1961年ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞した『去年マリエンバートで』が、劇中でもオリジナルデザインの衣装を提供した仏ファッションブランド「シャネル」のサポートによって完全修復が施され、2019年10月より全国公開されることが決定した。

劇中で着るドレス数着の衣装は晩年のココ・シャネル自らがデザイン

戦後世界文学にムーヴメントを巻き起こした文学運動“ヌーヴォーロマン”の旗手アラン・ロブ=グリエとヌーヴェル・ヴァーグ左岸派の代表格アラン・レネという、当時のフランスにおける「文学」と「映画」におけるカルチャー・ヒーローの二人が奇跡的なコラボレーションを果たした本作は、「映画史上最も難解な映画」と語られる一方、映画芸術の到達点として、後世の映画作家たちに多大なる影響を及ぼし続けている。

物語の舞台は、時代も国籍も不明な、バロック風の宮殿のようなホテル。宿泊客の中に女Aと男Xと男Mの3人がいる。MはAの夫で、XはAの愛人のようだ。Mがこっそり見守る中、XはAを口説き続ける。「去年、お会いしましたよね?」しかし、Aは全く覚えていないと拒絶し続ける。

Xは、去年会った際、1年後に駆け落ちする約束までしたという。XとAは1年前に本当に恋に落ちたのか? Aが知らないふりをしているだけなのか? それともAはXを完全に忘れてしまったのか。

ヒロインを演じたデリフィーヌ・セイリグが劇中で着るドレス数着の衣装は、晩年のココ・シャネル自らがデザイン。「シャネル・スタイルの集大成」と称えられるクラシカルなブラックドレスの数々は、「ドレス・ア・ラ・マリエンバート」と呼ばれ、仏女優ブリジット・バルドーはじめ、劇中と全く同じドレスをオーダーメイドした著名人が後を絶たず、一世を風靡した。

半世紀の時を経て、シャネルの全面サポートによって美しくよみがえった『去年マリエンバートで』は、2018年のヴェネツィア国際映画祭にてプレミア上映され、ティルダ・スウィントン、ナオミ・ワッツ、アレッサンドラ・マストロナルディ、ヴィッキー・クリープス(『ファントム・スレッド』)、ステイシー・マーティン(『グッバイ・ゴダール!』)、クロエ・セヴィニー(『ボーイズ・ドント・クライ』)、ギャスパー・ウリエルら、各国の俳優が、本作の衣装にインスパイアされたシャネルのドレスを身にまとって登壇。

本作を敬愛してやまないティルダ・スウィントンは、「まるで昨日作られた映画のよう。現在作られている映画よりずっと新しく、過激。紛れもない傑作ね。」と絶賛、シャネルの衣装も「単なる衣装としての役割を超越している」とコメントしている。

去年マリエンバートで 4Kデジタル・リマスター版
2019年10月、YEBISU GARDEN CINEMA 他 全国順次ロードショー
配給:セテラ・インターナショナル
©960 STUDIOCANAL - Argos Films - Cineriz

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