痛烈なジョークとほんわりの外見が妙にアンバランスでそぐわないためか、フツーの女性が共鳴し、同情できるルックスと体型のせいでしょうか、何しろ目下破竹の勢い(と古い表現ですが)で前進闊歩中。
新作「スナッチド」SNATCHED(2017)は、バーゲン服店での店員職をクビにされ、ボーイフレンドに振られ、せっかくの休暇旅行の南米エクアドル行きの航空券を無駄にせじ!と母親(ゴールディー・ホーン)を説き伏せて、ウキウキとビーチに行きます。とびきりのハンサムに言い寄られ、母親が絶対に何か仕掛けがあるに違いないというにもかかわらず、デートに出かけ、次の日は母親も伴ってのドライブ。ここで恐ろしい山賊のような悪漢たちに誘拐されて、映画はアレヨアレヨと言う間に、辻つまなど全く合わない、混乱のジャングルに入り込んでしまい、ここでエイミーはミニドレス姿で大乱闘や、銃の撃ち合いや人殺しまで見せるのです。
いやはやのめちゃくちゃ活劇で、いつもなら一緒に破茶滅茶をしそうなゴールディーが今回は「心配性で、安全ばかり考える消極的な女性」を演じているのが、まあ、予想外で面白いと言えますか。
足のない虫、芋虫、毛虫、ウジムシ、などが死にそうに嫌いな私なのですが、この映画の中で、エミーが変なものを食べて、サナダ虫 (Tapeworm)が湧き、それを退治するシーンがあまりにショッキングでユニークなので、どこからそんなアイデアが来たのですか、と聞くと「小学校の時、兄が虫きちがいで、標本とかにサナダ虫があって、それが気持ち悪くて、恐ろしくて、先生から「最もこわいもの」という宿題をもらった時1番にサナダ虫と書いたのね。それで、この映画に是非出したいという私のオリジナルのアイデアなのよ!」とまあ、こういうやりたいことを励行してしまうガッツの持ち主なのです。それにしても最も怖いホラー映画よりも気持ちの悪い、忘れたくても忘れられないシーンでありました。
1981年6月1日ニューヨーク市生まれ、父御は赤ちゃん用家具メーカーのオーナーでユダヤ系、母御はユダヤ系ではなかったものの改宗したそうで、マンハッタンのアッパー・イースト・サイドのリッチな環境で育ったそう。9歳の時に父御の会社が破産し、同じ頃に父御は筋萎縮症となり、両親は離婚、エイミーはボルチモアに移って、大学では劇場を専攻、卒業したのが2003年、すぐにスタンダップ・コメディなどの仕事に忙しくなります。
もろもろの苦労も味わい、スリムな体とキュートなルックスを持たずに、自己虐待のジョークをひねり技で芸にしたエイミーの才能には感心するばかり。
大ヒットした映画「トレインレック」(2015)も今回の「スナッチド」も主演と脚本を兼ねているというエネルギーと才能の持ち主なのです。
ハリウッドがエミーのような女優たちを尊重するところに「娯楽こそ一番」の心構えを感じました。