実写映画『ルパン三世』や『あずみ』などを大ヒットに導き、現在はハリウッドを拠点に活躍する北村龍平監督が、『この世界の片隅に』のプロデューサー真木太郎とタッグを組んだ新作『ダウンレンジ』。約3年ぶりに新作が日本公開となった北村監督にキャスティングについてや今作の撮影秘話などを聞いた。

【ストーリー】
6人の大学生が相乗りし、広大な山道を車で横断していると突然タイヤがパンクしてしまう。男がタイヤ交換をしている最中にパンクはアクシデントではなく銃撃を受けていたことに気づくが、既に彼らは「何か」の標的になっていた……。
“ダウンレンジ”とは銃弾の射程圏内を指す用語で、兵士たちの間では「戦闘地帯」を表すといわれている。

画像1: 極限のソリッドシチュエーションスリラー
『ダウンレンジ』
北村龍平監督インタビュー

ワンカットワンカット誰も見たことがないものに挑戦したい

ーー監督はこれまで『あずみ』で上戸彩さん、『NO ONE LIVES ノー・ワン・リヴズ』でルーク・エヴァンスさん、『ミッドナイト・ミート・トレイン』でブラッドリー・クーパーさんなど今では大スターでも撮影当時はほぼ無名の役者を主演に抜擢されていますよね。今作のヒロインを演じたケリー・コーネアさんはどのようなところに魅力を感じてキャスティングされたのでしょうか?
「彼女の役は1万2千人ぐらいの応募があって、そこから書類選考やビデオオーディションなどで何百人に絞って、最終的に彼女がいいなと思って会って話したら“まだ学生なんです”と。女優の卵じゃなく学生だからって別に関係ないし、僕がいいなと思ったので彼女に決めました。もちろん経歴やテクニックなど色んな武器を持った役者はアメリカには沢山いますし、演技のスキルや経験値はケリーよりも上の人は山ほどいますけど、この役を演じるなら彼女がいいと直感で思ったんです。例えば普通に生活していて、演技が上手な人の台詞回しみたいに誰もしゃべらないですよね? 誰もがそんな流暢にカッコいい声と表情でしゃべったりしてないよと(笑)。時には演技のテクニックよりも、その人が持つ存在感が良かったりする場合もある。いつも自分の直感を大事にキャスティングしています」

画像1: ワンカットワンカット誰も見たことがないものに挑戦したい
画像2: ワンカットワンカット誰も見たことがないものに挑戦したい

ーー上戸彩さんやルーク・エヴァンスさん、ブラッドリー・クーパーさんも直感で決められたのですか?
「直感です。とはいえ実際に直感で物事を決めるというのは凄く大変なんです。本来ならキャスティングする際に経歴や評判なんかの裏付けが欲しくなると思うんですけど、僕はそうじゃなくて見たときの直感でほぼほぼ全員決めてきました。上戸さんも当時は全く無名で、たまたま駅のホームで高校野球のポスターかなんかを見てすぐに“この子だ”とピンときたんです。上っ面だけ可愛かったりカッコいい人はこの業界に山ほどいますけど、そうじゃなくてどういう生き方をしてきたかというのが顔に滲み出てないと、いくら人気のある役者でも僕にはピンとこないんです。顔や佇まいにその人の生きてきたものが出てくるものだと思うので。同じく『あずみ』に出演してもらったオダギリジョーさんも当時はアーティスティックな映画に出られていてエンタメアクション作品には興味が無いのかなと思っていたんですけど、複雑なことを色々と考えていそうな感じが端整な顔から滲み出ていたので、一緒に朝食を食べて『あずみ』について話しませんかとお誘いして。その時にボソっと話す彼の姿もまた面白いなと思って美女丸役に起用しました。

ルーク・エヴァンスはたまたま小さなドラマで農夫役を演じていて、タンクトップ姿で土を耕してるのを見た瞬間に“ちょっと彼と話したい”と(笑)。ルークが『インモータルズ -神々の戦い-』を撮ってる時期にSkypeで5分ぐらい話してすぐに決めました。ブラッドリー・クーパーはちょうど『ミッドナイト・ミート・トレイン』の脚本を手直ししている時に、ガラス張りの僕のオフィスの部屋の前を彼がフラッと通った瞬間に目が合ったんですよ。それでいいなと思って声をかけて、書きかけの脚本を渡してすぐに決まりました。そこから彼はたった5年で『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー賞ノミネート俳優になりましたが、僕にとっては特に驚くことではなく、彼は無名の時からすでにその輝きを持っていました」

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ーー『あずみ』では前代未聞の360度縦回転の撮影手法が話題になりましたが、今作だと一人目が撃たれたあとの場面が今まで観たことのないような強烈なカットで印象に残りました。あのシーンは監督のアイデアだったのですか?
「こういう映画だと一人目に撃たれた人間が発見されるところは非常に大切なんです。パンクした車から離れたところにいた女の子が何かに気付いて、カメラが下がっていくと一人目のあいつが撃たれているというあのカットですよね。撃たれた頭の中をカメラが通過するという映像は僕も見たことが無かったからやってみようと思って撮ったんです。安易にCGでやろうと思えばいくらでもできてしまうけど、それではああいう風には見えない。僕はワンカットワンカット誰も見たことがないものや自分がやったことのないことに挑戦したいし、クリエイティブなハードルを上げていきたいんです。それに応えてくれるクルーや脚本家、役者達と仕事がしたいし、そういうのが昔から好きで今でも映画を撮り続けています。もちろん脚本家はカメラが撃たれた頭の中を通過するなんて書かないですから、僕のアイデアに当然驚きますけどね(笑)。

僕の撮る映画はドキュメントじゃなくてあくまでもエンターテイメントなので、リアリスティックを追求するというよりはセンスオブワンダーですっごい画だったなと人が思うものを入れたくなるんです。今回のような映画は特に。前半30分ぐらいはスナイパーの姿は一切見せずに中盤で初めてスナイパーの居場所がわかるシーンがありますよね。あのシーンも700〜800mをワンカットで撮ってるんですけど、車の窓ガラスまで一気に迫った銃弾が、そのまま窓をぶちやぶって車の中まで入るまでの映像をやりたいと。それでどうやって撮るの?ということになるんですけど(笑)、ケーブルを1キロひいてカメラの前に滑車で槍をつけて投げてみようかとかね。でもカメラが壊れてもダメだから(笑)、とにかく試行錯誤して撮ってあのカットが完成したんです。カークラッシュするシーンも、ただ車をひっくり返すだけでなく、乗っている人間が窓から飛んでいったらすごくない?と(笑)。観た人は低予算なのに凄いことやるな、と驚いてくれますが、でもあれもちょっとした工夫でできるんです。『ミッドナイト・ミート・トレイン』でも人の首が飛んで転がっていって、その生首の目線ショットが撮りたいと言ったらハリウッドの連中に“こいつ頭おかしんじゃないか”という目で見られましたが、それを無理だ無理だと言わずに、なんとか具現化してくれようとするクルーとやるのが楽しいんです。そういうクルーの一人が、『ミッドナイト〜』の撮影監督ジョナサン・セラだったりするんですが、彼は最近では『ジョン・ウィック』や『デッドプール2』の撮影監督などで活躍しています」

画像4: ワンカットワンカット誰も見たことがないものに挑戦したい
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ーー最後の質問になりますが、今後もハリウッドで作品を撮り続けていかれますか?
「ハリウッドは契約だけで何ヶ月かかるの?みたいなところもあって、3年に1本とれたらいい世界だし下手したら5年かかったりします。ハリウッドで撮っても日本で撮ってもどちらにも良い点や悪い点はあるけど、作ったあとの広がりはやっぱりハリウッドのほうが凄いんですよ。『ダウンレンジ』もトロント国際映画祭のミッドナイトマッドネス部門に出品されてから、世界中に広がって行きました。日本で同じようにインディーズ体制で低予算の映画を作って発表したとしても、なかなかそこまでは広がるのは難しい。あとロスのお店のウエイトレスやウエイターはだいたい役者の卵で、様々なレッスンを受けて体を鍛え、アクションスキルを磨き、乗馬もできてみたいなのが無名の役者でもゴロゴロいるんです。カフェでも横の席で映画プロデューサーが打ち合わせしていたり。とにかくハリウッドは映画の街なので住み続けているところはあります。ただ、基本的にはハリウッドも日本もあまりこだわらずに作品をどんどん作っていきたいです。“そんなことできるわけないだろ”と言う奴の言葉をことごとくひっくり返して“できないことはないぞ!”と楽しみながら色んな作品にチャレンジしていきたいと思います」

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(インタビュアー・文/奥村百恵)

『ダウンレンジ』
2018年9月15日(土)から新宿武蔵野館ほかで公開
監督・製作・共同原案:北村龍平
製作総指揮:真木太郎(『この世界の片隅に』) 
原案・脚本:ジョーイ・オブライアン
出演:
ケリー・コーネア
ステファニー・ピアソン
ロッド・ヘルナンデス・フェレラ
アンソニー・カーリュー
アレクサ・イエームス
ジェイソン・トバイアス
イーオン・ボイド
製作・配給:ジェンコ 
製作協力:イレブン・アーツ 
配給協力:エレファント・ハウス
映倫指定:R-15
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画像: DOWNRANGE Official Trailer youtu.be

DOWNRANGE Official Trailer

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