんって呼ぶんですけど、このごりょんさんって言葉は船場ならではの女将さんの呼び方なんではないかと思うんです。私は大好きな言葉で、なぜかというと実はデビューをした朝ドラの「はっさい先生」に出演した時に、船場の大店に下宿をする学校の先生の役をさせていただいたんです。東京の女の子の役だったんですけど船場言葉に当時憧れていて、いつかごりょんさんって言いたいなって思っていたんです。今回は自分がごりょんさんになったので、うれしかったです」
360°回転する移動するカメラでの撮影(円形レール)
窪塚洋介「(松本穂香との)まな板橋で(澪と別れる)シーンは、夜の撮影でちょっと雨が降っていて雨待ちしたりして臨んだシーンでした。2001年に東映で「GO」という映画を演らせていただいた時に山崎努さんと殴り合う公園の砂場で円形レールのシーンがあったんですけど、男性で父親役と自分が思いを寄せる女性との対峙では全然違う円形レールだな、こんなに気分が違うもんなんだなというのを思ったとか、思わなかったとかです。(2分くらいのシーンの中、セリフは30秒くらいであとはセリフなしのシーン)間を大切に演じられてうれしかったです」
小関裕太演じる源斉先生のシーンで監督がこだわったところ
ーー小関さん、どのシーンかお分かりになりますか?
小関裕太「いやーー。種市さんのメガネが途中で変わったとかですか?先ほど穂香ちゃんに「あったじゃん、あれがあったじゃん」って言われたんですけど、すっぽんがあったということで、それかなっと?撮影中は気づいてなかったです」
角川春樹監督「江戸時代、今でも行われてるんですけど、すっぽん料理店でも、川魚料理店でも夏に放生会(ほうじょうえ)といって食材にしているすっぽんだとか、鯉だとか、鮎だとかを川に流したり、池に放ったりする放生会があるんですよね。その度に、今回の映画の俄(にわか)という吉原のお祭りのそれに合わせて時代考証としてそれをやったり、例えば、澪が使っている包丁は全部堺の江戸時代に使っていた包丁を復元したものなんですよね。そういう風に一つ一つ原作者でも気が付かないところに時代考証の細かいところまでやってきました」
自分にこういう一面があったと驚いた小関裕太
小関裕太「窪塚さんがおっしゃっていた間というのが、今まで自分になかった間というかこの時代を生きていたであろう人の時間の流れというのを、完成した作品に映っている自分を見て感じて、ものすごく感動しました。自分が見たことない自分が見ることができて。間って怖い時があるんですけど、間を愛おしく思うってその通りだなって思ったので、この作品が自分の岐路というか大きく変わった瞬間だなと感じました」
藤井隆が夫婦役を演じた薬師丸ひろ子について
藤井隆「とんでもないことが自分の身に起きているんだなと思いながら撮影に参加させていただきました。(藤井隆が薬師丸ひろ子の大ファンで)同世代の友だちにもファンの方がたくさんいますので、特別な方の一人です。その方に向かって「ふんっ」でなかなか言いにくいですよね。そんな失礼なね。でも役の中でのいただいている言葉なのでやりにくいなとはもちろん思いましたけど、薬師丸さんがリハーサルから(僕の)“ふんっ”に対して“ふんっ”と返してくださったので、夫婦役を演らせていただいている楽しい時間でした。テンションとか雰囲気とかちょっとした間とかは、角川春樹監督が本当に細やかに指導くださったので、近くに来ていただいてOKいただけた時はすごくうれしかったのを覚えています」
火事のシーン
石坂浩二「なかなか火事って起きないもんなんですね。一生懸命火をつけても燃えないんですよ。本当に燃え出すと今度は消えないもんなんですね。あの時は、オープンな場所ですでに建物が建っているところに燃していいものを建ててちょうど雨が降っている時で、油を塗ったりして。(燃えだすと)今度はなかなか消えなくてすでに建っている絶対燃してはいけないものまで、燃えそうになって大変な騒ぎだったんですよ。我々(石坂、松本)は、ほったらかされて、みんな火を消しに行っちゃって、雨の中びちゃびちゃで大変でした」
鏡開き
コロナウイルス感染症対策として、話さないようにとMCから促され白狐のお面をマスク代わりにする面々
最後にメッセージ・松本穂香と角川春樹監督
松本穂香「撮影が1年ちょっと前ということで、昨日(10月16日)から公開を迎えられてとってもうれしく思います。私も撮影を通して、澪という人の好きなものやお仕事に対するまっすぐな姿勢にすごく感銘を受けながら、澪に頑張って追いつきたいなという気持ちで演じさせていただいておりました。澪のお仕事に対する姿勢は観ていただけるいろんな方になにか感じてもらえるものがあるんじゃないかなと思っております。1度観ていただけただけでも大変うれしいのですが、気に入ってたらまた2回3回と、周りの方と劇場で観ていただけたらとてもうれしく思います。本日は本当にありがとうございました」
角川春樹監督「私は73本の映画を、うち8本は演出と監督作品なんですが、今までよくスタッフ・キャスト一丸になって映画を作りましたと言いますよね、でもあれほとんど嘘ですから。でもこの映画に関しては初めてそれを感じました。そういう点では私は自分がかかわった作品で最も愛着があって、現場を離れるってことが、終了するということがとっても淋しくて2ヵ月間映画の撮影が終わってから、毎晩夢を見たんですね。そんなことも初めてのことで。今日映画が出来上がって、お金を払って観ていただけていることが、どれだけ大変なことかと、うれしい気持ちでいっぱいです。ありがとうございました」
巻物にしたためた俳句
私は、映画は祭だと思ってるんですよね。神社であげる神事も祭りですが、映画そのものものが、お祭だと思ってます。
鷹が渡ってくるのは秋ですから、そして鷹はめでたい吉兆とされています。
「映画といふ 祭はじまる 鷹の天 角川春樹」
あらすじ
時代は享和二年の大坂。暮らし向きは違えども8歳の澪(松本穂香)と野江(奈緒)は、まるで姉妹のように仲の良い幼なじみだった。「何があってもずっと一緒や」。しかしそんな二人が暮らす大坂を大洪水が襲い、澪と野江は生き別れてしまう。それから10年後。大洪水で両親を亡くした澪は引き取られ、江戸の神田にある蕎麦処「つる家」で女料理人に。野江は吉原にある遊郭に買い受けられ、幻の花魁・あさひ太夫と名乗っていた。澪が苦心して生み出した料理が、別々の人生を歩む2人を再び引き寄せていく。
映画『みをつくし料理帖』
絶賛上映中
出演:松本穂香 奈緒 若村麻由美 浅野温子 窪塚洋介 小関裕太 藤井 隆
野村宏伸 衛藤美彩 渡辺典子 村上 淳 / 永島敏行 松山ケンイチ 反町隆史 榎木孝明 鹿賀丈史
薬師丸ひろ子 / 石坂浩二(特別出演) / 中村獅童
製作・監督 角川春樹
原作:髙田 郁「みをつくし料理帖」(角川春樹事務所)
主題歌:手嶌 葵「散りてなお」作詞・作曲/松任谷由実 編曲/松任谷正隆(ビクターエンタテインメント)
配給:東映
©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会