「私がひたすら訴えてきたのは、皆に敬意を払えということ」
80年代のニューヨーク。日曜深夜、ラジオから流れる「セクシャリー・スピーキング」に人々は夢中になった。誰も教えてくれない性のお悩みをズバリと解決するドクター・ルース。身長140センチ、ドイツ訛りの彼女は、そのチャーミングなキャラクターでたちまちお茶の間の人気者になった。性の話はタブーだった時代に、エイズへの偏見をなくすべく立ち上がり、中絶問題で女性の権利向上を後押しし、LGBTQの人々に寄り添ってきた。
自分らしく生きるために学び、恋し、戦い、働く。アメリカで最も有名なセックス・セラピスト“ドクター・ルース”はいかに誕生したのか。ホロコーストの孤児、元スナイパー、シングルマザー、3度の結婚。本作は時代に翻弄された90歳の半生をたどるドキュメンタリーだ。
このたびラジオにゲスト出演したドクター・ルースが「ノーマル」という言葉をバッサリと斬る本編映像が解禁された。
解禁された映像では、ラジオ番組にゲストとして招かれたドクター・ルースの姿が映される。「光栄です」とMCのジョナサンに熱烈に歓迎され、OAブースで早速放送が始まる。
まず冒頭、「ゲストはご存じ―、セックス・セラピストのドクター・ルース!」と紹介されると、いきなり、「ちょっと待って」とルースからストップが。「「“セックス”を棒読みしないで、もっと感情を込めなきゃ。親密さと喜び、興奮を込めて、やり直しよ!」といたずらっぽく笑う。初っ端からの“ドクター・ルース節”炸裂に面食らいつつも大きな笑顔になったジョナサンは、再び「“セックス”・セラピストのー」と生き生き紹介し、ルースも「最高よ。」と太鼓判。
また、ジョナサンは80年代にゲイの少年としてドクター・ルースのお悩み相談ラジオ番組を聴いており、自分の性的指向を肯定された気がしたことに、個人的な感謝の気持ちを伝える。ルースの顔つきは、優しくも真剣な表情になる。
そして「ノーマル」という言葉が嫌いな理由について問われた彼女は、「曖昧だもの」と即答。「『セクシャリー・スピーキング』開始時の80年代当初は、誰も同性愛を語らなかった。私がひたすら訴えてきたのは、皆に敬意を払えということ。『ノーマル』なんてない」。きっぱりとした口調でそう言い切る姿は、80年代、タブーだった話題の切込隊長となり、マイノリティの人々に寄り添い戦ってきた勇姿そのものだ。
ドクター・ルースは、番組の成功で手にした信頼と知名度を武器に、当時社会に蔓延していた様々な差別や偏見と戦ってきた。80年代に猛威を振るったエイズへの偏見、女性の中絶問題、LGBTQの権利向上など、当時は語ることすら許されない空気のあった話題を議論の場へと持ち出し、問題解決へと動いた先駆者である。
そこには、自身が幼い頃にホロコーストで家族を失い祖国を追われ、その後移り住んだニューヨークでは英語力ゼロのシングルマザーとして娘を育てた、そんな経験から、弱い立場に置かれた人々に無関心でいられないという理由があった。本作では、壮絶で波乱万丈のエピソードがてんこ盛りのドクター・ルースの人生がたっぷりと語られる。
いつだって、弱者の味方。学術的知識とユーモアで瞬時にお悩みを解決する、頼れるカリスマ。何があっても前に進み続ける生き様が、勇気をくれる。本作は90歳現役セックス・セラピストのドクター・ルースが、私たちにおしえてくれる超ポジティブで型破りな人生の処方箋だ。
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おしえて!ドクター・ルース
2019年8月30日(金)、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ロングライド