世界三大映画祭を制覇したイランの名匠ジャファル・パナヒ監督。彼がタクシー運転手に扮し、厳しい情報統制下にあるテヘランの街に暮らす乗客たちの人生模様をユーモアを交えながら描く「人生タクシー」が2017年4月15日(土)に公開される。
イランの首都テヘランの街を駆け抜ける一台のタクシー。にこやかな笑顔でハンドルを握っているのはジャファル・パナヒ監督本人だ。ダッシュボードに設置されたカメラを通して、さまざまな乗客たちの人生模様が映し出されていく。死刑制度について熱い議論を交わす路上強盗と教師。海賊版ビデオで一儲けを企むレンタルビデオ業者。交通事故に遭った夫と泣き叫ぶ妻。大きな金魚鉢を抱えたまま乗り込んできた二人の老婆。職業も年齢もまちまちな個性豊かな乗客たちがくり広げる悲喜こもごもの人生。その姿を追う中で、知られざるイラン社会の核心が浮き彫りにされていく。
2015年ベルリン国際映画祭では、審査員長のダーレン・アロノフスキー監督から『この作品は映画へのラブレターだ』と絶賛され、金熊賞及び国際映画批評家連盟賞をダブルで受賞。パナヒ監督は政府への反体制的な活動を理由に“20年間の映画監督禁止令”を受けているが『私は映画作家だ。映画を作る以外のことは何もできない。映画こそが私の表現であり、人生の意味だ。何者も私が映画を作るのを止めることはできない』と語っている。全編に監督の決して諦めない勇気と、軽やかなユーモアがあふれた、心揺さぶる快作だ。