キング愛溢れる視点と切り口で大盛り上がり!
脚本スティーヴン・キング、製作総指揮 J.J.エイブラムスの豪華タッグで贈る、全米震撼のミステリー・ホラー「キャッスルロック」。ブルーレイ&DVDのリリースを記念して、映画評論家でスティーヴン・キングの小説「ニードフル・シングス」「不眠症」の翻訳を手掛けた芝山幹郎氏と、映画評論家の森直人氏によるトークイベントが8月2日(金)に行なわれた。
キング作品に度々登場する架空の町“キャッスルロック”ついて、キングと同世代の芝山氏と、J.J.と同世代の森氏が、双方の視点から「キャッスルロック」の魅力を語った本イベント。キングの小説の翻訳を手掛け、キングのことを熟知している芝山氏は、「キングは、ブルドーザー的なのに、細かい部分を丁寧に描くところがある。「キャッスルロック」はTVシリーズとして10話でしっかりとディテールを描き込んでいるので、物語が面白くてね。そこに、J.J.エイブラムスの構築力が上手く合っている気がしました」と本作をベタ褒め。森氏も「僕や J.J.は 70 年代後半から 80 年代にかけて、キングの映像化作品をガンガン観てきた世代。だからその懐かしい感じが本作にすごく出ていると感じた」と話すなど、終始話が尽きないトークイベントとなった。
キングが作り出した架空の町代表格は「キャッスルロック」!
森:まず本作の舞台となるキングが作り出した架空の町”キャッスルロック”はキング作品の中でもかなり、重要なキーワードとなっていますよね。キングの地元である、カナダ国境近く、東に位置するアメリカメイン州の地理をベースにしながらも、彼の想像力で生み出した町なんです。
芝山:キング作品の中でも”キャッスルロック”が一番よく使われていますよね。例えば、特殊能力に目覚めてしまった一人孤独な男の生と死を描いた『デッド・ゾーン』や、狂犬病を発症してしまう巨犬による恐怖を描いた『クージョ』、作家の中に悪魔の分身が宿ってしまう『ダーク・ハーフ』も”キャッスロック”が舞台でしたね。映画版の『クージョ』『ニードフル・シングス』では、キャッスル ロックは海辺に近い町として描かれていますが、本作ではもうちょっと内陸部のイメージ。人口約1500人程度の本当に小さな町です。実際にアメリカのスモールタウンにも共通していることですが、お互いのことを知り尽くしているがゆえに、憎悪や怨恨がはびこりやすい設定なんです。キャッスルロックを舞台にした作品でも度々、住人の因縁話がでてくるのですが、それがすべてこの「キャッスルロック」という作品に流れ込んできたら…というところが見どころです。ちなみに小説の「IT」や「不眠症」の舞台となる“デリー”、そして小説「呪われた町」、映画『死霊伝 説』の舞台”セイラムズロット”もキング作品に登場する架空の町として有名です。また、メイン州に実在するルイストン、オーバーンやオーガスタ、バンガーもキング作品にはよくでてきます。
森:つまりローカルな舞台設定にもとづいたフィクションだけど、実在する町も出てくる。とてもおもしろいですよね。
「キャッスルロック」は、まさにスティーヴン・キング・サーガ
森:本作には別のキング作品に登場するキャラクターが出てきたり、世界観が交錯したりと、まさにスティーヴン・キング・サーガとも言えますよね。 例えば、キャッスルロックが舞台の『スタンド・バイ・ミー』に触れるシーンがあったり、『ショーシャンクの空に』で有名なショーシャンク刑務所もでてきたり。
芝山:あと、キング作品でお馴染のキャラクター“アラン・パングボーン保安官”もでてきます。『ニードフル・シングス』ではエド・ハリス、『ダーク・ハーフ』ではマイケル・ルーカーがパングボーンを演じているのですが、2人ともがっちりとした体つきなんですよね。それが27年経ち、本作で老人になったパングボーンが出てくるんですが、その役をスコット・グレンが演じています。さらに、映画『キャリー』以来、43 年ぶりにキング作品への出演となるシシー・スペイセクが出ていて、この2人の大物キャストによってストーリーがより引き締まるんですよね。
森:これは絶対に狙ったキャスティングですね!
海外TVシリーズ「キャッスルロック」はキング作品の入門編としてお薦め!
芝山:TVシリーズだと、ディテールと話の核を描くことができて、ストーリーもしっかり表現できるから、キングの作品に向いていますよね。あとキング作品はただ怖いだけじゃなくて、骨太な部分や、規格外れなところもある。そういうおもしろさがどこまで映像に反映されているか、そこがポイントですね。そして、ちょっと不思議に思ったところは、小説や映画を見て理解を深めてほしいなと思います。
森:特にキャッスルロックは、キング作品の入門編としてお薦めですよね。まだキングをよく知らない若い世代にもキングワールドの入り口として見てほしいです。
芝山:最後に、キングという人物は、身長190cm以上の長身で、おしゃべりが好きで、よく笑う人。オタクなイメージかもしれないけれど、まったくそうではなくて、パワーに満ち溢れた人なんです。そんな人が、恐ろしいストーリーを描くとどうなるかにぜひ注目してほしいです。
森:そのキングが描く最新映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』が 11月1日公開、そして『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』が今冬公開、そして『ミザリー』の前日譚がストーリーのベースとなる本作のシーズン2の製作も決定していて、ますます盛り上がりを見せていきますからね。キング作品の原点となる海外 TV シリーズ「キャッスルロック」を見て、今後のキング作品に備えましょう!