本作は、ハネケの系譜に連なる気鋭監督ハイメ・ロサレスによる、人間の闇をえぐる怪作サスペンス。カタルーニャの乾いた大地で繰り広げられる、逃れられない悲劇の連鎖が描かれていく。
作品制作のために著名な彫刻家ジャウメの邸宅にやってきた画家ペトラ。彼女の本当の目的はジャウメが自分の父かどうか確かめることだったが、接するうちに、彼が権力を振りかざす、冷酷な人物であることがわかり……。パズルのピースをはめていくように徐々に明らかになる家族の秘密に震撼させられる。
予告編では、主人公の画家ペトラが作品制作のため、カタルーニャ地方ジローナを訪れるシーンから始まる。 ペトラが当地にやってきた本当の目的が徐々に明かされ、 人間の闇をえぐる悲劇の連鎖を予感させる作りとなっている。
太陽の光が存分にそそがれる雄大な景色の中に映し出される、 愚かな人間たちの群像と「陽光に溶けていく、偽りと真実」のキャッチコピーが相まって、本作の不穏とも言える世界観が表現されている。
監督のハイメ・ロサレスは長編6作品のうち、5作品がカンヌ国際映画祭に選出された気鋭の映画作家。主演は『マジカル・ガール』(2014)でゴヤ賞主演女優賞を獲得し、本作でヨーロッパ映画賞最優秀女優賞にノミネートされたバルバラ・レニー。複雑な心情を持つヒロインを繊細な表現で演じ切った。
また、驚くべきは悪の権化であるジャウメを演じたジョアン・ボテイが 77 歳にして本作で演技デビューしたということ。ハネケ、ランティモスの系譜に連なる、人間の闇や業をえぐる怪作がスペインに誕生した。
ペトラは静かに対峙する
2019年6月29日(金) 新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺 ほか全国順次公開
配給:サンリス
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