引きこもりという社会派テーマとガーリーな世界観の融合
NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」やテレビドラマ「結婚できない男」、そして先日公開されたディーン・フジオカ主演の映画『結婚』の脚本も手掛けた人気脚本家の尾崎将也が自ら脚本を手掛けた映画『世界は今日から君のもの』が完成。
尾崎監督とはドラマ「お迎えデス。」「ブラック・プレジデント」でタッグを組み、話題作『愛の渦』をはじめ『二重生活』や『太陽』など映画やドラマ、舞台でも躍進を続ける女優・ 門脇麦が主演を務め、三浦貴大や比留川游が主人公と関わっていく周辺人物を、真実の父をマキタスポーツ、母をYOUが演じている。
今作は、人と接することが苦手で引きこもりになった主人公・小沼真実(門脇)が、新しい人との出会いや社会との触れ合いを通して、少しずつ自分らしい一歩を踏み出していく物語。引きこもりという社会派なテーマを、ガーリーな世界感で描き、どこか愛おしく、可愛い青春ドラマとなっている。
彼女をイメージして当て書きされたという役や今作について、更にオリジナル脚本の映画への思いや憧れのハリウッドスターなどを門脇麦に聞いた。
門脇麦(かどわき・むぎ)
1992年8月10日生まれ、東京都出身。2011年にテレビドラマで女優デビュー。
2013年の映画『スクールガール・コンプレックス~放送部篇~』で映画初主演し、以降はNHK大河ドラマ「八重の桜」(13)、舞台「ストリッパー物語」(13)、尾崎将也・脚本のCX系連続ドラマ「ブラック・プレジデント」(14)、NHK連続テレビ小説「まれ」(15)、単独初主演映画『二重生活』(16)、『太陽』(16)、日本テレビ系土曜ドラマ「お迎えデス。」(16)、初挑戦のミュージカル「わたしは真悟」(16〜17)など幅広く活躍中。
2014年の『愛の渦』『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』『闇金ウシジマくんPart2』の演技にて第88回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞などを受賞。2017年の出演作に『こどもつかい』、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『花筐』などがある。
母親と娘の複雑な関係性がリアルに描かれている
ーー門脇さんとは3度目のタッグとなる尾崎将也監督が監督・脚本を努めた今作ですが、オファーを頂いた時の心境をお聞かせ頂けますか?
「尾崎さんとは『ブラック・プレジデント』というドラマで初めてご一緒していて、その時も今作の真実と同じような、内気で変わった女子大生の役を演じさせて頂きました。そのドラマの打ち上げで尾崎さんが“映画を撮ろうと思っているので、その時にまたご一緒できたらいいですね”と言ってくださって。それから一年後ぐらいに今作の台本を頂いたのですが凄く嬉しかったです。台本を読んでみると真実が不思議と尾崎さんの女版のようなキャラクターで(笑)。演じるのが楽しみでワクワクしたのを覚えています」
ーー監督とは役についてどんなお話をされましたか?
「特に監督とは役についてお話ししていないんです。というのも、私は基本的にどの現場でも監督から“何かわからないことはありますか?”と聞かれると、“いえ、大丈夫です。特にありません”と答えてしまうんです(笑)。もちろん段取りや動きの確認はしますけど、いつもあまり役について聞かないというか…もっと監督に相談したほうがいいですよね(笑)」
ーー(笑)。では監督の指示通りに動くことが多いのでしょうか?
「そうですね。一度監督の指示通りに動いてみて、自分の中で生理的に気持ちの悪い動きだなと感じた場合は“こっちの動きのほうが良いと思いますがいかがでしょうか?”という提案はさせて頂くようにしています。でも基本的には監督の指示に従うことが多いです」
ーー今作では母親と娘の関係性の非常に繊細な部分が描かれています。真実の気持ちをどんな風に作っていきましたか?
「どんなに仲の良い家族でも、母と娘の関係性というのは周りからは見えない何か分かり合えない部分もあると思うんです。うちも仲良しですけど、それなりに母と娘の間には何か衝突する部分や言葉にならないモヤモヤとしたものもあると思っています。そういう意味では誰しもが共感できる作品になっているのではないでしょうか。台本を読んでいても特に母親と娘の関係性に違和感は感じませんでした」
監督が門脇麦をイメージして書いたオリジナルストーリー
ーー真実は絵が得意ですが、絵を描く練習などはされましたか?
「少女漫画に出てくるようなキラキラした目を描くシーンがあったので、それに関しては練習しました。真実は小さい頃から絵を描くことで自分の時間と世界を作ってきた女の子なので、描き慣れているように見せないといけないんじゃないかなと。とにかくキラキラした目を沢山描いて練習しました(笑)」
ーー劇中で真実は缶に宝物を集めていましたが、門脇さんは幼い頃に宝物を集めたりしていましたか?
「それが…物を集めたことが無いんです(笑)。子供の頃にサメの歯を貰ったことがあって、それをずっと大事に持っていた記憶しかないです。でもそのサメの歯すら何処かにいったか記憶がなくて(笑)。とにかく家にはあまり物を置かないようにしていて、写真も母親がアルバムに保管している家族写真以外は手元に一枚も無いんですよ(苦笑)」
ーー今作は監督のオリジナル脚本ですが、最近は原作ものの作品も増えていますよね。門脇さんはオリジナル脚本に出演する楽しさをどんなところに感じますか?
「確かに最近は原作ものの作品が増えている印象がありますよね。オリジナルの脚本を書ける方が減っているというのも理由のひとつかもしれません。三浦貴大さんと“オリジナル脚本の作品に出演できるのって幸せだよね”と現場で話したこともあります。ただ、原作ものであったとしても結局は監督のカラーになっていくと思うので、監督のほうが自由さや不自由さを感じてらっしゃるのかもしれませんね。演じる側にとっては原作ものもオリジナル脚本のものも良い作品にするためにお芝居をすることには変わりないというか。もちろん漫画原作に出演する際はキャラクターのイメージを壊さないようにと原作ファンの方を意識する部分はありますけど、そこまで両方の差を感じたことはないですし同じように楽しく演じさせて頂いています」
好きな女優はイザベル・ユペール
ーー今作は監督が『アメリ』をイメージした部分もあるそうですが、門脇さんはご覧になったことはありますか?
「かなり昔に拝見したことがあります。凄くコケティッシュな世界観というか可愛い映画ですよね」
ーー冒頭の真実の行動が『アメリ』のヒロインの冒頭の行動と似ていて一気に今作の世界観に引き込まれました。
「確かに言われてみればそうかもしれませんね。もう一度『アメリ』を観直したくなりました(笑)」
ーーちなみに憧れのハリウッドスターはいますか?
「憧れというかただのファンですが、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット、マシュー・マコノヒー、エドワート・ノートンが好きです。女優さんだとイザベル・ユペールです」
ーーイザベル・ユペールのどんなところがお好きですか?
「『ピアニスト』の演技も素晴らしかったですし、彼女の全てに憧れます。『ピアニスト』を観ているとお芝居ではなくて本当にああいう女性なんじゃないかと思えてくるというか(笑)。あそこまでのリアリティってなかなか出せないですよね。あと『ポンヌフの恋人』のジュリエット・ビノシュも好きですし、『マリアンヌ』のマリオン・コティヤールも凄く良かったです。フランス人の女優が好きなのかもしれませんね(笑)」
ーー最近は映画館に何を観に行かれましたか?
「『ラ・ラ・ランド』と『美女と野獣』を観に行きました」
ーーマイナーな作品だと?
「ロウ・イエ監督の『ブラインド・マッサージ』を観ました。凄く良かったです」
ーーハリウッド大作からアカデミー賞ノミネート作品、単館系の作品など幅広くご覧になっていますね。
「自分が観たい物だけ観てると感覚が偏ってしまいそうで。単にどんなジャンルの作品も好き、というのもありますがなるべく幅広いジャンルの作品を観るようにしています」
ーー映画を観ながら“自分だったらこう演じる”などつい考えてしまう役者さんもいるそうですが、門脇さんは映画館で純粋に映画を楽しめるタイプですか?
「単純に楽しみながら観ています。とにかく映画が好きなので、観終わったあとに“良かった”とか“面白かった”とかろくな感想が出てこないぐらい楽しんでしまうタイプです(笑)」
ーーでは最後に今作を楽しみにしている方へメッセージをお願いいたします。
「普通の女の子が主人公の今作ですが、周りから見たら小さな出来事だったとしても、この女の子にとっては自分を変えてくれるような大きな出来事が起こったりします。普段はスポットが当たらないようなところにスポットをあてた内容になっているので、ご覧になった方が自分の中に埋もれている小さな何かがトントンと積もっていく感覚を覚えて頂けたら嬉しいです。是非劇場でご覧ください」
作品情報
『世界は今日から君のもの』
公開:7月15日(土)より渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー
監督・脚本:尾崎将也
CAST:門脇麦
三浦貴大
比留川游
マキタスポーツ
YOU 他
製作:クエールフィルム
配給:アークエンタテインメント
Ⓒクエールフィルム
公式サイト:http://sekakimi.com