2011年公開の『ファンタスティックMr.FOX』でストップモーション・アニメの新次元を切り開き、日本でも大ヒットを記録した『グランド・ブダペスト・ホテル』でアカデミー賞®9部門にノミネートされたウェス・アンダーソン監督。ウェス監督が日本の文化や映画、日本の人々に対する敬愛を込めて作ったという映画『犬ヶ島』は、近未来の日本を舞台に犬達と少年の心躍る冒険物語となっている。『ライフ・アクアティック』が公開された2005年以来のプロモーション来日を果たしたウェス監督が、SCREEN ONLINEのインタビューに応じてくれた。

【ストーリー】
近未来の日本。犬インフルエンザが大流行するメガ崎市では、人間への感染を恐れた小林市長(声/野村訓市)が、すべての犬を“犬ヶ島”に追放する。ある時、12歳の少年アタリ(声/コーユー・ランキン)がたった一人で小型飛行機に乗り込み、その島に降り立った。愛犬で親友のスポッツ(声/リーヴ・シュレイバー)を救うためにやって来た、市長の養子で孤児のアタリだ。島で出会った勇敢で心優しい5匹の犬たちを新たな相棒とし、スポッツの探索を始めたアタリは、メガ崎の未来を左右する大人たちの陰謀へと近づいていく──。

画像1: 日本映画への愛とリスペクトが詰まった
『犬ヶ島』
ウェス・アンダーソン監督来日インタビュー

新しい映画を作ったら
それもまた長い映画の歴史の上に積み重なるべきなんです

ーー犬をメインにしたストップモーション・アニメを撮ろうと思ったきっかけなどはあったのでしょうか?
「イギリスで映画『ファンタスティック Mr.FOX』を撮っていたときにスタジオに行く途中で「I love dogs.」という看板を見つけて、ロンドンには“Isle of Dogs(ドッグ島)”という島もあるし「アイ・ラブ・ドッグ…Isle of Dogs…犬の島か~面白いなぁ」なんて連想したりしていたらふと今作の物語を思いついたんです。僕自身は今は犬も猫も飼っていないんですけどね(笑)」

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ーー日本人のボイスキャストに関してはiPhoneで声のレコーディングを行ったことも話題になっていますが、他のキャストも同じような手法でレコーディングを行ったのでしょうか?
「iPhoneでのレコーディングについてよく聞かれるのですが、実際にはそんなに多く使用しているわけではないんです(笑)。短い台詞や録り直さなければいけないものをiPhone で録音してもらって、それをメールで送ってもらうようにお願いしただけというか。最近のiPhoneは性能がいいので上手く活用させてもらったといった感じです。ただ、アタリを助けるヒーロー犬を演じたブライアン・クランストン(チーフ役)、エドワード・ノートン(レックス役)、ボブ・バラバン(キング役)、ビル・マーレイ(ボス役)の4人だけは一緒にレコーディングしているんですよ。他のボイスキャストの方はみなさんお一人でやって頂きましたけど」

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ーー今作は日本で巨匠と言われる小津安二郎監督や黒澤明監督の作品や浮世絵などからインスピレーションを受けて、それを反映させているそうですが、日本の若い人達は残念ながらそういった巨匠達が撮った名作を観たことが無い人も多いのが現状です。若い人達が今作をきっかけに“昔の名作を観てみよう”と思ったらいいなという期待も込めているのではありませんか?
「まさに、若い人達が『犬ヶ島』を観て“へぇ、黒澤明っていう日本人の監督の作品に影響されて作ったのか。黒澤作品はどういう映画なんだろう?”と昔の名作を観てくださったらそれは僕にとって最高の結果だと言えます。僕が映画監督を目指すようになった頃は、昔の映画に凄く詳しい映画オタクと呼ばれるような人が沢山いたんですけど、最近はそういう人が少なくなったような気がして寂しいんですよね。映画というのは長い歴史を持つひとつのアートでもあるし人々にとってとても重要なものだと思うので、新しい映画を作ったらそれもまた長い映画の歴史の上に積み重なるべきなんです。大きな土台として映画の歴史があって、そこから新しいものが生まれることを僕は願っています」

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ーー今作のコンサルタントを務めていて小林市長役を演じている野村訓市さんがウェス監督には日本で実写映画を撮ってほしいとインタビューでおっしゃったそうです。もしそれが実現するならば、日本のどこらへんを舞台に撮りたいですか?
「そもそも“日本で撮影したい”という気持ちからこの映画を作ろうと思ったわけですが、結果的にストップモーション・アニメだったためロンドンのスタジオで日本のセットを全て作ることになってしまって…(苦笑)。外国でロケ撮影をする時は新しい出会いがあったり驚きに満ちているので、日本でもし映画を撮るとしたら都市や田舎など様々な場所をロケハンで回って色んなことを発見したいです。その発見によってストーリー全体が変わってくることもあるんですよ。例えば『グランド・ブダペスト・ホテル』だったら舞台となっているのは“ズブロフカ共和国”という架空の国ですが、実際はドイツのゲルリッツで撮影しているんです。ドイツは共産主義の影響で建物が変わってしまったこともあって、共産主義の時代の流れを汲む建物は明らかに他の建物とは違うわけです。それで作品の設定自体を共産主義の時代にしたのですが、それは実際に僕が建造物の違いに感銘を受けたからなんです。いつか日本でロケハンをしたらきっとそのような面白いことを発見してストーリーに盛り込むんじゃないかなと思います」

ーーちなみに次回作は決まっているのでしょうか?
「フランスが舞台の物語を撮る予定ですが、やはり空想の都市を舞台にしているので、まだどこで撮影するかは決まっていないんです。楽しみに待っていてください」

画像4: 新しい映画を作ったら それもまた長い映画の歴史の上に積み重なるべきなんです
画像5: 新しい映画を作ったら それもまた長い映画の歴史の上に積み重なるべきなんです

(取材・文:奥村百恵)

『犬ヶ島』
監督:ウェス・アンダーソン
キャスト:ブライアン・クランストン、コーユー・ランキン
     エドワード・ノートン、ビル・マーレイ
     ジェフ・ゴールドブラム、野村訓市
     グレタ・ガーウィグ、フランシス・マクドーマンド
     スカーレット・ヨハンソン、ヨーコ・オノ
     ティルダ・スウィントン、野田洋次郎(RADWIMPS)
     村上虹郎、渡辺謙、夏木マリ
配給:20世紀FOX映画
全国公開中!
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

画像: 『犬ヶ島』日本オリジナル予告編 youtu.be

『犬ヶ島』日本オリジナル予告編

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