名匠ベルイマンとは?
デヴィッド・フィンチャーや、クリストファー・ノーラン、デヴィッド・リンチ、ウッディ・アレンをはじめとする現代の巨匠たちがこぞって尊敬する映画作家が、スウェーデンの名匠イングマル・ベルイマン。アカデミー賞外国語映画賞を三度受賞し、世界中の映画祭で様々な賞を受けてきた彼は、日本でも多くのファンに愛された存在。
今年生誕100年を迎えるベルイマンは、1918年7月14日、スウェーデンのウプサラで誕生。父はプロテスタントの聖職者だったという事実は、後の彼の作品に顕著になる『神の沈黙』『生と死』といった深遠なテーマに大きな影響を与えたと見られている。
大学在学中は演劇を学び、1944年『もだえ』の脚本を書いて映画界入り。1946年『危機』で初監督。1950年代に入って独自のスタイルを確立し、数々の名作を生み出した。1957年「第七の封印」でカンヌ映画祭審査員特別賞、1958年「野いちご」でベルリン映画祭金熊賞、1959年「魔術師」でベネチア映画祭審査員特別賞、1960年「処女の泉」でアカデミー賞外国語映画賞と、あっという間に世界の巨匠の名をほしいままに。
1982年超大作「ファニーとアレクサンデル」を完成して、映画監督から遠ざかり、「愛の風景」などの脚本と並行しながら、王立劇場で舞台演劇に専念。2003年突然「サラバンド」で監督復帰し、これが遺作に。2007年バルト海のフォール島の自宅で89歳で死去した。
『ベルイマン生誕100年映画祭』開催!
デジタル・リマスターで甦る13本の名作群
映画史に燦然と名を刻むベルイマンの生誕100年を祝したレトロスペクティブは世界中で行なわれているが、日本でも全キャリアにおける厳選の傑作13作をデジタル・リマスター版でスクリーンに甦らせる特集上映がこの夏開催。そのいずれもが至宝の輝きを放つ必見の名作ばかりだ。(ザジフィルムズ=マジックアワー配給)
2018年7月21日より、東京・YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開予定。それでは、13作品をご紹介。
01:「夏の遊び」(Sommarlek)
ベルイマンが学生時代に書いた小説『マリー』を自身で脚色。新聞記者ダビッドと結婚するかバレリーナの道を進むべきか迷うマリーの元に古い日記が届く。それを読んだマリーは思い出の地を訪ねるが……
出演:マイ・ブリット・ニルソン
1951年度作品。1時間30分。スウェーデン映画。
©1951 AB Svensk Filmindustri
02:「夏の夜は三たび微笑む」(Sommarnattens leende)
弁護士フレデリックは後妻アンがいたが、かつての恋人である舞台女優に未練が残る。また彼の先妻との息子ヘンリクはアンに思いを寄せていた。軽妙なタッチのコスチューム劇で、カンヌ映画祭で詩的ユーモア賞受賞。
出演:グンナール・ビョルンストランド
1955年度作品。1時間44分。スウェーデン映画。
©1955 AB Svensk Filmindustri
03:「第七の封印」(Det Sjunde inseglet)
中世ヨーロッパ。長年に渡る十字軍遠征から帰還した騎士アントニウスは、背後に迫ってきた死神から、死を宣告されるが、自らの命を賭けてチェスの勝負を挑む。生と死、神の存在を問いかけるベルイマンの傑作の一つ。
出演:マックス・フォン・シドー
1957年度作品。1時間37分。スウェーデン映画。
©1957 AB SVENSK FILMINDUSTRI
04:「野いちご」(Smultronstället)
名誉博士号を授与されることになった老教授が、式場まで車で旅をすることになる。そんな彼の道中を回想や夢を織り交ぜながら追う名作中の名作。若さと老い、家族や孤独といった普遍のテーマを鮮烈な黒白映像で描く。
出演:ヴィクトル・シューストレム
1957年度作品。1時間31分。スウェーデン映画。
©1957 AB Svensk Filmindustri
05:「魔術師」(Ansiktet)
魔術師のフォーグラーが率いる旅芸人の一座がたどり着いた町で、領事のエガーマンは、彼らを屋敷に招き入れ、トリックを見破ってやろうと役人たちの前で芸を披露させるが……ベネチア映画祭で審査員特別賞を受賞。
出演:マックス・フォン・シドー
1958年度作品。1時間39分。スウェーデン映画。
©1958 AB SVENSK FILMINDUSTRI
06:「処女の泉」(Jungfrukällan)
16世紀の田舎町。敬虔なキリスト教徒である豪農テーレの美しい娘カリンは、教会へ行く途中出会った3人の羊飼いに強姦された上、殺害される。愛する娘の死を知った父は3人に復讐を誓う。ベルイマンの代表的傑作。
出演:マックス・フォン・シドー
1960年度作品。1時間29分。スウェーデン映画。
©1960 AB Svensk Filmindustri
07:「鏡の中にある如く」(Såsomien i en Spegel)
本作とこれに続く「冬の光」「沈黙」は“神の沈黙3部作”と呼ばれる。人里離れた孤島の別荘にやってきた4人の一家。作家ダビッドは精神が不安定な娘の病状を日記に記録するが……現代人の病んだ心を冷徹に見つめる。
出演:グンナール・ビョルンストランド
1961年度作品。1時間29分。スウェーデン映画。
©1961 AB SVENSK FILMINDUSTRI
08:「冬の光」(Nattvardsgästerna)
失意の底にある牧師が、信者の女性から深い悩みを持った夫を救ってほしいと頼まれるが、結局その夫は自殺してしまう。牧師はただ祈ることしかできない。何故神は沈黙したままなのか?“神の不在”を問う入魂の一作。
出演:グンナール・ビョルンストランド
1963年度作品。1時間22分。スウェーデン映画。
©1963 AB Svensk Filmindustri
09:「沈黙」(Tystenaden)
翻訳家のエステルは嫌いあっている奔放な妹アナやその息子ヨハンと旅先で、見知らぬ街に途中下車することになる。言葉も通じない世界で二人の姉妹の距離は次第に遠のいていく。“神の沈黙3部作”最終章に当たる。
出演:イングリッド・チューリン
1963年度作品。1時間36分。スウェーデン映画。
©1963 AB SVENSK FILMINDUSTRI
10:「仮面/ペルソナ」(Persona)
失語症の舞台女優と彼女の看護婦が、海辺の別荘で二人だけの療養生活を送っている。やがて互いの自意識の“仮面”がはがれ落ちていき、その関係にも変化が……己とは何かを問うベルイマン流心理ドラマ。
出演:リヴ・ウルマン
1966年度作品。1時間22分。スウェーデン映画。
©1966AB Svensk Filmindustri
11:「叫びとささやき」(Viskninger och Rop)
19世紀末。大きな屋敷で召使のアンナと暮らす病床のアグネスの元に姉カーリンと妹マリアが訪ねてくる。4人の女性の愛や孤独、生や性の断片を、ベルイマン芸術と呼びたい鮮烈な色彩で描き出す人間ドラマの名作。
出演:イングリッド・チューリン
1973年度作品。1時間31分。スウェーデン映画。
©1973 AB SVENSK FILMINDUSTRI
12:「秋のソナタ」(Höstsonaten)
世界的ピアニストである母と、久々に再会したその娘の積年の確執を、名女優I・バーグマン(これが遺作に)とベルイマンの私的パートナーでもあったミューズ、リヴ・ウルマンの火花散る共演で描き出す愛憎劇。
出演:イングリッド・バーグマン
1978年度作品。1時間32分。西ドイツ映画。
©1978 AB Svensk Filmindustri
13:「ファニーとアレクサンデル」(Fanny och Alexander)
1907年、(ベルイマン自身の故郷)ウプサラを舞台に、劇場を経営するエクダール家の2年間を、二人の幼い孫ファニー(ペルニラ)とアレクサンデル(ギューヴェ)の視点を通して、父母、祖母、主教、母の元愛人など多彩な人間関係を描く。劇場主オスカルが他界した後で経営が不振となり、一家に受難の時がやってくる。ベルイマンの集大成的な作品で、男女の愛憎、宗教批判、自伝的な要素など様々なテーマが織り込まれている。アカデミー賞外国語映画賞、撮影賞などを受賞。
出演:ペルニラ・アルヴィン、バッティル・ギューヴェ、アラン・エドヴァル、エルランド・ヨセフソン
1982年度作品。5時間11分。スウェーデン=仏=西独映画。©1982ABSvenskFilmindustri,SvenskaFilminstitutet.AllRightsReserved.