これまでに誰も見たことがない宮沢氷魚がそこにいる――公開中の銃撃戦クライム・エンターテインメント映画『グッバイ・クルエル・ワールド』。豪華俳優陣が集結した注目作で、宮沢は死よりも退屈が怖いラブホテル従業員・矢野を演じている。この物語の中で、刹那的に生きているようでいて心の奥底に残るわずかな希望を抱く矢野の瞳には、時に狂気が映し出され、時に生への渇望が映し出される。妖しくも美しい人物を演じる上で去来した思いを語ってもらった。8月8日発売のSCREEN+Plus vol.80ではこれまで演じたことのない役柄に対する楽しさなどにも言及している。
撮影/奥田耕平(THE96) スタイリスト/庄 将司 ヘアメイク/スガ タクマ 文/八杉裕美子

ーー前回、SCREEN+Plus vol.74で映画『ムーンライト・シャドウ』の等役についてお話を伺ったのですが、その時の役と今回演じられた矢野の役とのふり幅があまりにも大きくて、最後までドキドキして作品を拝見しました。

「ははは(笑)。ありがとうございます(笑)」

ーー『ムーンライト・シャドウ』で演じた等の時は役作りが必要ないぐらいご自身と似ているところが大きかったと話されていました。一方で、今作の矢野はこれまでの役柄とは全然違いますよね。

「そうなんです。懐かしい! 確かに前回(映画『ムーンライト・シャドウ』)は役作りというより、現場に行ってはいるのですが、家にいる状態のような、そのまま演じているみたいな(笑)。その時と比較すると今回は確かにスイッチを入れないといけなかったです。髪色もそうですし、ビジュアル的にも初めてのルックスだったので、観る人はビックリする人も多いかもしれません」

画像1: 宮沢氷魚、映画『グッバイ・クルエル・ワールド』インタビュー“残酷な世界がなくなってくれればという希望に繋がる作品”

――矢野の赤い髪色が印象的です。

「衣裳合わせの時に大森立嗣監督からビジュアルを聞いて、素晴らしいなと思いました。役柄的にもただピンクっぽい赤色にしているわけではなくて、言葉でうまく自分の正直な気持ちを口に出せないけど何かを主張したいというか、表現したいっていう矢野を表すのに、髪の毛を赤く染めるというのが良いなと思いました。矢野が本当にこの世界に対して、どうにでもなっちゃえと思っていたら、たぶんそこまでしないでしょうし、身だしなみも適当になるかなと。でも、ちょっと反抗している部分は、表情や性格からももちろん見えるのですが、パッと画として映った時に最初に目に入る容姿からそれを感じ取れるというのも一つ大事な要素だと思います」

画像2: 宮沢氷魚、映画『グッバイ・クルエル・ワールド』インタビュー“残酷な世界がなくなってくれればという希望に繋がる作品”

――具体的に役作りとしてどのような準備をされましたか。

「一番気をつけたのは目のお芝居です。意識的にやっているところもあるし、自然にそうなっていたというところもあります。何もかもあきらめている人の目ってちょっと濁っているような、くすんでいるような、輝きがもうないんじゃないかなと思うので、そういうふうに矢野を作ろうと思えば作れたんです。全部に失望して、もう自分は死んでもいいからという流れで、最後の一つのアクションとしてあのようなことをしたというふうにも作れたのですが、僕は演じている中でそれだけではなくて、その先の矢野の人生は報われるんじゃないかと。それを信じている自分がいるんです。目の奥にある強いもの――輝きや、意思みたいなものは持っていたいなと思いました。完成した作品を観て監督に感謝しているのですが、矢野もそうですし、玉城ティナさんが演じた美流が誰かを見つめている時の目の寄りカットを長めに残してくださっていたんです。それだけでも感じることがたくさんありました。言葉はないけど二人から感じ取れる憎しみや恨み、でも救われたいという思いなど。僕もそれを意識的にやっていたし、完成されたものを観た時にそれがちゃんと残っている喜びみたいなものがありました。それは僕が一人で作ったものではなく、監督と話し合いながら矢野という役を作っていったのですが、それが観てくださった方に届いていたらすごくうれしいです」

画像3: 宮沢氷魚、映画『グッバイ・クルエル・ワールド』インタビュー“残酷な世界がなくなってくれればという希望に繋がる作品”

――目のお芝居はどのように作っていったのでしょうか。

「計算と言ったらちょっと大げさになってしまうかもしれませんが、“この時の矢野の感情はたぶんこうだよな”と、シチュエーションごとに“こういう気持ちの時ってどんな表情してるかな”と、たまに家で鏡を見ながらシーンを思い出して、こういう顔するかもしれないと思って作っていました。撮影の時は、その表情を思い出しながら計算まではいっていませんけども、大まかなプランとしては考えて意識的に演じていました」

画像4: 宮沢氷魚、映画『グッバイ・クルエル・ワールド』インタビュー“残酷な世界がなくなってくれればという希望に繋がる作品”

――目のお芝居以外に宮沢さんがアイデアを出されたことはありますか。

「矢野が銃を持って撃ち始めるところです。矢野はおそらくこれまでに銃を持ったことはなく、その場で教わったと仮定して、銃の使い方はわかっているという設定でした。ただ、作品的にも画のタッチ的にも、銃撃のシーンをやっぱりカッコよく見せたいので、初めて使っているように見えつつも、そこにカッコよさがあるっていうところを意識して、いろんな人に相談しました。もちろん、監督ともディスカッションし、銃や火薬の監修の方とも話しました。どういう銃の持ち方が良いか、撃ち終わってからまた弾を詰める時にどういう角度がいいかと、結構話し合いを重ねて作りました」

画像5: 宮沢氷魚、映画『グッバイ・クルエル・ワールド』インタビュー“残酷な世界がなくなってくれればという希望に繋がる作品”

――実際に完成した作品をご覧になっていかがでしたか。

「出演者のみなさんがもう主役を張るレベルの方々なので、みなさんの高い芝居力でそれぞれの物語がしっかり描かれていて、主演はもちろん西島さんなんですけども、全員で作り上げた作品だったんだなっていうのを感じました」

――西島さんとは初共演だそうで。

「撮影でご一緒したのは2シーンぐらいだったのですが、本当にストイックな方で、現場では演じられた安西のようにあまり多くを語らない佇まいがとてもカッコよくて。撮影では、セッティングの準備に時間を要するのですが、普段その間キャストはベンチに座ったり、別のところに行って車で休んだりすることが多い中、西島さんはずっと現場にいらして、ご自分がカット的に映っていないシーンでも、ご本人が入られていました。そんな背中を見てとてもカッコいいなと思いました」

――斎藤工さんと共演されていかがでしたか。

「工さんとはとてもご縁があって共演が多いんです。工さんがいるとホッとするというか、お兄さんのような存在でもあります。工さんとの喫茶店のシーンが印象に残っているのですが、頭がぶっ飛んでいる役の工さんは本当に怖くて。目つきも全然違うし。全身タトゥーでギロッとこっちを睨まれると鳥肌が立つぐらい恐怖を感じました。普段はすごい優しい方だけに、工さんの役のスイッチの入り方が素晴らしいなと思いました」

画像6: 宮沢氷魚、映画『グッバイ・クルエル・ワールド』インタビュー“残酷な世界がなくなってくれればという希望に繋がる作品”

――宮沢さんは「クルエル・ワールド(残酷な世界)」をどう定義されますか。

「今の世の中もそうですし、人類の歴史において、ずっとクルエル・ワールドだったと思うんですよ。戦争もずっとあるし、変な事件も多いし。でも平和を夢見るというか、願ってみんな毎日生きていますよね。だから、そんな残酷な不平等な世界がなくなることを願っていると僕は捉えています。でも、闇社会にサヨナラを言うっていう捉え方もできると思うし、それは観る人が決めることだと思うんですけど、僕は大きなテーマとして本を読んだ時にも、完成した作品を観た時も、こういう残酷な世界がなくなってくれればという希望に繋がる作品だと感じました」

――最後に、メッセージをお願いします。

「僕は観ていてスカッとする映画だと感じました。エンターテインメントに溢れた作品の中にも、繊細なお芝居もたくさんあって、細かい人間関係もすごくリアルに描いているので、その点にも注目してぜひ観てもらいたいです。バイオレンスがちょっと苦手な方もいらっしゃると思いますし、僕も正直、バイオレンスは得意なほうではないですけども、美しく思えてしまう不思議な撮り方をしているので、ぜひその部分をみなさんにも観てほしいなと思っています」

PROFILE

宮沢氷魚 MIYAZAWA HIO

画像: PROFILE

1994年4月24日生まれ
米国・カリフォルニア州サンフランシスコ出身

MEN’S NON-NO専属モデル
第12回TAMA映画賞最優秀新進男優賞
第45回報知映画賞 新人賞 受賞
第42回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞 受賞
第30回日本映画批評家大賞新人男優賞
第45回日本アカデミー賞新人俳優賞

〈近年の主な出演作〉
ドラマ「コウノドリ」(2017年)
ドラマ「偽装不倫」(2019年)
NHK連続テレビ小説「エール」(2020年)
ドラマ「ソロモンの偽証」(2021年)
NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」(2022年)
舞台「ピサロ」(2021年)
映画『his』(2020年)
映画『騙し絵の牙』(2021年)
映画『ムーンライト・シャドウ』(2021年)

〈待機作〉
映画『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』(2022年10月7日2作同時公開)
映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』(2023年1月27日公開)
映画『エゴイスト』(2023年2月公開)

〈宮沢氷魚オフィシャルサイト〉

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』

監督・大森立嗣×脚本・高田亮がオリジナル脚本で描く『グッバイ・クルエル・ワールド』。
全員互いに素性を明かさない強盗組織団員らは、ラブホテルで秘密裏に行われていたヤクザ組織の資金洗浄現場を狙い、大金強奪の大仕事を成功させていた。メンバーはそれぞれの生活に戻ったが、ヤクザ組織に追われる日々が訪れ、ラブホテル従業員や刑事らを巻き込み、大波乱の物語が幕を開ける。
主演の西島秀俊をはじめ斎藤工、玉城ティナ、宮川大輔、三浦友和らが演じるのは強盗組織の一員。ラブホテルの従業員役に宮沢氷魚、刑事役には大森南朋が出演。

STORY

夜の街へとすべり出す、水色のフォード・サンダーバード。カーステレオから流れてくるソウルナンバーをBGMに交わされるのは、物騒な会話。
年齢もファッションもバラバラ、互いに素性も知らない5人組が向かうのは、寂れたラブホテル。片手にピストル、頭に目出し帽、ハートにバイオレンスで、ヤクザ組織の資金洗浄現場を“たたく”のだ。仕事は大成功。5人は1億近い大金を手に、それぞれの人生へと帰っていく。
ーーはずだった。ヤクザは現役の刑事を裏金で雇い、強盗組織を“溶かす”ために本気の捜査を開始する。さらに、騙されて分け前をもらえなかった合同組織の一人が命を売ってでも一発逆転に賭けると決意し、ラブホテルの従業員を巻き込んで立ち上がる。
ヤクザ、警察、強盗組織、何も知らない家族、金のニオイに群がるクセ者たちーー正義と悪の境界線は極彩色に塗りつぶされていく。

画像: 映画『グッバイ・クルエル・ワールド』本予告映像(9月9日公開) youtu.be

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』本予告映像(9月9日公開)

youtu.be

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』

2022年9月9日(金)全国公開

出演:⻄島秀俊 斎藤工 宮沢氷魚 玉城ティナ 宮川大輔 大森南朋 / 三浦友和
監督:大森立嗣
脚本:高田亮
音楽プロデューサー:田井モトヨシ
オープニング曲:「What Is This」Bobby Womack(ユニバーサル ミュージック)
劇中曲:「Let’s Stay Together」Margie Joseph(ワーナーミュージック・ジャパン)
エンディング曲:「California Dreamin’」Bobby Womack(ユニバーサル ミュージック)
製作:小⻄啓介 森田圭 甲斐真樹 小川悦司 田中祐介 石田勇 前信介 山本正典 檜原麻希 水戸部晃
企画・プロデューサー:甲斐真樹
製作幹事:ハピネットファントム・スタジオ スタイルジャム
制作:プロダクション スタイルジャム ハピネットファントム・スタジオ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
レーティング:R-15
Twitter 公式アカウント:https://twitter.com/gcw_movie
(C)2022『グッバイ・クルエル・ワールド』製作委員会

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