LA在住の映画ジャーナリストとして活躍中の筆者が、“SCREEN”のインタビューなどで毎月たくさんのスターに会っている時に、彼らの思わぬ素顔を垣間見ることがあります。誰もが知りたい人気者たちの意外な面を毎月一人ずつお教えする興味シンシンのコーナーです。今回は「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」で話題、エマ・ストーンが登場。

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて37年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

オスカー授賞式の時、憧れのディカプリオと初対面して舞い上がってしまったわ!

バトル・オブ・ザ・セクシーズ」のインタビューに、シックで大人っぽい黒地のジャケットに細めのパンツというアンサンブルを着て現れたエマ・ストーン。「ラ・ラ・ランド」の熱演で栄誉あるオスカーを受賞して、ますます自信がみなぎって来ているようだ。

画像: 筆者とエマ

筆者とエマ

『ビリー・ジーン・キングという実在でまだ元気に活躍している偉大なるテニスのチャンピオンを演じることに最初はかなり躊躇したけれど、まだ若い私は出来る限り異なった役をこなして自分の地平線を広げないと、という決意で役を受けたの。あのオスカー授賞式の翌日、もう飛行機に乗ってビリー・ジーンの役を演じるためにロケ現場に向かったから、受賞の感激に浸っている余裕なんて全く無かった。かえってそれが私にとっては良い区切りになったと思うわ。

オスカーの夜はもう何も覚えていない程興奮のしっぱなし。だって小さい頃から一番憧れていたレオナルド・ディカプリオに主演賞を手渡されたのだもの。私の部屋には「タイタニック」のポスターが貼ってあって、レオが演じたジャックの写真がそこら中にあって思春期はレオ様ひとすじだったのよ。

もちろん今まで会ったことも無いから、舞台の上で賞を渡されたときは女の子にとってこれは天国の気分よね。「コングラチュレーション!(おめでとう)」と言われて、後はもう真っ白だった。楽屋で「ずっとずっとファンだったのですよ!」なんて小娘みたいなことを喋って思い出しても顔が赤くなっちゃう』

とエマはいつもは真っ白な顔の頬っぺたをピンク色にするのであった。

自分でも勝負には強い方だと思うけど、負けてもいつまでもイジイジしない

画像1: 自分でも勝負には強い方だと思うけど、負けてもいつまでもイジイジしない

『ビリー・ジーンとは長い事かけて真剣な会話を交わした。60年代から70年代にかけて女性の権利はまだまだ低くてクレジットカードを受けるには男性の保証が必要だった時代に男女差別をなくすばかりでなく、男女の給料を平等にする要求から、同性愛者への差別の廃止、などなど当時の社会の価値観を変える運動を始めたのだから。

今でさえゲイやレズビアンの権利を話すと嫌がらせやら中傷されるというのに、あの頃の人々の考えはおそろしく偏っていて、ビリー・ジーンが自分が同性愛者だとカミングアウトした翌日に全てのスポンサーが降りてしまったり、それはそれは巨大な壁を乗り越えて来たわけ。

ビリー・ジーンはラリー(キング)という男性と結婚していたのだけれどその時は本気で彼を愛していたのですって。結婚して3年目にマリリンという女性と親しくなって初めてレズビアンの恋愛をしたものの、ラリーはずっとビリーを支えてくれて、やっぱり偉大な人間には尊敬されて、助けてくれる人々がついていてくれるのだなと思ったし、ビリー・ジーン自身も同性愛恐怖症の両親を持っていたからラリーの支持をすごく大事にしていたみたい。

画像2: 自分でも勝負には強い方だと思うけど、負けてもいつまでもイジイジしない

1973年の〝バトル・オブ・ザ・セクシーズ〞については私が産まれる(88年)前の事だし全く知らなかったけど、共演したスティーヴ(カレル)がこう言っていた。〝スーパーボウル〞とか〝人間が月に到着〞したぐらいの巨大なインパクトを持ったイベントだった、って。ビリー・ジーンほどの勇気と根性を持った女性はまずいなかったと思うわね。

そう、彼女と一緒にテニスをしたのよ! もちろん本気でなく優しいボールを打ってくれたのだけれど、今でも凄く敏捷で、バランス良く筋肉がついた体を持っていて日頃の鍛錬がよく分かる。その意志の強さに、私も74歳(ビリー・ジーンは1943年生まれ)になっても現役で頑張らなくてはと励まされたものだった』

とビリー・ジーン賛歌が延々と続いたのである。

『私は勝負に強いと思うけれど、でも負けた後はいつまでもイジイジしていない。お茶の間のゲーム類ではしっかりポイントを数えるし、学校のスペリング・コンテストでは凄く頑張ったわね。成長して来るとある意味でかえって負けた方が気持ちが良いときもあるし』

目下ノルウェーの人気テレビシリーズ「マニアック」のアメリカでのリメークの制作を手がけるなど、エマの新分野への挑戦が続いている。

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