上映前舞台挨拶レポート
⼤きな拍⼿で迎えられた⾵間は「みなさんに届いた時に、どういうふうに受け⽌めていただけるか︖ どこかドキドキしながらスタートしたドラマです。こうやってみなさんに受け⼊れていただいて、これから⼤きなスクリーンで⾒ていただけるというのを、とても嬉しく思っています」と挨拶。MEGUMIも「私たちも⼤きなチャレンジだと思って、この作品を作ってまいりました。いろんなことをこの作品を通して感じていただければ嬉しいです」と笑顔を⾒せる。

深夜ドラマから、巨⼤なスクリーンへの“⼤出世”となった本作だが、⾵間は「⼤きなスクリーンで豪太の情けない顔、そして、チカのバチギレをみなさんに⾒ていただけるということで、素晴らしい⾳響でのチカの罵声というのがどうなるのかというのは、すごく楽しみなところです」と語り、MEGUMIは「これはドキュメンタリーみたいな作品です。⼤きな事件が起きたりとか、いきなり宇宙⼈が来たりとか、SFみたいな物語がバーっとなって揺さぶられるような物語ではないんでが、“家族”という、この社会の中をたゆたいながらも葛藤して、家族だからこそのコミュニケーションがあって…『家族ってこうよね︕』ということをみなさんにドンっと突き出したような作品です。これをこんな⼤きなスクリーンで⾒られるというのはなかなかない体験だと思います」と喜びを⼝にした。

原作者でもある⾜⽴監督は、もともと本作を映画にしたいという思いがあったことを明かしつつも「もっと⼩さなところを想像していたので、こういう⼤きいところで⾒ていただくと、もしかしたらドン引きされる⽅もいらっしゃるかもしれないと思って不安ではあるんですけど」と苦笑い。「僕⾃⾝もスクリーンの⼤きさにやや引いていますけど、何とかこの夫婦、家族をみなさんが受け⼊れてくださること祈っています」と率直な思いを告げた。

1⽉に⾏われたドラマの制作発表でも、視聴者の反響が気になると⼝にしていた⾵間。「台本を受け取って読んだ時も思ったことですが、ここまでつまびらかにさらけ出している作品というのはなかなかないんじゃないかなと思います。MEGUMIさんもおっしゃったように、劇的な成⻑ではなくて、⼈間が本当に⼀歩ずつ、ちょっと変わったのかな…︖ という芽みたいなものを⽬撃していただく作品なので、みなさんが⾒守ってくれるかなとドキドキしていたんですけれども、ここまでたどり着いたということは、多くの⼈たちが応援してくれて、作品だけじゃなくてキャラクターたちの家族になってくれて、⾒守ってくれたおかげだなとひしひしと感じています」と感慨深げに振り返る。
MEGUMIは、⾵間の⾔葉にうなずきながら「ドラマで3話⽬がオンエアされたくらいにSNSで『⾵間くんをいじめないで︕』とDMが届いたんですね」と告⽩。「最初は私(チカ)を⾮難するコメントを⽬にしてたんですけど、だんだん『あれは⾵間(豪太)が悪い︕』となっていき、ヒヤヒヤしながらも安堵しました(笑)」と⾃らのもとに届いた反響の⼤きさを明かす。
本作は、⾜⽴監督⾃⾝の体験をベースにした“ほぼ実話”。⾵間が「メチャクチャ気になるんですけど、監督のもとにはどういう反響があったんですか︖」と質問すると、⾜⽴監督は「9割⽅が⾮難ですよ(苦笑)。僕⾃⾝は、6話くらいのタイミングで『豪太って良い夫なんじゃないか』という声がSNSで上がり始めるのを期待していて、最終話までエゴサを続けたんですが、そういう声はなかったです。世の中のみなさん、わりと厳しいんだなって…」と苦笑い。そんな⾜⽴監督の⾔葉をMEGUMIは「私も監督から『豪太ってメチャクチャ良い男で良いダンナですよね︖』と⾔われた時、ちょっと何を⾔ってるかわからなかったです」とバッサリ︕ 劇中のチカばりの切れ味に会場は笑いに包まれた。
劇中のチカの数々の罵倒の⾔葉は、⾜⽴監督が実⽣活で妻から⾔われた⾔葉なのかを尋ねると、監督は「そうです。むしろかなり⽔で薄めてセリフに起こしました」と明かし、MEGUMIは「私も撮影中、⼝が悪くなりました。あそこまで⾔うんで気持ちいいんです」とふり返る。
⾵間は、そんなMEGUMIが演じるチカの罵倒の鋭さを絶賛︕「あの切れ味が、ちょっとでも湿り気を帯びたら、つらくなる瞬間が出てくるかもしれないけど、(視聴者の)みなさんが⼼の中で『豪太、もうちょっとちゃんとしてくれないかな』という気持ちになった時に、スパンっと⾔ってくれるんです」と讃える。
それを受けたMEGUMIも「⾔った後の、⾵間くんの全然響いてない顔が上⼿いんですよ。仏様みたいな顔で『ん︖』って感じで聞いているのが、余計に腹が⽴ってくるんです。受け⾝が素晴らしかったです」と⾵間のリアクションを称賛した。


ちなみに、劇中の柳⽥家のシーンは⾜⽴監督の⾃宅で撮影が⾏われており、そうした空気感も作品に⼤きな影響を与えたよう。⾵間は「撮影の合間も、2⼈で家の中で待機していて、家の中のイスに座ってしゃべっていると、不思議とだんだん『ここが私たちの居場所だな』って感じがしてきて、それが作品に反映されてると思う」と述懐。MEGUMIも「“仲良くなる”というのを超えて、本当に毎⽇⼀緒にいたので、⾵間くんはゲームしてて、(息⼦の)太郎役の鉄ちゃん(嶋⽥鉄太)は漫画を読んでいて、私は横で筋トレをしていたり、⾃分の時間を同じ部屋で過ごして、会話もしたりしなかったり、『これぞ家族だな︕』という関係値になる瞬間が何度もあった。その距離感をつくれたことが、会話のやりとりやムード、匂いに反映されていると思います」とうなずいた。
⾜⽴監督は、⾃らオファーしたという⾵間、MEGUMIの演技について「編集段階の映像を⾒ていて、本当に⾯⽩くて…。⾵間さんの豪太が、僕の想像の上を⾏く、あんまり⾒たことないダメな感じになっていて、何度⾒てもおかしいんですね。回を重ねていくうちに、ダメさが愛おしくなってきてしまって『このダンナ、理想のダンナなんじゃないか︖』と思うようになってしまいました。MEGUMIさんは、罵倒するシーンが⾒せ場ですけど、そこは100%ハマる確信がありました。それ以外の⽇常の細かな部分、演技なのか、演技じゃないのかわからないような⽣活の⼀部のたたずまいが素晴らしくて、それがあるから罵倒のシーンが光ったし、この3⼈が家族に⾒えるんだなと思いました。本当に幸せな撮影と編集の時間を過ごさせていただきました」と惜しみない称賛の⾔葉と共に感謝を⼝にした。
⾵間は、監督からの⾔葉に「ダメさ加減を褒められるって、そうそうない経験で嬉しく思います。それと同時に、監督がダメさを褒めてくれればくれるほど『監督をお⼿本にしました』という⾔葉がカウンターのように効いてきて、どう処理しようかと……」と苦笑交じりに語り、会場は再び笑いに包まれていた。

舞台挨拶の最後にMEGUMIは「この家族、本当にムチャクチャだし、⾔葉も激しいし、汚いし、リアリティ満載ですけど『こういう家庭もあるんだな』っていう、のぞき⾒していただくような気分で⾒ていただけたらと思います。家庭を続けるって⼤変だし、これから結婚される⽅は、キラキラした⼊⼝のイメージはあっても、中盤や後半のイメージはできていないかもしれないけど、結婚って実際にこういうことだったりするし、家族ってこういうものだったりするので、⾃分の⽣活と照らし合わせながらクスクス笑って、この家族の成⻑、進化、変化を体感してもらえたら嬉しいです」と呼びかける。
⾵間は「家族っていうのは⾃分の家の中で、他の⼈たちがいない時に真の姿が⾒えるものだと思います。その姿を⾒る機会はなかなかないんですけれども、良いところも悪いところもさらけ出して、対峙するのが家族だと思っていますので、その姿をみなさんに⾒守ってもらえたらと思います。時にキャラクターたちを叱咤したり、激励したりする瞬間が出てくる――みなさんも⼀緒に家族になっていただく作品だと思っております。もしよろしかったら、柳⽥家の家族になっていただけたらと思います」と語り、温かい拍⼿の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
『劇場版 それでも俺は、妻としたい』
5⽉30⽇(⾦)ロードショー
出演:⾵間俊介 MEGUMI
嶋⽥鉄太 吉本実憂 熊⾕真実 近藤芳正
原作:⾜⽴紳『それでも俺は、妻としたい』(新潮⽂庫刊)
脚本・監督:⾜⽴紳
配給:東映ビデオ
ⓒ「それでも俺は、妻としたい」製作委員会