小高い丘の上にある一軒家。その庭の木陰に置かれたテーブルをはさんで、一組の男女がさまざまな対話を重ねていく──
「アメリカの友人」「パリ、テキサス」などで知られる名匠ヴィム・ヴェンダースが初めて挑んだフランス語映画。原作は「ベルリン・天使の詩」はじめ四作でコラボレートしている作家ペーター・ハントケの戯曲。
出演は「不機嫌なママにメルシィ!」のレダ・カテブ、「愛のめぐりあい」のソフィー・セミン、イェンス・ハルツほか。人気ミュージシャンのニック・ケーヴがゲスト出演している。
木々の間を吹き抜ける爽やかな風に、木漏れ日が揺れるある夏の午後。かつてサラ・ベルナールが住んでいた小高い丘の上の一軒家。ここからは、遠くパリの街並みを望むことができる。
庭の木陰に置かれたテーブルをはさんで腰かけている一組の男(カテブ)と女(ソフィー)。
その微妙な距離感から、かつては愛し合った仲だと伺い知れる。二人は最初はためらいがちに、
やがて感情を高ぶらせながら対話を重ねていく。子供時代の思い出、初体験のこと、男女の違いについて、そして夏について。
二人がいる庭に向かって大きく開け放たれた扉の奥の書斎では、一人の作家(ハルツ)がタイプライターで懸命に文章を紡ぎ出している。やがてふと手を止めた作家は廊下にあるジュークボックスに手を伸ばし、懐かしい曲が部屋に満ちるのだった。