『ダブルミンツ』(2017年)で鮮烈な印象を残して以降、インディペンデント映画から話題のドラマまで、幅広く活動してきた田中俊介。
2022年はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で曽我兄弟の弟・五郎を演じ、主演舞台『ホームレッスン』が上演。さらに2023年には宮沢賢治とその妹を描く舞台『ケンジトシ』が控えるなど、活躍の場を広げている。
そんな彼の主演最新作『餓鬼が笑う』(公開中)は、平波亘監督による、地獄と異世界が入り乱れる幻想奇譚。めくるめくストーリー展開と重なるかのような挑戦的な撮影に臨んだ田中が、現場での思い出を語ってくれた。
撮影/稲澤朝博 スタイリスト/中川原有(CaNN) ヘアメイク/奥山信次(barrel) 文/山村祥子衣裳/ニット 10万100円(アンフィル 03-5775-3383)、パンツ 3万1900円(アンスクリア/ビショップ 03-5775-3383)、リング 3万800円(ボーニー/エドストローム オフィス 03-6427-5901)※その他はスタイリスト私物
画像1: 田中俊介 インタビュー「予測できないからこそ、観客として新鮮な気持ちで完成した作品を楽しめたのかもしれない」

——今回、主演を務めた『餓鬼が笑う』を、実際に鑑賞されていかがでしたか。
「想像していたよりも、爽やかですっきりとした気持ちになれる作品だったので驚きました。僕が演じた主人公の大貫 大(おおぬき だい)は、映画の中で異世界や地獄を巡って、色んな人に出会い、色んな経験をするので、僕自身も撮影中はジェットコースターのように感情を揺さぶられていたんです。もっと変な映画に仕上がっているだろうと思っていたので、“あれ?”って(笑)。大が自分の人生を一歩踏み出して、前向きな気持ちで終えられる作品でした」
——変な映画になると思われていたんですね。
「はい、最初に出演のお話があった時は”変な作品だな”と思ったんですけど、その不思議な世界に興味がわきました。どんな作品になるのか分からない状態で撮影現場に入って、撮影が終わった後も分からなかったんです。今までに出演させてもらった作品は、どんな後味になるのか完成前にだいたい想像がついていたので、予測できないのは今回が初めてでしたね。だからこそ、一人の観客として新鮮な気持ちで完成した作品を楽しめたのかもしれないです」

画像2: 田中俊介 インタビュー「予測できないからこそ、観客として新鮮な気持ちで完成した作品を楽しめたのかもしれない」

——平波亘監督も「毎日、違う映画を撮っているようだった」とお話されていました。どのような作品になるか見えない中で、何を手掛かりに撮影に臨まれましたか?
「この作品では”受け身でいよう”と心がけていました。大は色んなことに巻き込まれていく役柄なので、僕自身もあまり考えすぎず、共演の方の演技を正面から一つひとつ受け止めていこうと考えていました。相手の方が想像していなかったお芝居をされて、それに対して自分も予期しなかったリアクションをすることもありました。大が彷徨っている様子と、演じる僕自身が重なるといいなと思っていましたね」
——大をどのような人物だと捉えていますか。
「大は心にぽっかり穴が開いていて、自分自身が何者か、胸を張って答えることができないんです。今後どうしていきたいのか思い描いていても、それを声に出して言えないし、常に不安に駆られていて自信がない。僕自身もそういう虚無感は少なからず経験していますし、どこか心の片隅に穴が開いているようなところもあるんですよね。なので、そういう自分自身を、大に乗せていこうと考えていました。”大貫 大を演じるんだ”という姿勢で臨むというよりは、大と似たような感情になった経験を思い返しながら、実際に現場に立って、周りから受ける刺激を直接、自分の心で受け止めようとしていました」
——共演者の皆さんから、多くの刺激をもらったんですね。
「過去に共演したことがある方や、“いつか一緒にお芝居をしたいね”という言葉を交わしていた方が多い現場だったんですよね。なじみのある皆さんと、一種の安心感の中で想像しなかったお芝居をしていく面白さと、初めて一緒にお仕事する方から受ける刺激の両方があって。色んな方と、色んな意味で交わって、色んなものをもらい続けた撮影現場でしたね。今までに経験したことがない感覚でした」

映画『餓鬼が笑う』

未来に希望が持てず孤独に生きる青年が、現世と黄泉の国を行き来しながら、自身の人生を生き直していく。主人公の恋愛と記憶を物語の軸に、三途の河原や、あの世とこの世を繋ぐ関所など、めくるめく異世界が展開。監督は『the believers/ビリーバーズ』の平波亘。主演は『ダブルミンツ』『ミッドナイトスワン』の田中俊介。ドラマ『鎌倉殿の13人』の山谷花純、『グッバイ・クルエル・ワールド』の片岡礼子、『今夜、世界からこの恋が消えても』の萩原聖人らが出演。

〈STORY〉
骨董屋を目指し、路上で物を売って暮らす青年・大貫 大(田中俊介)はある日、古書店で看護師の佳奈(山谷花純)と出会い、一目で恋に落ちる。人生に新たな意味を見出しかけた矢先、広場で警察の取り締まりに遭った大は、頭を殴られて血だらけに。そこから大の人生が少しずつ狂い始める。骨董の先輩商人・国男(萩原聖人)に誘われ、山奥で開催される骨董の競りに参加した大は、いつしかこの世の境目を抜け、黄泉の国に迷い込んでしまい……。

画像3: 田中俊介 インタビュー「予測できないからこそ、観客として新鮮な気持ちで完成した作品を楽しめたのかもしれない」

〈CAST/STAFF〉
出演:田中俊介、山谷花純、片岡礼子、柳英里紗、川瀬陽太、川上なな実、田中泯、萩原聖人監督・脚本・編集:平波亘
企画・原案・共同脚本:大江戸康
プロデューサー:鈴木徳至
配給:ブライトホース・フィルム、コギトワークス
©️OOEDO FILMS

PROFILE

田中俊介
1990年1月28日生まれ、愛知県出身

〈近年の主な出演作〉
映画『向田理髪店』(2022年)
映画『僕と彼女とラリーと』(2021年)
映画『ミッドナイトスワン』(2020年)
映画『恋するけだもの』(2020年)
ドラマ『すべて忘れてしまうから』(2022年)
ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)
ドラマ『妻、小学生になる。』(2022年)
舞台『ホームレッスン』(2022年)

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