アニメ「オッドタクシー」の脚本で知られる此元和津也が原作・脚本としてオリジナルストーリーを書き下ろし、映画「もっと超越した所へ。」やドラマ「忘却のサチコ」などMV、CM、TVドラマや映画のディレクションを数多く手掛ける山岸聖太が監督を務めるミステリードラマ「シナントロープ」が10月6日(月)より放送。
街の小さなバーガーショップ“シナントロープ”。 そこで働く8人の若者たちのリアルな人間模様と、不穏な世界観の中で緻密な伏線や巧みな会話劇によって美しくエモーショナルに描かれる青春群像ミステリー。主人公のさえない大学生・都成剣之介を水上恒司が、都成がひそかに想いを寄せるヒロイン・水町ことみを山田杏奈が演じる。

撮影/久保田司
スタイリスト/藤長祥平【水上】、渡邊薫【山田】
ヘアメイク/中村みつき【水上】、菅長ふみ【山田】
取材・文/佐久間裕子

画像1: 水上恒司×山田杏奈が緻密で軽妙な会話劇で魅せる青春群像ミステリー「シナントロープ」インタビュー

――脚本を読んでどんなところにこの作品の魅力を感じましたか?

水上 会話劇にもいろんな種類がありますが、今回は台本の構成やからくりがおもしろいと思いました。例えば、シーン1の最後のセリフが、シーン2の最初のセリフに掛けられていて同じ文字を使っていても、意味やセリフを言う人が違ったりするんですね。そしてそこから物語がさらに広がっていく。セリフの中の言葉をシャレとして成立させるためだけに構成しているのではなく、それぞれのキャラクターたちが立つような要素になっている、そこが「シナントロープ」の核になる部分なのかなと思いました。

山田 私は此元和津也さん脚本の「オッドタクシー」をすごく楽しく観ていたので、「シナントロープ」の脚本もバーッと読み進めてしまいました。今回も此元さんの中にキッチリと世界が作られていて、私たちが演じる役も一つの駒としてその世界を作るために動いている。一つひとつの役割がすごく魅力的に映る脚本だなと思いました。

水上 監督の山岸(聖太)さんとも話しているんですが、僕が演じる都成はいかにも主人公という人物ではないと思うんです。そういう様を新しい主人公像としてカテゴライズして、世の中に提示できたらいいなと。そういう主人公であることで、他のキャラクター一人ひとりの人物像を際立たせていくことができるんじゃないかと思っています。民放ドラマって、視聴者の方にこの役者さんが出ているから観ると思わせるような作品がまだまだ多いじゃないですか。そう思ってもらうためには、山田さんは良いのですが水上恒司ではまだ足りないと思うんですよね。

山田 そんなことはないですよ(笑)。

水上 いやいやいや、そう思うんだよ(笑)。そういう状況の中、先程山田さんもおっしゃったように、この作品において我々は駒の一部、歯車のひとつなんだって、心の底から僕は思える。なぜなら作品自体がちゃんとパワーを持っているから。それが僕は嬉しいです。

――それぞれ役柄を演じていて楽しいことを教えてください。

水上 脇を演じていると、そのとき自分の役が何をしているか説明されていないときもあるんですね。それで困ったら「じゃあ自分で作ろう」と考えて、「とりあえず主人公の一挙手一投足を見つめる脇役になればいいか」という選択肢がある。そういう脇の経験もあるから思うんですけど、今回の主人公はめちゃめちゃ無視されているんですよ。一人でブツブツブツブツブツ言っているみたいな(笑)。

――確かにバイト仲間の中でも冷遇されているような(笑)。

水上 でも人間、生きているとそうじゃないですか。いろんな人がいて、それぞれが主役の人生という舞台に立っていて、その人以外は脇役として存在しているだけ。かといって、その人生をずっと見ているわけでもない。僕は「シナントロープ」をそれぞれのキャラクターが主人公の舞台が混ざり合っているチームとして捉えているので、一人ひとりの人生をちゃんと成立させて、これが世の中のリアリティーだって意味を持たせて演じられることが楽しいです。

――山田さんはいかがですか?

山田 会話において各々のキャラクターが立ってくる感じがシンプルに面白いですし、その中に自分がいるのがすごく楽しいです。なんて言うんでしょう……ストーリーの都合上、これを私が言っておかなきゃいけないというセリフがない。そして大人数がいるシーンでありがちな、「この人とこの人がセリフを交換しても同じだよね」って思うようなセリフがなくて、キャラクター全てに役割があり、一人ひとりその人が言うべきセリフをちゃんと喋っている。だから役者として作品に参加していて本当に楽しいです。

水上 そう、キャラクター一人ひとりが、作品の都合による駒じゃないと思えるんだよね。

画像: ――山田さんはいかがですか?

――おふたりはさえない大学生の都成剣之介と、その都成が心を寄せる水町ことみを演じます。今回演じるキャラクターと似ている、もしくは全く違うと感じる部分はありますか?

水上 それぞれの人との距離感みたいなものが似ていると思います。水町に対しては恋愛感情があるし、他の人には儲け話をしたり、夢や家族の話もします。バイト仲間とは仲良しこよしではないけど、ちゃんと会話をして挨拶もする。世間話もすれば冗談も言い合い。でも友達? って言うような関係性ってあると思うんです。そういう都成の人との距離感が僕と似ていると思います。そして似ていない点は、もっとはっきり喋れよって思うところ(笑)。

山田 似ている点……、あるかな?

水上 オレ、あると思うよ。

山田 ホントですか?

水上 したたかなところ(笑)。

山田 他の取材でもおっしゃっていましたね(笑)。「したたかだよね」って。

――自覚あります?

山田 うーん、したたかって悪いことじゃないなと思いますけど……。

水上 全然悪くない。絶対必要!

山田 そうですよね。水町のキャラクター紹介として、気が強いという意味でしたたかという趣旨のようなことがあるんですけど。そういう部分は嫌いじゃないなと思いますし、逆にそういう人でいたいなと思うようなキャラクターです。水町はいろんな面があるので、全部が私と同じというわけではないんですが、集団の中にいるときの立ち位置みたいなものもちょっと似ている部分ではあるのかなって思います。

水上 バーガーショップの場面は、4日間ぐらいで1〜3話みたいにブロックごとに撮影しているので、どこかのブロックで僕がひたすら水町に暴言吐かれているところがあったんですね(笑)。杏奈ちゃんに「こうこうこうだよね」と言われて、「ごめんなさい」みたいな。そういうところは杏奈ちゃんにはないよね。

山田 それはそうですね(笑)。

水上 それはそうか(笑)。

山田 水町はしたたかではあるけれど、出さないしたたかさというか。彼女なりのいろんな考えがあってのことですからね。

――ちなみに山田さんのどんなところにしたたかさを感じるのでしょうか?

水上 僕もしたたかなんですけど(笑)。こういう仕事をしていると、無難なことしか言わない人もいるじゃないですか。絶対、他のこと考えているだろうって思うような。

――腹の中は絶対違うよね、みたいな?

水上 そういうのもあるし、すごく真っ当な人がこんなことするんだ! って報道があったりするじゃないですか。そう考えると、僕らってやっぱりしたたかなんですよ。僕は山田さんと5年前に初めてご一緒してから僕にもいろんなことがあり、山田さんもいろんなことを経験されてきて、その上でしたたかさを身に付けることって、絶対必要だと僕は思っているんです。そして人とのコミュニケーションや接する上で、一番大事なのは健気さだと僕は思っていて、山田さんにはそれがあると思っています。だからこそ、僕は「したたか」という言葉で表現できる。本当にしたたかさしかない人には、こんなことは言えないですから。いろんな経験で得た強い部分を濃くしつつも、僕も杏奈ちゃんもまっすぐさや正しさを持ち続けているので、そこを忘れずにいたいなと。

――では、水上さんから水町と山田さんの似ている部分が出ましたたが、山田さんから見て都成と水上さんの似ている部分や共通点はあります?

山田 どうだろう……。都成は一途ですよね。好きな人や尊敬できる人には、こじ開けてその気持ちを伝える。水上さんにもそういう部分があったら一緒なんでしょうけど、そういう部分を見ていないのでわからないです。どうですか?

水上 うん、一途だし冷めるときも一瞬です(笑)。一生一途、冷めるの一瞬みたいな。

山田 「好き好き好き! もう嫌い」みたいな?

水上 うん。なんかそういうと、犬みたいだよね(笑)。

――本能的ってことですね。では今回、会話劇ということで読み合わせなど、事前に準備はありましたか?

山田 リハーサルがありました。

水上 うん、シナントロープ店舗内の3話ぐらいかな。

山田 そうですね。3話ぐらいまでの長めのシーンを2、3シーンほどリハーサルしましたね。

水上 つかみとして8人が初めて一緒に会話をする居酒屋のシーンもやりました。僕や坂東龍汰さんは、バチバチに最初からやってました。

山田 飛ばしてましたね。最初にリハーサルをやったのが、都成と坂東さん演じる木場がずっと喋っているシーンで、その二人の様子を見て、これはもう大丈夫だって思いました。

水上 ほら、したたかだ(笑)。

山田 どういうことですか(笑)。私はリハーサルでひと言目を発する人になってたら、もう前の日寝られなくなっちゃうんですよ。

水上 そうなんだ。全然そう見えない。

山田 うん、緊張はしないですから。

水上 オレは毎日めちゃめちゃ緊張してる(笑)。

水上恒司
生年月日:1999年5月12日
出身地:福岡県

<近年の主な出演作>
映画『火喰鳥を、喰う』(10月3日より公開)
映画『九龍ジェネリックロマンス』(25年)
劇場アニメ『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』(25年)
連続ドラマW「怪物」(25年)
ドラマ「ブルーモメント」(24年)

<待機作>
映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』(12月5日公開予定)

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