撮影/大西 基 スタイリスト/尾上右近:三島和也(Tatanca) ヘアメイク/晋一朗(IKEDAYA TOKYO) 文/八杉裕美子
――ミュージカル『衛生』~リズム&バキューム~では、観る側の想像を上回る、眉をひそめたくなるような悪者達の暗躍ぶりを追ううちに、気が付けば逆に救われるような不思議な感覚を抱きました。
福原「好き勝手にやっている人を見て、“いいな。ああいう風になりたいな”とか、自分ができない代わりにやってほしいっていうのは、夢の世界と一緒なんですよね。王子様のキスでお姫様が目覚めるみたいな夢物語と変わらないと思うんです。(右近さんが演じる)諸星大って役が、別に悪くするつもりもなく人々を傷つけて生きているっていうのを観て、“いいな”と思ってもらえれば。しかも舞台なんでね。現実に職場にいたら本当に嫌ですけど(笑)。それを安全圏で観てもらうっていうのは、すごく楽しいエンターテインメントだと僕は思っています」
――右近さんは演じられる大というお役について、福原さんの脚本を通じてどのように感じていらっしゃいますか。
右近「僕が演じる大のお役でも、“そう捉えるの?(笑)”と思うセリフがあって、物事をひねって考えられることに憧れちゃいますよね。“絶対ダメだろ!(笑)”と思いながらも、残念ながら、ちょっとカッコいいなっていう。それでいて、大は悪に対する自覚が全くないんですよね(笑)。表面的な話ですけど、これまでは美しいものに触れる機会が圧倒的に多かったんですけど、逆に闇の部分だったり、ブラックな部分を前面に出している作品に関わらせてもらうことは初めてなので、台本を読んだときは衝撃を受けました。でも熱いハートが感じられたし、福原さんがおっしゃっていたことをお聞きして、エンタメとして悪を描いていらっしゃって、お客様に純粋に楽しんでほしいというのがとても面白いと思います。歌舞伎以外の舞台の経験はまだまだ少ないですけど、こんな楽しい舞台経験をさせていただいたらこれから先が大変だろうなと思います」
――役者さんも、お客様もハッとさせてもらえる福原さんの想像力の源泉について教えてください。
福原「想像力があるのかどうかはわからないですが、今、急に思い出したのは、僕はテレビを見させてもらえない家庭だったんですよ。親が教師でテレビを見るとバカになるって言って。小学校低学年の頃はドリフターズ全盛期で、みんな月曜日は昨日のドリフの話で大盛り上がりなんですけど、僕は見てないのに仲間に入りたいんで、自分だけのドリフの嘘話をずっとしていたんです。今、考えると友だちは全員見ているわけで、どういう思いで聞いていたのかなと(苦笑)。“昨日の志村けんがさー、あれ面白かったよね”って。仲間に入りたくてしゃべっているけど、そんなの誰も見てないわけですよ。今思うと嫌われていたんだろうなって(苦笑)。想像力というか、嘘つきから始まった(苦笑)。ひょうきん族も放送されていましたけど、僕はタケちゃんマンを知らないわけですよ。聞いた情報で膨らませていた。こんな人なのかなとか。そうやって生きてきました」
――右近さんは、歌舞伎をはじめとする劇場作品だけでなく、近年はドラマや映画等の映像作品でもご活躍されています。多岐にわたる役者としてのご経験を通して得られた気付きについてお聞かせください。
右近「日々の活動の原動力として、歌舞伎が好きということはすごく大きいんですよね。意識的に離れようと思って離れても、結局、歌舞伎に繋げて考えてしまう。考えようとしてなくても、最終的に“あの時のあれがこの瞬間に繋がるんだ”と歌舞伎をやっていてふと思ったりすることもよくあります。あとは、触れてみないより、触れてみる方が確実に自分の人生が楽しいだろうなと思うこともあります。でも最近、そんな中で自分が何を大事にしているのかっていうのはなんとなく気が付いたんですよ。歌舞伎の古典でも、その人が出てきた時にその人が身にまとう空気がありますよね。どうやってまとうのかはわからないけど、僕は空気が良くないっていうのがとても苦手で、本当に良い空気だったり、面白い空気だったり、プラスの空気が生まれている瞬間がめちゃめちゃ好きなんで、“良い空気作り職人”になりたいっていうのを最近すごく思います。バラエティに出させてもらっている時でも、“カッコいい!この人のこともっと知りたい!”と思える尊敬できる方は全員持っている空気が良いんです。そこに憧れを持っていることに最近気付きました!」
――福原さんが脚本・演出をされる舞台ということで、ドラマ「あな番」の脚本を執筆した人の作品だと思って観に来るお客様は驚かれる内容ではないでしょうか。
福原「“こういうものを観に来たつもりじゃなかった”という人にこそ見ていただきたいですね。その人がそのまま生きていたら一生見ることがなかった世界をちょっとだけでも垣間見せたいなと」
――ところで、福原さんが脚本をご担当された映画『あなたの番です 劇場版』の公開が12月に決定しました。
福原「パラレルワールドのストーリーです。時間軸を戻して、ドラマ版の1話の冒頭7分ぐらいのところまでは同じで、そこから先が違うお話です。みなさんに気に入ってもらった登場人物の中で死んでしまった人も生きているところからスタートなので、そういう意味では生きているところをもう一度楽しんでもらったり、また死ぬかもしれなかったり(笑)。ドラマを2クールやらせていただいた中で、映画は2時間で終わってしまうので、ドラマとは別の楽しみ方をお客さんにしてもらいたいですね。観ている方に大きくしてもらったドラマだったと思うので、映画も大きくしていただけたらなと思います」
――右近さんがご出演の映画『燃えよ剣』は10月15日に公開されます。
右近「僕は初めての映画出演作になるのですが、現場の緊張感にまず驚きました。一つの作品に対してみんなが同じ方向を向いて、原田(眞人)監督の元で、みんなが同じ方向に向かって全力で作品作りをしていくという。今ほどメディアに出ていない時期に僕に声をかけていただいて、松平容保というお役をいただいたのですが、その時代に自分が生きているという思いで務めました。映画出演はその姿がフィルムに永遠に刻まれる、その瞬間に撮ったものが永遠に残るというこれまでにない経験にもなったので、より緊張感が高まりました。その空気感を感じていただければうれしいです。もともとは昨年5月公開予定だったのですが、コロナ禍に入って公開延期となり、ようやく10月15日に公開を迎えます。本作は変動の激しい幕末の日本を舞台に、天変地異が起きたりと信じられないことの連続が起こる激動の時代の物語なのですが、その時代を経て、今の日本、日本人があるということを感じていただける超一級時代劇となっています。ぜひ観ていただけたらうれしいです」
PROFILE
福原充則 MITSUNORI FUKUHARA
1975年生まれ。脚本・演出家。
第62回岸田國士戯曲賞 受賞
〈近年手がけた主な作品〉
舞台「忘れてもらえないの歌」[脚本・演出](2019年)
舞台「七転抜刀!戸塚宿」[脚本](2020年)
映画『愛を語れば変態ですか』[監督](2015年)
ドラマ「あなたの番です」[脚本](2019年)
〈待機作〉
映画『あなたの番です 劇場版』[脚本](2021年12月公開予定)
尾上右近 UKON ONOE
1992年5月28日生まれ。
〈近年の歌舞伎以外の主な出演作〉
舞台『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』(2018年)
舞台「この声をきみに~もう一つの物語」(2020年)
ミュージカル「ジャージー・ボーイズ イン コンサート」(2020年)
NHK大河ドラマ「青天を衝け」(2021年)
〈待機作〉
映画『燃えよ剣』(2021年10月15日公開予定)
ミュージカル『衛生』 ~リズム&バキューム~
「善人不在」「悪者たちの爽快ミュージカル」をキーワードに、 排泄物を扱う業者一家の悪行三昧を、 ポップかつグロテスクに、 それでもどこかあっけらかんと、 音楽に乗せて描いていく異色ミュージカル。
本作の脚本・演出を担当するのは、ドラマ「あなたの番です」の脚本を手がけた福原充則。音楽は水野良樹(いきものがかり)と益田トッシュが担当。ダブル主演の古田新太と尾上右近を筆頭に、咲妃みゆ、石田明(NON STYLE)、村上航、佐藤真弓、ともさかりえ、六角精児ら個性豊かなキャスト陣が一癖も二癖もあるキャラクターを演じる。
STORY
ここにいる者たちに欠けているもの。それはモラルと節操だ!!
ナチュラルかつ合法的に悪事を繰り返すとある家族による、搾取と暴走と汗が炸裂する欲望の物語。
昭和33年、水洗トイレが普及する前のお話。し尿の汲み取り業者「諸星衛生」は、社長の良夫(古田新太)、息子の大(尾上右近)を中心に、利益を出すためなら殺人も厭わないという経営方針で、地元の政治家・長沼ハゼ一(六角精児)をバックにつけ、のし上がってきた。
昭和50年、諸星衛生の経営は、良夫から大へと事実上の実権が移り、地元の経済を隅々まで制圧していた。その裏で、かつてのライバル業者だった瀬田好恵(ともさかりえ)が、逆襲の機会を窺って、怪しい組織を率い、その規模を拡大していた。
そんな中、庶民からの搾取の効率化を進める長沼は、大を起用する一風変わった計画を進めることになる。計画を聞きつけ、水面下で諸星衛生に復讐を誓う者たちが集い始める。好恵、禎吉、そしてまたひとりー。
ミュージカル『衛生』 ~リズム&バキューム~
〈CAST/STAFF〉
脚本・演出:福原充則
音楽:水野良樹(いきものがかり)、益田トッシュ
出演:古田新太、尾上右近、咲妃みゆ、石田 明(NON STYLE)、村上 航、佐藤真弓、ともさかりえ、六角精児 他
企画製作:キョードー東京
〈東京公演〉7月9日(金)~25日(日)TBS赤坂ACTシアター
〈大阪公演〉7月30日(金)~8月1日(日)オリックス劇場
〈福岡公演〉8月9日(月)~11日(水)久留米シティプラザ
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