朝日舞台芸術賞グランプリや読売演劇大賞および最優秀作品賞など数々の演劇賞を受賞した鄭義信作・演出による舞台「焼肉ドラゴン」が映画化。鄭は演劇界で一流の演出家であり、映画界では『月はどっちに出ている』、『血と骨』などで脚本家としても活躍。「小さな焼肉屋の、大きな歴史を描きたい」と語る監督の言葉通り、70年代の時代の記憶や人々のぬくもりが鮮明に蘇り、明日を生きるエネルギーで溢れた人生讃歌の物語に仕上がっている。今作で長女の静花役を演じた真木よう子、次女の梨花役を演じた井上真央、三女の美花役を演じた桜庭ななみに三姉妹を演じた感想や鄭監督の演出で印象に残ったこどなどについて語ってもらった。

【ストーリー】
万国博覧会が催された1970(昭和45)年。高度経済成長に浮かれる時代の片隅。
関西の地方都市の一角で、ちいさな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む亭主・龍吉(キム・サンホ)と妻・英順(イ・ジョンウン)は、静花(真木)、梨花(井上)、美花(桜庭)の三姉妹と一人息子・時生の6人暮らし。
失くした故郷、戦争で奪われた左腕。つらい過去は決して消えないけれど、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる”それが龍吉のいつもの口癖だった。
そして店の中は静花の幼馴染・哲男(大泉洋)など騒がしい常連客たちでいつも賑わい、ささいなことで泣いたり笑ったり―。
そんな何が起きても強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、次第に時代の波が押し寄せてくるのだった―。

画像: 強く逞しく生きる家族を描いた
『焼肉ドラゴン』
真木よう子×井上真央×桜庭ななみ対談インタビュー

三姉妹を演じた美女三人が語る撮影秘話

ーー今作の前に舞台版をご覧になったそうですが、どんな印象を受けましたか?
真木「お話を頂いてから舞台を映像化したものを拝見したのですが、まず脚本がとても素晴らしいと感じました。焼肉屋というワンシチュエーションで繰り広げられる物語は舞台ならではの見せ方で楽しめましたし、役者さんも皆さん素晴らしいお芝居をされていて感動しました。ただ、こんなに素敵な舞台の映画化で長女役として参加させて頂くことに手放しで“よっしゃー!!”とは素直に喜べなかったというか(笑)。でもどんな映画になるだろうとワクワクする気持ちもあって、撮影が楽しみでもありました」
井上「『焼肉ドラゴン』は私の周りにもファンが多く、以前から素晴らしい舞台だという評判を聞いていました。映画化は舞台版とは違った難しさがあるのかなと思ったんですけど、鄭義信さんが脚本も演出もされると聞いて全てを託せば面白い作品になることは間違いないと思い、撮影がとても楽しみでした」
桜庭「同じく映像で拝見したのですが、登場人物がそれぞれ誰かに何かしらの影響を与えるキャラクターだったので、映画版でしっかりと美花を演じられるのか、役に説得力を与えられるのかとドキドキしながら現場に入ったのを覚えています」

ーー鄭監督は主に演劇の演出をなさっていますが、映画の現場での演出はいかがでしたか?
真木「舞台のように一人一人に稽古をつけるという感じではなく、映画の現場としての演出のつけ方をしてくださいました」
井上「厳しく細かい演出をなさるかなと思っていたのですが、監督は現場でいつもワクワクと少年のように楽しそうにされていました(笑)。現場に行くと、台本には書かれていない台詞やト書きが増えている事も多かったです。 “ちょっとこれやってみてくれる?”なんて嬉しそうな顔をするんですよね」
真木「そうなんですよ(笑)。本当に楽しんで撮ってらっしゃるということがもの凄く伝わってくるんです。とあるシーンの撮影の時に、カットがかかったあと少し遠くでモニターを見ていた監督が“いまの良い画撮れたね!!”と大きな声で叫んでらっしゃって(笑)」
桜庭「それに真木さんと大泉さんの泣きのお芝居のシーンでは監督が一番泣いてましたよね(笑)」
井上「クランクインの初日に監督から“罵声を浴びせて欲しい”と言われ、ただでさえ関西弁の台詞で余裕がないなか、いきなりのことだったので、とてもあせってしまったのを覚えています」

画像1: 三姉妹を演じた美女三人が語る撮影秘話

ーーお話を聞いていると凄く楽しそうな現場だったんだなということが伝わってきますが、皆さん三姉妹を演じてみていかがでしたか?
真木「今作のキャストの皆さんは井上さん、桜庭さんに限らず出演作品を拝見していたので安心して現場に入ることができました。ただ、姉妹を演じるうえで、ご覧になるとわかるのですが私達の役はちょっと複雑な関係性なんです。そういった姉妹間の微妙な距離の縮め方はかなり意識して演じるようにしていました」
井上「真木さんは普段からお姉さんらしさを感じさせてくださいましたし、ななみちゃんは“美花の履いてるスカートが短くて寒そうだな…大丈夫かな?”なんて心配してしまうほど可愛くて妹のように思って接していました。関西弁もみんなで励まし合いながら練習していましたよね」
桜庭「本当に関西弁は大変でしたよね(笑)。でも真木さん、井上さんというしっかりしたお姉さん二人が寄り添ってくださったので、とても安心して現場にいることができました」

ーーちなみに皆さんが演じられた三姉妹の中でご自身は誰に一番近いと思いますか?
真木「3人それぞれが持っている要素の何かしらは私の中にもあると思いますけど…やっぱり次女の梨花が一番私に近いのかなと(笑)」
井上「言いたいことをハッキリ言う梨花ですね(笑)」
真木「そう(笑)。きっと周りからもそう見えてるんだろうなと思いますし、よくよく考えてみてもやっぱりそうだなと思って(笑)」
井上「私は静花と梨花の間ぐらいですかね。静花のようにしっかりしなきゃという思いもありつつ、たまに言いたいことをハッキリ言ってしまうところもあります。ただ、梨花ほど激しくはないです。今まで受け身の役が多かったので梨花という役はとても新鮮で、演じていて楽しかったです」
桜庭「わたしは自由奔放の三女・美花に一番近いと思います。実際に姉と弟がいるんですけど、私が一番自由にやりたいことをやっていて(笑)。きっと知らないうちに姉や弟に迷惑をかけてしまったことがあるんだろうなと、今作を観て改めて思いました」

画像2: 三姉妹を演じた美女三人が語る撮影秘話

ーー今作を拝見して家族っていいなと改めて思ったのですが、皆さんの思う“理想の家族”を教えて頂けますか。
真木「お父さんがいてお母さんがいて、子供がいてという絵に描いたような家族ではなくても、どんな環境でもどんな形でも家族みんなが幸せと思える生活ができたらいいなと。それが一番理想です。ただ、家族みんなを幸せにするためにはまず自分が幸せにならないといけないのではないかと、そんな風に思います」
井上「私は今作の家族のようにぶつかり合える家族っていいなと思いました。相手に対して信頼や思いやりがないとここまでぶつかり合えないんじゃないかなと。言いたいことを言える家族は理想ですね」
桜庭「今作で美花は奥さんがいる人を好きになってしまい、母親がものが凄く二人の交際を反対するんです。でも、反対しつつも娘に対しての愛情だったり親子の絆を感じさせてくれるので、そういう家族は素敵だなと思います」

画像3: 三姉妹を演じた美女三人が語る撮影秘話
画像4: 三姉妹を演じた美女三人が語る撮影秘話

ーーでは最後に、家族を描いた作品でオススメの映画を教えて頂けますか?
真木「『嘆きのピエタ』は個人的に凄く好きな映画なんですけど、オススメするとしたら是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』です。自分が出演した作品で恐縮ですが、ご覧になったらきっと台風の夜のシーンとか凄く印象に残ると思うので是非観て頂きたいです」
桜庭「私は同じく真木さんが出演している是枝監督作品の『そして父になる』が凄く好きなのでオススメです。自分が育てた子が他人の子供だと知って、更に自分の本当の子供は他人に育てられたという事実と向き合ったときの葛藤や辛さが胸に突き刺さりました。家族について考えさせられた映画です」
井上「私は子供の頃に観た『男はつらいよ』の寅さんと家族たちが今でも大好きです。そして今作の公開後は“オススメの家族映画はなんですか?”と聞かれたら“『焼肉ドラゴン』です”と答えてくださる方が増えたらいいなと思います(笑)」

画像5: 三姉妹を演じた美女三人が語る撮影秘話

(インタビュー・文/奥村百恵)

『焼肉ドラゴン』
監督・原作・脚本:鄭義信
キャスト:真木よう子、井上真央、桜庭ななみ
     大泉洋、大谷亮平
     ハン・ドンギュ、イム・ヒチョル、
     大江晋平、宇野祥平、根岸季衣、
     イ・ジョンウン、キム・サンホ他
配給:KADOKAWA ファントム・フィルム
6月22日(金)より、全国ロードショー
Ⓒ 2018「焼肉ドラゴン」製作委員会

画像: 『焼肉ドラゴン』予告編 6/22(金)全国公開 youtu.be

『焼肉ドラゴン』予告編 6/22(金)全国公開

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