『愛に乱暴』で世界の映画祭を沸かせた森ガキ侑⼤監督最新作『架空の⽝と嘘をつく猫』が、⾼杉真宙を主演に迎え2026年1⽉9⽇(⾦)より全国公開。本作は世界15⼤映画祭のひとつ、タリン・ブラックナイト映画祭(PÖFF)の公式コンペティション部⾨に選出され、撮影賞を受賞したことでも注⽬を集めている。この度12 ⽉10 ⽇(⽔)に⾼杉真宙ほかキャスト、森ガキ侑⼤監督らの舞台挨拶付き完成披露上映会を実施した。
画像1: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

映画上映前、⼤勢の観客の前に⽴った⾼杉は「この映画は1年半ぐらい前に撮影したもので。こうしてようやく皆さまに届けられるということで本当にうれしく思います」とあいさつ。森ガキ監督も「今⽇は久しぶりに役者陣の皆さんとお会いできて、この映画がようやく皆さんに観ていただけることになったなと思い、ちょっと熱い気持ちがこみ上げてきました。すごくハートフルな映画になっていると思いますので、今⽇は楽しんで帰ってください」とコメント。ようやく観客の皆様に作品を届けられる喜びを明かし、豪華キャスト陣が集結した舞台挨拶がスタート。

冒頭、ヨーロッパ・エストニアで開催された「タリン・ブラックナイト映画祭」で最優秀撮影賞を獲得したことに触れられると、そのトロフィーが場内に。森ガキ監督は「これはスタッフ全員と、そして役者の皆さん全員で取れた賞だと思っています。ヨーロッパの⽅たちからは『すごく詩的で美しい映画だった』と評価していただきました」と誇らしげ。会場からは温かい拍⼿が送られる中、トロフィーを⾒ながらコソコソ話しで盛り上がる役者陣。その理由を問われると、安⽥が「素晴らしいんですけど、中(の絵柄)は⽝なのか猫なのかオオカミなのかって。キャスト陣は誰も監督の話を聞いてなかった」と暴露し、会場は⼤笑い。作品タイトルに⽝と猫が⼊っているだけにどうしても気なった様⼦。ちなみに、森ガキ監督によると、この絵柄は「オオカミ」であるとのことである。

画像2: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

本作で⾼杉が演じる⼭吹は、他者を思いやるとにかく優しい⼈物として描かれている。彼がそんな役を演じるにあたり、⼼がけたこととは何だったのだろうか。「彼を演じる中で、彼がどういう⾵に⼭吹という⼈になっていったのか、その過程は理解できるなと思います。きっと“優しい”という⾔葉が嫌いなんだろうなと思って演じていました」と役柄を分析。さらに、「僕⾃⾝は“優しい”という⾔葉はあまり褒め⾔葉だと思っていないというか…。客観的に⾒て、『優しい』と⾔ってもらえることって、意外と⾃分のためだったりすることも多いですからね」と⾃⾝の考えを明かすと、優しいという⾔葉に込められた深い⼼理を説いて場内を唸らせていた。

画像3: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

⼀⽅、⼭吹の⼩学校時代の幼なじみ・頼を演じた伊藤と⾼杉は今回で3度⽬の共演。「もちろん役によって雰囲気がガラッと変わる⽅だなという印象はあるんですけど。でも、⾼杉さんは⾼杉さんだな、みたいな」と、⾼杉への信頼を伊藤がコメント。⾼杉も「でも最初にご⼀緒した時よりお話することができたと思います。お互い⼤⼈になりました(笑)」と今回の撮影を振り返っていた。

⼭吹の初恋相⼿・かな⼦を演じた深川は、⾃⾝の役どころについて「分かりやすい⾔葉を使えば『あざとい』⼥性のくくりになるかもしれない」と分析する。「でもそれだけじゃなくて、⼩さい頃からの⺟親との複雑な関係があったり……100%意識していたらあざといになるかもしれないですけど、無意識でやってしまっている部分もあるのかなと。かな⼦の⼈⽣をぜひ⾒届けてほしいです」と印象的な役柄をアピールした。

劇中でのかな⼦は、⼭吹をめぐって、伊藤演じる頼と三⾓関係のような関係性にあるが、実際の⼆⼈は⼤の仲良しだという。役柄上は⾔葉を交わすシーンは少なかったものの、撮影の合間に⼀緒に出かけたりもしていたそうで、思わず「あ、そうだったんだ。へえ……」と⼆⼈の交流に驚きの表情を⾒せる⾼杉の姿に会場はクスクス笑い。伊藤も「同じシーンが少ないからこそかな、という感じです」と笑顔で付け加えていた。

そして⼭吹の姉・紅を演じた向⾥は、⾃⾝の⼦ども時代を演じた⼦役について「本当にそっくりですよね」としみじみ。彼らをキャスティングするにあたり、向⾥と⾼杉の幼い時の写真を参考にオーディションを⾏ったと明かした森ガキ監督。それを聞いてあらためて向⾥が「幼少期の紅がなんとか家族を繋ぎ⽌めておかないとって踏ん張ってる感じがあって。常に⼒が⼊ってるんですよ。それがすごく良くて。それを⾒てるだけで私はもう、グッとしてしまいました」と紅の⼦供時代を演じた⼦役のお芝居に⼼動かされた様⼦。さらに、⼀緒に共演した⾼杉について「本当に好⻘年ですよね。優しいし」と語ると、その“優しい”という⾔葉にドッと沸いた会場内。⾼杉も「(優しいというのは)本当にそうか分からないですよ」と冗談めかしつつ、「そう⾔ってもらえるのはうれしいです」と素直な笑顔を⾒せていた。

⼭吹の⺟親・雪乃を演じた安藤も「⾃分も⺟親なんですけど、こうあるべきではない姿というのを雪乃は辿ってしまうんです。きっと⼭吹がわたしにかけてくれる優しさが⽣きる術だったのかなと。普通の愛をあげられなかったのが残念です」と、傷ついたまま現実を受け⼊れることができなかった雪乃という役柄について語り、雪乃の夫であり⼭吹らの⽗・淳吾役を演じた安⽥は、森ガキ監督に、なぜ⾃分に淳吾役をオファーしたのかと質問。その真意を、「どうしようもない男だなって。それにキャスティングされたということは、ん︖ と思った」と⾃虐交じりにコメントすると場内には笑いが。問を投げられた森ガキ監督は、「安⽥さんはどんな役でもできる⽅なので、その中で何も⾔わなくてもちょっと不穏な・ミステリアスな感じを漂わせたいと思った」と安⽥だからこそのキャスティング理由を告⽩。その⾔葉に安⽥も安⼼した様⼦をみせていた。

画像4: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

イベント後半では、映画にちなみ「皆さんがこれまでについた『優しいうそ』を教えてください」というトークコーナーが。まずは向⾥が「カフェで店員さんにお茶をこぼされて、びしょ濡れになったけど『防⽔なので⼤丈夫です』とうそをついた」というエピソードを披露。「そこで変な空気になると、店員さんがバイト時間中、引きずったままになってしまうかなと思って」という優しい配慮に、登壇者たちからは「優しい︕」と感嘆の声が。⺟親役の安藤は、かわいい⼥の⼦のイラスト付きで「これいいよ、ちょうだい」という会話の回答に。「娘が⾷いしん坊で、おかずやスイーツを分け合っていても『もっとちょうだい』と⾔われると、⾃分は⾜りなくても『あ、いいよ』って差し出します」という、役柄とは対照的な、親⼼あふれるエピソードを披露した。

画像5: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

さらに深川は「コンビニに住んでいる」と回答。「仕事終わりにマネージャーさんに送ってもらった時に、家の近くのコンビニで降ろしてもらったんですけど、⼀緒に乗っていたマネージャーさんのお⼦さんに『コンビニに住んでるの︖』と聞かれて。夢を壊しちゃいけないと思って『そうだよ、⾷べ物も飲み物も全部⾷べ放題なんだよ』とうそをつきました」と告⽩。かわいいエピソードに会場をほっこりとした空気に包みこんだ。

画像6: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

安⽥の回答は「⼤丈夫」。「『⼤丈夫』は魔法の⾔葉。やばいことがあっても『⼤丈夫だよ』と⾔うと安⼼するじゃないですか。ただし『⼤丈夫、⼤丈夫』と2回⾔うと⼤丈夫じゃないかもしれない(笑)」と語り、会場を沸かせた。

画像7: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

そして森ガキ監督は「テイク2」と回答。「テイク1を撮った時に『今の良かったですよ。もう⼀回いってみましょう』と⾔う時の『良かったですよ』は、⾃分の中での優しいうそなのかな」と現場の裏話を告⽩すると、これには登壇者たちも「⼤丈夫なのかな」と⼼配しながら笑っていた。

画像8: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

伊藤はというと、「嘘というか、みんなが”あぁ〜“ということかなと思うんですけど…」と前置きしつつ「初めて聞いたようなリアクションをした」と回答。その答えを聞いた瞬間、全員が”あぁ〜“とリアクションし、まさに︕な反応に場内全体からも共感の声が漏れていた。

画像9: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

最後に⾼杉が「タクシー……」と回答。「空港までタクシーに乗った時、運転⼿さんがすごくおしゃべりな⽅で。その⽅の壮絶な⼈⽣の話を聞くことになったんです。到着予定時刻がギリギリになって『まずいな』と思ったんですが、運転⼿さんが話に夢中になっていて。そのタイミングで『時間⼤丈夫︖』と聞かれたんですが、話の腰を折るのも悪いなと思って『⼤丈夫です』と答えました」と述懐。それだけではなく、「タクシーの中で『もうこの⼈の⾯⽩い話を聞けるなら、次の⾶⾏機でもいいかも』と覚悟を決めていました」と付け加えた⾼杉。結果的には⼩⾛りで空港に向かい間に合ったというが、このエピソードに登壇者たちも「優しいを超えてますよ」と⾼杉の⼈柄に感嘆しきりだった。

画像10: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

そんな舞台あいさつも終盤となり、最後に⾼杉がこれから映画を観る⽅にメッセージを。「あらためて家族ってなんだろうと考えてみて…家族というのは、切っても切れないものなんだなと思いました。でも家族の24時間を全て知っているわけではないから、どこかで他⼈になっていたりもする。そんな中で、この映画は家族のことだけじゃなくて、隣にいる⼈のことも思いやれる映画なのかなと思っています。⾒えないだけで、いろんな⼈が事情を抱えて⽣きている。この映画は、そんな背景を考えさせてくれます。⾃分は映画とか作品というのは、⼈の⼈⽣を2時間でも1時間30分でも奪うものだと思っているので、⾒てくださった⽅たちが何か⼈⽣が変わるものがあればと思っているんですが、この映画は間違いなく、皆さんの価値観だったり⼈⽣というものを変える⼒がある作品だと思っています。どうぞよろしくお願いいたします」と作品へのあふれる思いを明かし、舞台挨拶を締めくくった。

画像11: 『架空の⽝と嘘をつく猫』登壇者らを感嘆させた高杉真宙がついた“優しい嘘”とは?

『架空の⽝と嘘をつく猫』
2026年1月9日(金)公開

<STORY>
弟の死が受け⼊れられない⺟のため、弟のフリをして⺟に⼿紙を書き続ける、⼩学⽣の⼭吹。空想の世界に⽣きる⺟、愛⼈の元に逃げる⽗、夢を語ってばかりの適当な祖⽗と“噓”を扱い仕事をする祖⺟、そして“嘘と嘘つきが嫌い”な姉。⼀つ屋根の下に住んでいながらもバラバラに⽣きている家族の中で⼭吹は今⽇も嘘をつきながら成⻑していく―。

出演:⾼杉真宙
伊藤万理華 深川⿇⾐ 安藤裕⼦ 向⾥祐⾹ ヒコロヒー
鈴⽊砂⽻ 松岡依郁美 森⽥ 想 ⾼尾悠希 後藤剛範 ⻑友郁真 はなわ
/安⽥ 顕 余 貴美⼦ 柄本 明
監督︓森ガキ侑⼤
脚本︓菅野友恵
原作︓寺地はるな『架空の⽝と嘘をつく猫』(中央公論新社刊)
配給:ポニーキャニオン
©2025 映画「架空の⽝と嘘をつく猫」製作委員会

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