美しすぎる17歳の少年カルリートスを演じたロレンソ・フェロの来日インタビューをお届けする。
ラモンとカルリートスの関係性は“名もなき愛”だと思ってる
ーーもともとの事件はご存知でしたか?
「いや、カルロス・ロブレド・プッチが起こした事件のことは全く知らなかったから、とりあえずGoogleで検索して調べたんだ(笑)。あとは今作の共同脚本家が刑務所にいるカルロスに会っていて、そのことを書いた本も読んだからそれで十分理解できたよ。そのあと僕がやらなければいけないのは脚本のカルリートスをしっかりと演じるということだけだったからね」
ーー役作りはどういったことをされましたか?
「6ヶ月もの間、監督と演技のコーチと一緒にカルリートスがどんなダンスをしてどんな歩き方をして、どんな風にタバコを吸うのかといったリハーサルをして彼の特徴を掴んでいったんだ。撮影は2ヶ月間だったけど(笑)」
ーーハードなシーンも沢山ありましたが、大変だった撮影エピソードを教えて頂けますか。
「撮影初日は酷かった。60人ぐらいのスタッフが僕の顔を見てああだこうだ言うんだけど、それってまるで数学の問題を解いてるような感じなんだよ。僕は数学が大嫌いだから、“ここに立ってあっちを見て、これを読んで”と細かく演出されるのが辛くなっちゃって。結局その日撮影したシーンは使われなかったから相当酷かったんじゃないかな(笑)。アルゼンチンを代表する俳優・歌手にして監督でもあるレオナルド・ファビオの言葉に“一日目の撮影はテストだから使えない”というのがあるんだけど、その言葉通りになったね(笑)」
ーー撮影が進むにつれて、少しずつお芝居を楽しいと感じられるようになりましたか?
「初日からもの凄いプレッシャーを感じて、これは無理だから辞めようと思ったんだ。だけど数学で問題が解けると面白くなっていくのと同じで、お芝居もやっていくうちにどんどん楽しいなと感じるようになっていった。というか、もう辞めれないし2ヶ月楽しまなきゃなって気持ちを切り替えていったんだけどね(笑)」
ーー今年のカンヌ国際映画祭では今作のプロデューサーを務めているペドロ・アルモドバルさんと並んで登壇されていましたが、何かお話はされましたか?
「会話したんだけど、ごく普通の日常的な話が多かったかな(笑)。でも、その時に彼は映画人として凄い方なのにとてもシンプルな人でもあることがわかったんだ。シンプルなマインドっていうのかな、そういうのを感じられて嬉しかった。あとはたまたま同じ映画を観ていたから、その話もしたりしたよ。いつかペドロ・アルモドバル監督の作品に出演できたらいいんだけどね」
ーーロレンソさんは今作で映画デビューされましたが、ご自身の姿をスクリーンでご覧になっていかがでしたか?
「芝居が酷いのは間違いないから自分のことが大嫌いになるだろうと思ってたんだけど(笑)、いざ映画を観始めたら一緒に観ていた人達がだんだん笑って楽しんでくれているのが伝わってきて、そのうちに僕自身もいち観客として楽しんでいたんだ。ナーバスな気持ちで観ていたのは最初だけだったよ(笑)」
ーーカルリートスはチノ・ダリンさん演じるラモンを一目見た瞬間に何かを感じますが、ロレンソさんご自身にはそういった経験はありますか?
「あるよ! 特に子供の頃って学校で一番人気のある子や強い子と友達になって“俺も俺の友達もクールだろ?”と見せつけたかったりするんだよね(笑)。今もそれは変わらなくて、ほら、後ろを見て! (インタビューに同席していた友人のカメラマンを指差しながら) あんなクールな奴と僕は友達なんだよ(笑)」
ーー(笑)。ちなみにラモンとカルリートスの関係をどう思いましたか?
「人ってなんでもジャンルで分けたり名前をつけたがるんだけど、僕はラモンとカルリートスの関係性は“名もなき愛”だと思ってる。どのジャンルにも当てはめることができないものというか。崇める気持ちや純粋に好きな気持ち、悲劇のロマンスっぽい切ない思いとかさ、そんなのが色々混ざり合った感情を彼らは互いに抱いていたんじゃないかな」
ーーチノさんとはどのようにコミュニケーションを取っていましたか?
「チノのほうが役者の経験が豊富なこともあって、先輩として凄く助けてくれたんだ。逆に僕は映画の現場が初めてだったから、新鮮さや新しさをチノに与えられたと思ってる。僕ゲームのポケモンが好きなんだけど、ポケモンゲームでステージをクリアするような感覚で撮影中は互いに助け合っていたと思うよ(笑)」
ーーチノさんとの撮影で印象に残っていることがあれば教えて頂けますか?
「カルリートスがラモンの口に指を入れるシーンがあるんだけど、段取りやテストをやるたびに“お前ちゃんと手を洗ってこいよ!”とチノから言われたのを覚えてる(笑)。気持ちはわかるけどね。撮影は大変なことも多かったけど、おかげでチノとは凄く仲良くなれたんだ」
ーーこれまでにロレンソさんが影響を受けた映画を教えて頂けますか。
「『ブギーナイツ』、『トゥルー・ロマンス』『フィッツカラルド』、それからジョン・カサヴェテス監督の映画も好きで、中でも『グロリア』からは影響を受けてると思う。邦画は『座頭市』と『菊次郎の夏』が好きで、北野武、宮崎駿、黒澤明監督の作品はもっと観たいと思ってるんだ」
ーー今後挑戦したいジャンルや役柄はありますか?
「ものすっごい美人とラブストーリーがやってみたい(笑)。あと、ちょっとインテリな役もいいかも。今後の予定としては近々Netflixのドラマ「El Marginal」の撮影が始まるんだ。いつか日本でも配信されたら観て欲しいな。でも、まずは『永遠に僕のもの』を観てね!」
(インタビュアー・文/奥村百恵)
【ストーリー】
「みんなどうかしてる。もっと自由に生きられるのに」
そうつぶやきながら、鍵の開いた窓からするりと留守宅の豪邸に入り込み、勝手にレコードをかけて軽やかに1曲踊ると、ジュエリーなどの戦利品を手に、盗んだバイクで帰宅する17歳のカルリートス(ロレンソ・フェロ)。1971年、ブエノスアイレス。真面目で善良な父と愛情に溢れた優しい母(セシリア・ロス)は、カルリートスの悪事に気付いていたが、まだやり直しが出来ると信じて息子を転校させる。新しい学校で出会ったラモン(チノ・ダリン)という青年に、カルリートスはいきなりケンカを売るが、それは彼の気を引くためだった。彼の野性的な魅力に、ひと目で心を射抜かれたのだ。ラモンもまたカルリートスの輝くようなブロンドの美しい姿で平然と罪を犯す、そのギャップに強く魅せられる。荒々しい魅力を放つラモンと意気投合したカルリートスは、二人で様々な犯罪に手を染めていく。欲しい物は何でも手に入れ、目障りな者は誰でも殺す。息をするように、ダンスを踊るように、ナチュラルに優雅に。だが、カルリートスは、どんなに悪事を重ねても満たされない想いに気付き始める──。
8月16日(金)渋谷シネクイント、
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー
プロデュース:ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル、ハビエル・ブリア『人生スイッチ』
監督:ルイス・オルデガ
出演:ロレンソ・フェロ、チノ・ダリン、ダニエル・ファネゴ、セシリア・ロス
配給:ギャガ
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