マレーシアの女性監督の“伝説の映画”が8年の時を経ていよいよ日本でも見られる!
多民族・多宗教国家マレーシアで一貫して他者への寛容を描き、多くのファンを持つヤスミン・アフマド監督。この映画は、51歳の若さで夭逝した彼女の遺作長編で、小さな町の高校を舞台に、さまざまな人種の若者たちの恋や友情、葛藤をみずみずしく描いている。
この映画を発表後、ヤスミン監督は脳内出血で急逝したが、彼女の死後にこの映画は福岡と東京の映画祭で上映され評判を呼んだ。その後もこの映画を愛する人々によって自主上映が続けられてきたが、製作から8年の時を経て、ついに日本でも一般上映されることになったのだ。
ある町の高校で、学生たちによる芸能コンテスト“タレンタイム”が開催される。裕福なマレー系の女子学生ムルー(パメラ・チョン)はピアノ演奏でオーディションに参加。そんなムルーをバイクで送迎するマヘシュ(マヘシュ・ジュガル・キショール)はインド系の男子学生で耳が聞こえない。日々の送り迎えの中で二人は恋に落ちるが、マヘシュの母親は宗教上の違いから二人の交際を認めない。
二胡を演奏するカーホウ(ハワード・ホン・カーホウ)は中華系。厳しい父親から成績トップを命じられている。そんな彼のクラスに転校してきたマレー系のハフィズ(モハマド・シャフィー・ナスウィップ)は、学業優秀なうえにギターや歌も上手で教師からの受けもいい。カーホウはそんな悩み知らずのハフィズが気に食わず、あらぬ噂を流してしまう。だが悩み知らずどころか、ハフィズの母親は難病で余命わずかだったのだ。
悩みや葛藤、恋や妬み、友情や対立…さまざまな感情が溢れる中、タレンタイムの幕が開く。
ヤスミン監督は様々な人々が混在する世界をそのまま肯定し、民族や宗教の壁を軽やかに超えてしまう世界を描き出している。いま、私たちが生きる世界は新しい“壁”を造り出そうとしているかのようだ。ヤスミン監督の愛と寛容のヴィジョンが多くの人々に伝わってほしい。
「タレンタイム 優しい歌」
監督ヤスミン・アフマド/出演パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショール、モハマド・シャフィー・ナスウィップ、ハワード・ホン・カーホー
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