没後10 年を記念し全監督作 9 本の中から代表作 6 本を一挙に上映
53 年に最初の長編小説『消しゴム』でデビュー以来、近代以降常識とされていた既存の枠組みを解体する小説を次々と発表したアラン・ロブ=グリエ。当時世界文学を席巻していたサルトル、カミュらに代表される<実存主義>に引導を渡した<ヌーヴォー・ロマン(新しい文学)>の代表的作家として、その作品群は後世にも絶大なる影響を与え続けている。
1960 年、アラン・レネ監督『去年マリエンバードで』 (第 22 回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞)のオリジナル脚本の執筆を契機に映画製作にも乗り出し、63 年『不滅の女』で映画監督デビュー。倒錯的なエロティシズムを描き出す諸作で、作品を発表するたび、大きな注目を集め、世界文学・映画の最前線に立つカルチャー・ヒーローとして、圧倒的な人気を誇った。
1986 年にはヴェネツィア国際映画祭で審査委員長を務め、さらに 2004 年にはわずか 40 名しか定員のないアカデミー・フランセーズの会員に選出されるなど、ヨーロッパでの圧倒的な知名度にも拘わらず、その過激でスキャンダラスな描写のせいか、それ以外の地域ではほとんど上映の機会に恵まれなかった。
今回の特集上映「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティヴ」では、ロブ=グリエ没後10 年を記念し、全監督作 9 本の中から代表作 6 本を一挙に上映する。
上映作品のラインナップは、ルイ・デュリック賞を受賞した監督デビュー作『不滅の女』 (63)、 ジャン=ルイ・トランティニヤン演じる麻薬の運び屋のドタバタ劇をメタフィクションとして描き、“最も成功した、理解しやすい実験映画”と評された『ヨーロッパ横断特急』 (66)、ベルトルッチ『暗殺のオペラ』(70)と同じくホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編集『伝奇集』の“英雄と裏切り者のテーマ”を下敷きに、オーソン・ウェルズの『審判』をパロディにした『嘘をつく男』 (67) 、カラー作品となり、めくるめくエロティックな幻想を色彩豊かな映像で表現した『エデン、その後』 (70)、 アニセ・アルヴィナ演じるひとりの女性の受難劇をサディスティックに描き、その反倫理的な描写によってヨーロッパ各国で上映禁止となった『快楽の漸進的横滑り』 (74) 、ルネ・マグリットの同名の絵画をモチーフにした、官能的で幻想的なクライムサスペンス『囚われの美女』 (83)。
この中で、『囚われの美女』以外の5作品は、未公開・未ソフト化となり、待望の本邦初の正式公開となる。
デヴィッド・リンチら後世の映画作家にも大きな影響を与えたアラン・ロブ=グリエ。そのアバンギャルドな作品は今なお鮮烈な衝撃をもって迎えられるはずだ。
アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティヴ
11 月下旬より、シアター・イメージフォーラム他 全国順次ロードショー
配給: ザジフィルムズ