エドワード・ヤン(楊徳昌)、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)やツァイ・ミンリャン(蔡明亮)らのいわゆる“台湾ニューシネマ”の系譜から、突如異端児の如く出現した新人監督チェン・ユーシュン。
ツァイ・ミンリャンのテレビドラマ「快楽車行」(89)にスクリプターとして参加するなど、テレビドラマ界で活躍する一方、当時台湾で頻発していた誘拐事件をモチーフに『熱帯魚』の脚本を執筆し、92 年の全国シナリオコンクールで最優秀賞を受賞。その後自ら監督を務め、95 年に映画監督デビューを果たした。
制作にあたっては、台湾ニューシネマの重鎮ワン・トン(王童)から支援を受けるなど、先達からの影響を感じさせつつ、独自の作風を確立。誘拐事件という“悲劇”を物語の軸としながら、ユニークな登場人物と設定でコメディタッチに仕上げることによって、台湾ニューシネマ特有の、難解さやとっつきにくさを爽やかに受け流すようなデビュー作を生み出し、台湾の若い世代から広い共感を得た。
今回同時上映となるのは、誘拐事件に巻き込まれた受験生の少年が、連れ去られた南の漁村で白昼夢のような不思議な時間を体験する奇跡のデビュー作『熱帯魚』と、台北に住む冴えない若者たちの、切なくもどこか滑稽な“恋の季節”をポップに描いた第2作『ラブ ゴーゴー』(97)の 2 作品。
「『熱帯魚』では、これまでの台湾映画とは違う、自分の眼で見た台湾を撮ろうと考えた。対して今回は、その自分の眼で見た 台湾を個人の感情に凝縮しようと試みたんだ。どこの国の誰でもこの映画に流れる感情を理解できるはずだ。」と『ラブ ゴーゴー』日本初公開時にユーシュン監督は語っ
ている。
その言葉が示す通り、今年の GW に開催された「台湾巨匠傑作選 2019~恋する台湾~」で 2 作品がプレミア上映された際には、すべての回が早々に完売し、初公開から 20 年以上を経ても色褪せることのない、2 作品が持つみずみずしさを目の当たりにした観客の絶賛の声が SNS 上に多く寄せられた。
エドワード・ヤンやホウ・シャオシェンから、『藍色夏恋』(02)や、『あの頃、君を追いかけた』(11)などの 21 世紀の台湾映画をつなぐ 90 年代の最重要作品が、デジタル修復を経て遂に同時上映を果たす。
そしてこのたび、本予告編とチラシビジュアルが解禁された。
今回の『熱帯魚 デジタルリストア版』『ラブ ゴーゴー デジタルリストア版』の同時公開にあたり、ポスターは 2 作合同ビジュアル、チラシでは作品ごとのビジュアルを展開。
『熱帯魚』からは巨大な熱帯魚が泳ぐ様子をとらえた場面写真、『ラブゴーゴー』からは、本作で映画初出演にして金馬奨最優秀助演女優賞を受賞したリャオ・ホイヂェン(寥慧珍)が演じる、恋する乙女・リリーの場面写真をそれぞれ用い、みずみずしさとポップさが溢れるビジュアルが完成した。
また、予告編では、『ウィーアーリトルゾンビーズ』が絶賛公開中の映画監督長久允氏と、作家の山内マリコ氏のコメントを使用し、台湾の 90 年代ポップスも印象に残る予告が完成。登場人物のユニークさや台南の湿度、都会に生きる若者たちの恋模様、そして作品全体に漂うコミカルさが伝わるものになっている。
熱帯魚 デジタルリストア版
ラブ ゴーゴー デジタルリストア版
2019年8 月 17 日(土)より新宿 K’s cinema ほか全国にて順次同時公開
配給:オリオフィルムズ、竹書房
©Central Pictures Corporation