最初にナオミ・ハリスを知ったのは「パイレーツ・オブ・カリビアン」(2007)の呪いをかけるジャマイカの魔女のような役を演じた時。歯を黒くして、顔に水玉の斑点をつけて、かなり不気味な存在でした。

そのうち「007」シリーズでボンドが好きでたまらない秘書のイヴ・マニーペニーを演じるようになり、女王陛下のスパイのチームに黒人のレギュラーが登場して注目され、昨年は「ムーンライト」(2016)の主人公の少年の母親を激演して見事アカデミー助演賞にノミネートされました。

今年の授賞式で、例の受賞作品のカードと主演賞女優と間違って手渡されて、結果としてベスト映画に輝いた作品でもあります。

ゲイの少年がマイアミの麻薬取引地域の真っ只中で成長していくドラマは単純なストーリーの中に、体が痛むほどの繊細な感情が込められていました。

ナオミはドラッグが止められず、息子からお金を取り上げて売人に払うという、もうどうしようもない母親で、目の瞳孔が広がったまま、宙をさまようような動きの中毒者をあさましう演じてました。

1976年9月6日英国はロンドン生まれ、父親はトリニダッドとトバゴ生まれの黒人、母親は白人でテレビ番組の脚本家でした。一人っ子のナオミは早くから女優を志し、優秀な子供たちが集まる演技学校に通っていたそう。先生にも目をつけられて子供の時からいろいろな舞台を踏んでいます。成績優秀なナオミは1998年ケンブリッジ大のペンブルック・カレッジの入学して、政治学を専攻、それから英国俳優が集まるブリストル・オールド・ヴィック劇場スクールに通って演技を磨きました。

スタイル抜群でファッショナブル、とても明るくて、聡明なナオミだからこそ、「ムーンライト」の子供を構わずにドラッグに走る母親役とのコントラストが効果をあげたのではと思います。最初からドラッグをしているようなタイプの女優が演じたら、ここまで注目されなかったでしょう。

2007「パイレーツ・オブ・カリビアン:ワールズ エンド」

2013 「マンデラ:ロング・ウオーク・トウ・フリーダム」

「最初、この役をオファーされた時、また中毒の黒人と言うステレオタイプの役だから断りました。でも監督の熱心な口説きにほだされて出演を決めて、今ではラッキーだったと思ってます。予算が少ない小さな映画なりの、共同体のスピリットが燃えている現場でした」と微笑んでいました。

信じている宗教が仏教というのも、彼女の落ち着いた、静かな人となりの芯になっているのかもしれません。

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